「なぜ、タカタは上場廃止にならないのですか?」

先日、個人投資家から上記のような質問を受けた。彼女によると「東芝の上場廃止の可能性が報じられているのに、なぜタカタが上場企業として存続しているのか理解できない」ということらしい。

確かに新聞等のメディアでは、東芝 <6502> の債務超過による上場廃止の可能性が繰り返し取り上げられている。同社の2017年3月期の最終赤字は1兆円だ。一方、タカタ <7312> の欠陥エアバッグのリコール費用は全世界で1兆円とも2兆円とも言われている。

欠陥エアバッグのリコール問題からすでに2年半が経過しているが、タカタは未だに上場企業として存続しているのはなぜだろうか? 今回は、そんな疑問に答えたい。

リコール対象台数は1億2000万台に達する

タカタは独立系の自動車部品会社だ。主にエアバッグやシートベルト、チャイルドシートなどの安全パーツを取り扱っている。エアバッグではスウェーデンのオートリブ社に次ぎ世界2位の規模であった。

そのタカタ製エアバッグの異常破裂という「欠陥」が発覚したのは、2008年のことだ。その後、2014年には被害の拡大を受けて米運輸省がタカタ製エアバッグのリコールを全米規模に広げるように自動車メーカーに指示をだす事態となる。

報道によると、タカタ製エアバッグの異常破裂が原因とみられる死亡事故は10件を超えたが、リコール対象台数は1億2000万台に達すると見られ、前記の通りリコール費用は推定で1兆円とも2兆円とも言われている。

2015年には、米運輸省が最大2億ドル(約220億円)と過去最大の民事制裁金を課している。また、今年1月には米司法省とも和解金10億ドル(約1100億円)を支払うことで合意している。タカタ問題は、民事的にも刑事的にも罰金は確定し、残りはリコールと再建にかかる費用となる。

タカタの株価は乱高下

株価を振り返ってみよう。2014年1月に3300円付近で推移していたタカタ株はリコール問題の拡大とともに、2016年5月の310円までほぼ一貫して下げ続けていた。

情勢に変化が見られたのは昨年末である。米司法省と10億ドルで和解が決定したことが明らかになると、12月29日から3営業日連続でストップ高となり、今年1月5日には1233円の高値を付けた。市場では、司法省との和解により、タカタ再建に向けて前進するとの期待が広がった。

だが、株価の戻りは長続きしなかった。1月19日から3日連続のストップ安となり、1月24日に396円の安値を付けたのだ。再建のスポンサーの本命とされていたオートリブ社とキーセイフティー社が債務放棄のために「タカタの法的整理を望んでいる」と報じられたからだ。

4月26日現在、タカタ株は510円前後で推移している。筆者としては、それでも「GC注記(継続企業の前提に関する重要な不確実性)」がついた企業にしては異例の高株価の印象は否めない。

市場はタカタの存続を望んでいる?

タカタはリコールの引当金を計上したことで、2013年3月期に211億円の最終赤字に陥った。2014年3月期は黒字となったが、2015年3月期に再び296億円の最終赤字、2016年3月期にも131億円の赤字を計上した。そして、2017年3月期も640億円の最終赤字を計上する見込みである。

上場企業は「GC注記」が生じた場合、有価証券報告書に記載しなくてはならない。東芝は4月からGC注記を記載したが、タカタも今年の2月から注記が付いている。

タカタは現時点で債務超過になっていない。いままで債務超過にならなかったのは、ホンダなどタカタ製エアバッグの主要ユーザーがリコール費用を立て替えていたからだ。

自動車会社にエアバッグを供給する大手メーカーは世界に3社しかない。タカタはホンダ、トヨタ、VW、GM、ルノー・日産、フォードなどにエアバッグを供給している。タカタが経営破綻するとサプライチェーンに問題があったときに調達できないリスクが生じる。つまり、タカタが生き残っている最大の理由は債務が「計上されていない」からなのだ。

東京商工リサーチの調査によると、タカタの取引先の88%が「サプライチェーン全体に与える影響が大きい」ため同社との取引の継続を望んでいるという。500円台の株価は市場がまだ存続を望んでいることの表れなのだろうか?(ZUU online 編集部)

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