副業
(写真=PIXTA)

近年、サラリーマンの平均年収が下がるにつれて、注目を浴びているのが副業である。今年(2016年)の2月に大手製薬メーカーが副業を認める制度を導入して話題となったが、最近は、企業側の方でも「副業が本業にもいい影響を与える」と前向きになってきている様子がうかがえる。

この情勢を反映してか、筆者のところに近頃よくくる質問のひとつというのが「副業をやってもマイナンバーで捕捉されないか?」というものである。こう聞いてくる人は、まだ副業を始めていないのだと思われるが、サラリーマンが副業を持つ際に、こうした目に見えない心理的な壁が存在しているように感じられる。

実際のところ、サラリーマンが副業をすることにおいて「超えなければならない壁」とは、追加徴税でも会社に副業がバレることでもない。自分の中で感じている「他人と違うことをする」ということに対する恐怖を乗り越えることなのである。

今回は、「副業」「税」「マイナンバー」といったポイントを抑えながら、どうしたらサラリーマンがこの壁を乗り越え、副業で稼げるようになるのかを考察してみたいと思う。

「マイナンバー」最近の動き

マイナンバー制度とは、社会保障・税番号制度のことである。まずは最近のマイナンバーに関する動きをざっと見ておくことにしよう。

総務省の発表によると、11月29日の時点で、システム障害により発生していたマイナンバーカード発行の遅延がすべて解消されたという。マイナンバーカードの発行が始まってから1年近く経って「ようやく」という印象だ。

新たな政令の決定により、来年1月より各地の年金事務所の窓口で、マイナンバーの提示をすれば、年金の受け取りなどができるようになった。同じ月より利用できるはずであったマイナポータル(個人情報の利用状況などを確認できるサイト)については夏以降に開始が延期された。

本制度にとってもっとも重要な動きとは、2016年度の確定申告から、番号の申告欄が設けられ、記入の義務が発生することであろう。あとは罰則規定がどう付随するかということだろう。世間の注目度合いとは関係なく、マイナンバーは確実に浸透してきているのである。

「副業」を取り巻く環境の変化

続いて副業についてだが、政府は「一億総活躍社会」の実現を目指して、今年の9月より設置した「働き方改革実現会議」の中で、副業を「柔軟な働き方」として世間に認知されるよう、議論することになっている。

東京商工会議所は先月(11月)、加盟している東京23区の中小企業を対象に「社員の副業・兼業状況」についての調査を行い、702社から回答を得た。それによると、中小企業の3割強(31.6%)がすでに何らかの形で「従業員の兼業・副業を認めている」という事実が明らかになった。

副業が増えてきている背景にあるのは、日本経済の停滞による賃金の伸び悩みや、アメリカ初のシェアリングエコノミーを中心とした新たなサービスの登場などによって、収入を得る手段が多様化し、副業しやすい環境が整いつつあることが考えられる。

これからの世の中の流れを考察すると、年金の受給年齢繰り上げや社会保障費の削減、世界的な競争激化による人件費の抑制といった動きが不可避である以上、副業容認の動きは、今後ますます加速していくと思われる。

副業は「すでにお見通し」の可能性大

ところで、筆者が今回の文章を通じてお伝えしたいのは、世の中の多くの人が「マイナンバーについて思い違いをしているのではないか」ということである。

世間では、マイナンバーによって「副業がバレる」「追加徴税される」と大騒ぎしている人が後を絶たないが、バレるも何も、国はすでに事実を把握しているはずであり、おそらく企業も気づいているところが多いのではないだろうか。マイナンバーによって変わることというのは「調べる側の利便性が上がる」というだけに過ぎない。

制度によって「隠されていた部分があぶり出される」というのは、一部のことである。マイナンバーができたところで、基本的には「何も変わらない」というのが真実だ。

なぜそういえるのかというと、ビジネスとはお金のやり取りをすることであり、やり取りをする以上、必ず「相手ありき」のことだからである。つまりこちらが「お金なんて稼いでいません」「副業なんてしていません」といったところで、取引相手が申告納税している以上、隠すことなどできないのである。

副業の目的 一番大事なのは「お金を増やす」こと

日本人である限り、納税は国民の義務である。最終的に手元に残るお金を増やすことを望むなら、法の目をかいくぐったグレーな節税策や税の繰り延べに過ぎない節税策は、ほどほどにしたほうがいい。

特に、事業を軌道に乗るまでに必要なのは、むしろ社会的な信用のほうが大きい。とりわけ、融資を受けて事業拡大のために借り入れをする場合には、法人でも個人でも税金を払っていない人に金融機関は良い返事はしない。

また、多くの節税対策は税の繰り延べなので、手元資金は一時的に減ってしまう。サラリーマンが副業をする一番のメリットは「損益通算」による節税なのだが、それは説明が長くなるのでまたいずれ。

もし、あなたが「所得を大きく増やしたい」ということなのであれば、税申告の不要な「20万円」という副業枠を超える必要がある。仮に会社が副業を禁止しているというのであれば、会社に例外を認めてもらうか、許容範囲の中で行動をするしかないだろう。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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