あれも欲しい、これも欲しい。ついつい止められない無駄遣い。「思ったより散財してしまった」という経験は、誰しもあるのではないだろうか。
通販サイト・実店舗どちらにおいても、売り場のそこかしこには、我々が知らず知らずのうちに購買意欲を促されるような仕掛けが溢れている。潜在的、顕在的にかかわらず。この時に「こんなに使う予定ではなかったのに」という無駄遣いは、我々の「脳のクセ」が関係している。
行動心理学的な観点から、無駄遣いが生じやすい心理とその対策について見ていこう。
1.みんなが持ってるから自分も欲しい、「バンドワゴン効果」
買い物へ出かけた時、ある店舗に長蛇の列ができている……「そんなに人気なら買ってみようかな?」と、その列に足を進めついつい衝動買いをしてしまう、といったことはないだろうか。
他者のくだす判断に影響を受け、「人がそこに集まっている、大勢に支持されている」というだけで、なんとなくの安心感・満足感を得る現象を「バンドワゴン効果」という。
この現象への対策としては、「あらかじめ予算を決めてから買い物へ行く」「今買おうとしているものは、本当に自分が欲しいものか?を自分に問いてみる」というのがおすすめ。また、やや強引ですが「使う分の現金だけ持ち歩く」というのも有効だ。
2.何となくお得、と勘違い「フレーミング効果」
例えば、3ヶ月分で3万6000円の健康食品があるとする。3ヶ月は90日間、「1日あたりたったの600円!」という言葉に惹かれて、ついつい購入。健康食品に限らず、こういった経験のある方は多いと思う。
ヒトはある判断をする場合、いくつかの選択肢を絶対的評価ではなく、自分が参照した情報の基準点との対比において比較するため、絶対評価とは異なる判断を導くことがある。
先に述べた例では、最終的に3万6000円の支出が発生することは変わらないが、「1日600円」という情報により「安い」と捉えてしまうことがある。フレーミング効果への対策としては、「総出費を時給換算してみる」「一度商品を置き、『本当に必要か?』を考え、後日購入を再検討する」というのがおすすめ。
3.「特別価格」につられる「アンカリング効果」
家電量販店で、「定価5万円→セール価格2万9800円」という商品を見つけ、つい買ってしまった経験はないだろうか。
ヒトが何かを判断するタイミングで、情報が十分にそろっていない場合、特定の断片的な情報を重視してしまう傾向がある。アンカリング効果とは、最初もしくは同時に提示された特定の特徴や情報が印象に強く残ってしまい、意思決定や判断に影響をおよぼす傾向のこと。たとえ定価から大きく値引きされていて得をした気になったとしても、2万9800円の支出が発生することには変わりはない。
アンカリング効果への対策は、「事前に予算を決めてから商品を選定する」「割引されている理由を予想して『それでも欲しいか?』と考える」のが良い。
4.本日限りに飛びつく「希少性の原理」
通販サイトで「国内でここだけ!限定入手した最高級品を先着10名様に XX 円で販売!」という煽りにつられて、買う予定のなかったものを買ってしまう。
希少性の原理(スノッブ効果)とは「手に入りにくいものほど貴重なものだ」と考える傾向のことをいう。「みんなが買っているから欲しい」という心理に働きかけるバンドワゴン効果とは逆に、「みんなが持っていない(手に入れにくい)から欲しい」という心理に働きかける効果だ。対策としては、「一歩引いて『これが限定品でなかったとしても、買いたいと思うか』と考える」のがおすすめ。
5.松竹梅なら竹を選ぶ「極端回避性」
例えば、とあるイタリアンで食事をするとして、「3000円」「5000円」「8000円」という価格帯のコースがあったとしたら、真ん中の「5000円」を選ぶ人が多いのではないだろうか。
その商品の機能、特徴を完璧に理解していない場合、ヒトは「安い商品より高い商品の方の品質が良いだろう」と考え、一番安い商品を選びにくい傾向にあります。
ただし一番高い商品に対しては「贅沢な気がするし、失敗した時のリスクが大きい」と考え選ばない傾向がある。価格の異なる松・竹・梅の商品があるとしたら、それぞれが選択される割合は、2:5:3と言われている。極端回避性の対策としては「自分が求める条件(機能・サービスなど)を決め、それに合致する商品を買う」というのがおすすめ。
6.「送料無料」めがけて買い足す「テンション・リダクション効果」
通販サイトで、「あと◯◯円の購入で、送料が無料になります」「あと△△円の購入で、ポイントが3倍になります」といった言葉に踊らされてしまう方は、注意が必要だ。
これは「テンション・リダクション効果」といって、緊張状態が緩和され、気が緩んでいる状態を指す。「テンション=緊張・不安」「リダクション=減少」という意味だ。ヒトは重大な出来事があると、その出来事が終わるまでは緊張状態を維持する。
しかしその重大な出来事が終わると緊張状態が解け、心理的に無防備な状態へ変わる。「テンション・リダクション効果」は、いわゆる「ついで買い」を促すのにしばしば用いられ、特に高価な買い物をすると決断している人が影響を受けやすいと言われている。この対策としては、「即決せず、他の人に相談してから決める」ことが良い。
「偶然良い商品が手に入るかもしれない」という点では、無駄遣いは必ずしも悪いことではない。ただし、自分の財布をコントロールしたいと考えるならば、こうした「脳のクセ」を把握しておき、自分の置かれている状況を俯瞰することが大切。「そこまで欲しくはなかった」というモノに囲まれないよう、かしこく買い物を楽しみたいものだ
工藤 崇
株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積。拠点FINOLAB(フィノラボ)入居企業。執筆実績多数。東京都千代田区大手町。
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