トラックドライバー
(写真=PIXTA)

eコマースの発展により、ネットで注文した商品を宅配便で受け取る機会がますます増えてきている。配送日時指定、注文当日配送、コンビニ受け取りなど利便性は飛躍的に高まったが、宅配業者が目を疑うような伝票改ざんをしていた事実が判明。インターネットショッピングの安心したサービスを根底から覆しかねない事態はどのように起きたのか。

代引き伝票の数字を書き換え

端緒となったのは、ロックバンドのギタリストが、佐川急便に代引きの値段を書き換えられ、お金を多く取られたとツイッターでつぶやいたことだった。その投稿には、伝票の画像も添付され、「16783円」の請求金額の6の数字が8に書き換えられて「18783円」となっており、2000円多く料金を請求されたという。この投稿は瞬く間に拡散し、類似の体験や、対処方法などリツイートが約7万に上るほど大きな反響が寄せられた。

後日のツイッターで、このギタリストが佐川急便に改ざんの事実を訴えたところ、同社は不正を認め、謝罪をしたと報告のつぶやきがあった。ハフィントンポストによると、伝票を改ざんしたのは佐川急便の社員ではなく、業務委託先のドライバーで、不正に徴収した料金については返金したという。

ツイッターに投稿された画像を見る限り、代引伝票の数字書き換えは、一瞬では気づかないかもしれないが、商品の中には領収書が同封されているのが通例で、受取人が梱包された宅配物を開封し、その領収書を確認すれば、金額の改ざんにはすぐに気づく。改ざんの手口としては、お粗末にも巧妙とは言えない。それでも、粗い手段に頼ってでもドライバーが不正を働いた背景には何が潜んでいるのか。

送料無料見直し効果は?

2016年に流通業界で最も話題となったといっても過言ではないのが、アマゾンが全商品を対象としていた送料無料サービスを4月に中止したことだろう。ネットショッピングの巨人アマゾンの動向に、各種業界は対応を迫られる。今回、伝票改ざんの不正が明らかになった佐川急便は、時間指定などのサービス要求も高い一方、送料無料を維持するために運賃の引き下げを求めるアマゾンとの取引から手を引いた経緯がある。存在感を増すeコマースの小売業が、複数の宅配業者を競わすことで、送料にかかるコスト削減を図る。

消費者の目線に立てば、送料は安ければ安いほど、さらに無料を願うのが常だが、正当な対価が支払われなければ、小売業と消費者を繋ぐ宅配業者にそのしわ寄せがくる。今回アマゾンは、無料配送はプライムと学生会員に限定し、2000円未満の商品に対しては、お急ぎ便が360円(税込み)、当日お急ぎ便514円(税込み)に配送料を見直した。この改定が、配送業者に追い風となることを期待したいところだが、より短時間で商品を届ける新たなサービスの参入で競争が激化している。

注文から20分で商品到着

Amazon Prime Now(プライムナウ)は、東京都23区や神奈川県の川崎市、大阪市17区などで注文から1時間以内で配送するサービスだ。2500円以上の注文で、1時間以内で商品を届ける場合、配送料が890円かかるが、2時間になると無料となる。また、他社でも配送時間を短縮したサービスの参入が相次ぐ。

ヨドバシカメラは、都内の一部地域を対象にして約43万品の対象商品を注文から最短2時間30分で届ける「ヨドバシエクストリーム」をスタート。楽天 <4755> は、飲料や日用品など約450点を積んだ配送者が都内の対象4区内を巡回し、注文が入ってから顧客宅に向かい、最短20分で商品を届ける「楽びん!」を始動させた。

こうした短時間の宅配サービスは、小売業が自ら配送も手掛けており、運送業者にとっては、新たなライバルの出現ともなる。

今回、不正が明るみに出た佐川急便の例では、業務委託先のドライバーと、さらに弱い立場にあったことが伺える。運送業者が小売り業者から厳しい要求を突き付ければ、孫請けとなる委託先は採算ラインを確保することも困難になり、モラルハザードが起き、不正に手を染めてしまう事態になりかねない。運送業者のドライバーは、時間指定などの配送業務に追われ、残業も日常茶飯事。

消費者の利便性を実現すべく、その代償を請け負った労働環境が蔓延している。一消費者として、ネットショッピングの利便性の裏側に潜む実態に目を向ける契機となったといえるだろう。(ZUU online 編集部)

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