子育ては「孤独」といわれる。既婚者だが子どものいない筆者においても、個別相談に乗っていると「国や自治体がどのような支援体制を整えているかわからない」という不安の声を聞くことがある。一方で子育て支援をしている自治体の職員から話を聞くこともあるが、「どうやって広めたらいいかわからない」という、180℃反対の話を聞く。
話を聞いていると、我々FPなどの専門家がもっと仲介役にならなければ、と感じる。今回は子育てに関して、利用したほうが良いおトクな制度をまとめる。
1. 待機児童対策
国による子育て支援制度は、内閣府が監修している「なるほどBOOK すくすくジャパン」がお勧めだ。待機児童対策として行政が急ぐ「認定こども園」や小規模保育施設、ベビーシッターなどの家庭的保育についてまとまっている。
参考: 内閣府
待機児童を考える上でのポイントは2つある。ひとつは、都市部と地方部など地域差によって緊急度が異なること。そしてもうひとつは、メディアなどで「待機児童ゼロ」と報じられた自治体に翌年、志望者が増える「かくれ待機児童」が大きな問題となっていること。
ただ社会にとって共有課題という認識は強く、東京都によっては平成29年度において、約1381億円もの大型予算を組んだ。子育てに関する制度を理解するには先ず、大きな注目を受けている待機児童に対するリアルタイムな行政の対応について知ることが、子育てに関してオトクな制度を把握する最大の近道だ。
家庭内保育に関しては近年、民間企業も力を入れているため、行政を通してワンストップで情報を取得することをお勧めする。
2. 「地域の子育て支援」にも注目
子育ての悩みは、慣れない子どもの養育に関して「相談できる人がいない(少ない)」ということ。実家や義理の両親が近くにいない方はより不安が強いことだろう。ここで行政では、子育てに対する相談サポート体制の整備を進めている。
地域ごとに整備された子育て拠点や行政拠点に、利用者支援専門員を配置し、両親からの相談に乗っている。また、両親同士でのコミュニティづくりも推進している。このなかには元気いっぱいの子どものほか、病児保育に対する制度や、保育児童後の「放課後児童クラブ」も次々と整備されている。
3. 子育てに対する「助成金」にも注目
子どもを預かる受け皿や相談窓口だけではなく、やはり子育ては「お金」の不安も根強い。国や都道府県の保育制度が「マクロ」ならば、お金という「ミクロ」の部分に手厚い保障をしているのが自治体だ。ここでは東京都北区の助成金制度を代表例としてお伝えする。
(1)医療費に関する主な助成金
子ども医療費助成
入院助成(出産費用の補助)
未熟児養育医療助成
自立支援医療(障碍児に対する医療助成)
助成制度の代表的なものが医療助成だ。国の健康保険によって(一般的に)医療費は3割負担となるが、そこから更に助成制度を適用することで自己負担を少なくできる。助成金のなかには、実際に医療機関で診断書を書いて貰ってから手続き開始となる「後払い」もあるため気をつけたい。
(2)保育料・就学助成
保育料補助制度
区立幼稚園の保育料の減免
就学援助(学費の一部援助)
「学ぶこと」への補助もとても大切だ。保育園が整備されても、学費の面で補助がなければ通うのは難しい、という家庭へのバックアップ体制となっている。
(3)各種手当
子育てに関する手当の所得控除額
児童手当
特別児童扶養手当(障碍児に対して)
助成金としての支給のほか、子育てに関する手当を所得控除とする制度も整備されている。生命保険に加入している人は年末に勤務先へ書類を出すが、この時に合わせて申請することで所得税を節税することができ、毎年末に所得税が還付される(自営業の方は確定申告時)。
(4)住宅手当
ファミリー世帯住宅支援助成事業
親元近居助成
親と近くに住むときの住居費を補填する助成金もある。また、区内の民間賃貸住宅から民間賃貸住宅へ転居した際に、敷金や仲介手数料を助成する制度もある。
このように、国や行政は子育てに対して、マクロ・ミクロの両方から支援制度を整えている。子育てはまさに喫緊の課題だけに、新たな支援制度も今後次々と整備されてくるだろう。まずは気軽に行政窓口に相談し、情報取得をするところから始めたい。
工藤 崇(くどう たかし)
FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点FINOLAB(フィノラボ)入居。執筆実績多数。
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