中国,平均所得,中進国,平均年収
(写真=PIXTA)

「中国の家庭、2015年1人当たり財産はおよそ14万元(約240万円)あなたは平均以上持っていますか?」という記事が地方紙に掲載された。2016年の「中国家庭財富調査報告」によれば、中国はすでに中進国(経済成長を実現しつつある中所得国)の水準に達している。嘘か真実か多角的に検討してみよう。

資産内容と可処分所得は?

2015年の中国家庭人の1人当たり平均財産は、14万4197元だった。都市と農村では、都市部20万8317元、農村部6万4780元と3倍の差がついている。また地区別では、発達した東部沿岸地区は18万7793元、中部地区は13万708元、西部地区は7万4515元だった。

これら財産のうち不動産の占める割合は65.61%である。都市と農村では、それぞれ67.62%と57.60%だった。

自家用車保有率は31.8%に達した。これら動産と耐久消費材の家庭財産に占める割合は10%前後である。これは都市-農村間に顕著な差はない。

可処分所得は全国平均で2万1966元だった。内訳は都市部3万1195元、農村部1万1422元である。都市部トップの上海は5万2962元、最下位の甘粛省では2万3767元だった。上海の都市部と西部の僻村では10倍近い差はあるだろう。

なお国務院は可処分所得の伸びは、常にGDPの伸びを上回っていると国民向けにアピールしている。

賃金分析、高い3業種、低い3業種

次に所得の柱、賃金を分析してみよう。2015年の業種分類別の最高賃金ー最低賃金の比は3.59、これは2014年の3.82に比べ縮小している。しかし両者の絶対的距離は大きい。トップ3は、金融業11万4777元、ソフトウェア情報技術サービス業11万2042元、科学研究技術サービス業8万9410元の順である。

昨年の資本市場関連業務は前年比40%伸びた。株式バブルの影響はあったものの、金融業全体の利益は大く、従業員の収入も高水準だった。

第二位のIT関連は、第一位金融業との差を2735元に縮小した。2014年の差は7476元だった。ゲーム関連など競争の激しい業界は別として、中国移動、中国聯通、中国電信の通信「御三家」は高給で安定している。

これに対して賃金の低いのは、農・林・牧・魚業の3万1947元、宿泊・飲食業4万806元、水利・環境と公共施設管理業4万3528元である。この3業種は全国平均のそれぞれ52%、66%、70%しかない。これら業種の賃金は停滞している。

“中進国のワナ”を心配

国家統計局でも国際比較から、中国の1人当たり国民総収入(GNI)は大幅増加し、すでに中進国の平均水準だとしている。世界銀行の統計では、中国の2012年1人当たりGNIは5870ドルから、2015年は7880ドルに上昇している。2014年ランキングでは、214の国家と地域中、100位である。ただし年平均増加率は7.3%と世界平均を大きく上回っている。

また1人当たり国内総生産(GDP)の2014年のデータ比較では、米国5万5200ドル、日本4万2000ドルに対して、中国は60位、7300ドルに留まっている。

中国政府はこの状態を中進国の上クラスと表現している。続けて記事は“中進国のワナ”について触れる。大衆の所得が2000ドルから1万ドルにかけてころは、非実体経済の“狂奔”、通貨価値の不安定、不動産バブルの発生などにより、結果として大衆の収入が停滞することになる、メキシコ、ブラジル、マレーシア、南ア、アルゼンチンなどはこれと類似の状況にある。

第一の原因は内需不足である、中国のGDPに占める個人消費の割合は3分の1である。米国、日本、韓国、インド、ブラジル、ロシアは50%以上だ。

そして記事は、成長速度、貧富の差、金融体系、不動産価格の現状を見れば、中国はすぐにでも“中進国のワナ”に落ち込まないとも限らない、と結んでいる。

しかしあまり心配することはない。中国経済はさまざまなクッションを持っている。個人も企業も裏帳簿を持っているし、リスクヘッジしていない大金持ちはいない。さらに数字の作為はお手のものである。来年も表面を取り繕いつつ、だましだましの経済運営が続くだろう。この手のスキルだけなら超先進国である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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