今回の記事ではアベノミクスをNISA(ニーサ/日本版ISA/少額投資非課税制度)の切り口から振返ってみようと思います。NISA、少額投資非課税制度という言葉は、最近、テレビや新聞などで、見聞きする機会があるかと思います。NISAは、新たに時限的に実施される投資優遇税制制度です。イギリスのISAを手本としており、日本版ISAとも呼ばれています。
そして、昨年の11月に衆議院の解散があってからはや1年が経とうとしています。この1年はいわゆるアベノミクスにより、日経平均株価も大きく上昇しました。この株高の中、2014年にはNISAが始まります。今後の投資スタンスについて今一度考えてみました。
アベノミクスは長期投資家に大きな利潤をもたらした
2012年11月16日。衆議院が解散され、同年12月26日に第二次安倍内閣が誕生しました。安倍首相はデフレの克服、円高の是正、名目3%以上の経済成長を目的とした経済政策、いわゆる「アベノミクス」を打ち出し、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3つの基本方針を「3本の矢」として発表しています。これにより、日経平均株価は2012年年末から2013年にかけて、じわじわと上昇し、同年5月23日には15,942円60銭となり、今のところ2013年の最高値となっています(2013年10月25日現在)。その後は一進一退を続けながらも13,000円から15,000円の間を行ったり来たりしています。
民主党政権時の日経平均株価の最高値は2010年4月につけた1万1,339円30銭ですから、民主党政権時に日経平均株価に連動する投資商品を高値掴みしていたとしても、今の時点では利益が出ているというわけです。2014年1月にはNISAが始まり、より一層の投資資金の流入が期待されています。
①英国ISAの成果
NISAは日本版のISAです。NISAのモデルとなったISAは1999年4月に英国で導入され、現在では、個人の資産形成促進策として成功し、一定の評価を得ています。
NISAの場合、毎年、有効期間5年間の非課税枠(100万円)が1つずつできていくというものであり、対象商品を株式や投資信託に限っていますが、英国ISAの場合、株式型ISA(上限£11,280)と預金型ISA(上限£5,640)があり、非課税期間も無制限となっています。また、資金を引き出さない限り、投資商品のスイッチングも可能です。これらのが日本のNISAとの大きな違いと言えるでしょう。なお、英国ISAとNISAの共通点は
•非課税枠に上限金額があること
•非課税枠を利用しなかった場合、翌年には繰り越せないこと
というところです。つまり、非課税枠を小さくしておくことで、資産家以外にも身近な存在にしており、さらに非課税枠の繰り越しができないとしておくことで、その年中の投資を促そうとしているわけです。なお、三菱UFJ銀行の調べによると、「ISAの利用率は約40%(2400万口座程度)(英国版ISA との比較から考察する日本版ISA の特徴~ISA(アイサ)れるNISA(ニーサ)に向けて~))」となっており、英国では英国ISAが国民に浸透している制度と言えます。
②NISAは長期投資に有効か?
英国ISAと比較すると、まだまだ見劣りのするNISAですが、利用できるものは積極的に利用しておきましょう。
NISAは1口座の上限金額が100万円と決まっていますので、どの投資商品を入れるか考えておくことが重要です。
英国ISAと違って、口座内でのスイッチングができないことを考えると、NISA口座では購入後すぐに売却をするような投資商品よりも、長期的に保有することを目的とした投資商品の方が向いていると考える人が多いようです。日本証券業協会の調べでも老後資金の準備のためにNISA口座を利用しようとしている人が4割を超えています。
但し、5年という期間が設定されていることに注意しましょう。この5年の間でかなりの含み益を抱えたような場合には、非課税期間が終了する前にいったん売却しておくということも考えておくべきです。証券業界からは、英国ISAを見習って、恒久化するべきという声も上がっています。NISAの制度の行方を気にしながら、投資戦略を練っていく必要がありそうです。
③長期投資に適したNISA対象商品
NISAでは、投資対象が限られています。英国ISAとは異なり、預貯金は対象となりません。今のところ、上場している株式、ETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)や株式投資信託等が対象となっています。NISAを最大限利用しようとするのであれば、大きなキャピタルゲインも得られて、さらに配当金も沢山もらえるような投資商品が理想ですが、このような投資商品を探すことは現実味がありません。
いつかやってくるだろう大きなキャピタルゲインを狙うよりも、毎期安定した収入を生む投資商品の方が手堅いと言えますし、イメージしやすいでしょう。
このような観点から、注目をしたいのは、株式の中でも安定配当をしている銘柄、REIT、高配当型のETFとなります。特にREITには注目です。なぜならば、株式配当利回りより高い分配金利回りを維持しているうえに、アベノミクスにより、保有資産である不動産や信託受益権そのものが上昇してくる可能性があるからです。
ミドルリスクミドルリターンと言われているREITですが、不動産市況の回復期においては、投資口価格がかなりの値上がりすることも期待できます。
また、今後はNISAを意識した株式投資信託などを金融機関が販売し始めることも予想されます。新たな投資商品の登場は逐一チェックをしておきましょう。
2014年以降長期投資は根付くか?
今まで行われていた10%軽減税率の終了に代わって、貯蓄から投資への動きを加速させるために始められるNISA。2014年1月以降、アベノミクス効果で盛り上がった株式市場の更なる活性化が期待されていますが、どのような活用がされるかは未知数です。
長期投資の受け皿になるという可能性はあるものの、5年という非課税期間がネックとなるという懸念もあります。
ただ、NISAはまだ始まってもいません。2014年1月以降の利用状況を見ながらNISAの制度改正が行われていく可能性もあります。
仮に、英国ISAのように非課税期間が無制限となり、同口座内のスイッチングが可能となれば、使い勝手もあがり、長期投資に適した制度と言えるようになるでしょう。英国ISAも制度を開始してから政府によるモニタリングが行われ、制度の拡充と恒久化が行われています。経済環境や投資環境を踏まえたうえで、制度の変更が行われる可能性も小さくはありません。
【関連記事】
NISA(ニーサ)とは?今さら聞けない少額投資非課税制度のポイント
NISA(ニーサ)で比較!今年、開設・乗換すべき証券会社はどこ?
NISA(ニーサ)で投資信託を始めるまでに知っておきたいこと
NISA(ニーサ)口座開設でもらえるキャンペーンを徹底比較!!
NISAで始める賢い資産運用〜口座開設の基本を解説〜
勝率9割超えの年も?人気のIPO株に非課税で投資する方法