近年、投資対象(商品)が増加してきており、資産の分散の重要性を再認識しているところです。そこで、NISAを有効に活用しつつ、自分に適したポートフォリオの構築についてみていこうと思います。NISA、少額投資非課税制度という言葉は、最近、テレビや新聞などで、見聞きする機会があるかと思います。NISAは、新たに時限的に実施される投資優遇税制制度です。イギリスのISAを手本としており、日本版ISAとも呼ばれています。
投資の格言に「卵は一つの籠に盛るな」というものがあります。これは、一つの籠にすべての卵を入れていた場合、その籠を落としてしまうと卵はすべて割れてしまうということを意味しています。つまり、保有している資金を、一つの投資対象(商品)にすべて投じてしまうのは危険だということで、資産の分散の重要性を説いているものといえます。
これはNISAでも一緒です。
①NISA(ニーサ/日本版ISA)の特徴
NISAを活用したポートフォリオを考える前に、まずNISAの特徴についてみておきましょう。NISAは、2013年末に証券優遇税制が廃止されるのと引き換えに、2014年1月から開始されるものです。
NISA口座では、上場株式の配当金や投資信託の分配金、およびそれらの売却益が、5年間非課税となる大きなメリットがあり、そのことは新聞や金融機関でも大々的に宣伝されています。しかしNISAは、導入に際して参考にされたイギリスのISAに比べて、制度設計が複雑になっており、デメリットも多く存在します。そのため、NISAを利用するに当たって、注意すべきデメリットをしっかり把握しておくことが大切です。
デメリットの一つとして、非課税となる期間が5年に限定されているということがあります。これは、6年目以降、新たな非課税枠を利用しないと非課税でなくなってしまうというデメリットに加え、非課税期間終了時に投資対象を売却していない場合には、当該投資対象の評価額は、非課税期間終了時の時価とされてしまうというデメリットも生じさせてしまいます。
つまり、100万円で購入した投資対象が、非課税期間終了時に70万円になっていた場合、それ以後の取得価額は100万円ではなく70万円と評価されてしまいます。そのため、その後時価が回復し、90万円となったときに売却すると、トータルでは100万円との差額の10万円が損失になっているにもかかわらず、70万円との差額の20万円に課税されるということが起こってしまうのです。これは大きなデメリットといえるでしょう。
また、他のデメリットとして、配当金や分配金、売却益が非課税になる半面、売却損が生じたとしても、NISA口座ではない他の課税口座で生じた収益と損益通算できないということが挙げられます。これら以外にもデメリットは存在しますが、ここに挙げた2つについては、大きなデメリットであるうえに、周知されていない虞がありますので、注意を要します。
②NISA(ニーサ/日本版ISA)に適した金融商品
NISAには上記のようなデメリットが存在するため、そのようなデメリットにも耐え得る形で利用する必要があります。そこでまずいえることは、最長の非課税期間である5年後の時点において、損失(含み損)が生じていることは出来る限り避けたいということです。
5年の間に利益が発生し、既に売却して非課税のメリットを享受出来たのであればよいのですが、5年経過後に、結果的に損失が生じている場合には、売却しなければその後の取得価額はその時点の時価になってしまい不利になりますし、売却したとしても他の課税口座の利益と損益通算できないため、やはり不利になります。
そのため、非課税期間である5年間で大きな損失が発生しないと思われる、または一時的に大きな損失が生じたとしても、5年の間に投資額を上回るレベルにまで価額が回復するであろう対象に投資すべきといえます。
具体的には、価格の変動リスクが比較的小さなインデックス投信や、今後相当程度確実に収益が拡大するであろう株式が検討対象になるでしょう。因みに、インデックス投信を選択する際には、投資信託の購入、保有、売却に要する費用についても注意を払うことが必要です。NISAでの運用は最大5年と比較的長期にわたりますので、特に保有期間中継続的に徴収される保有に係る手数料(信託報酬)については、しっかりと調査したうえで納得して購入することが大切です。現在は、上場投資信託(ETFやETN)も充実しており、これらは一般的に、通常の投資信託よりも信託報酬が低く設定されていますので、投資信託を選ぶ際には一考に値するでしょう。
大きなリターンの獲得を目指して投資をした場合、狙い通り大きな利益を得られれば非課税のメリットを十分に享受できますが、思いに反して大きな損失を被れば、デメリットの存在のため損失を低く抑えることが困難となります。したがって、非課税のメリットのみに目を奪われることなく、デメリットを考慮して、どのような対象へ投資を行えばよいのかをしっかりと吟味することが重要です。
③NISA(ニーサ/日本版ISA)の各年の非課税枠を有効に使う
それでは、具体的にどのようにNISAを活用したポートフォリオを構築していくのが良いのでしょうか。資産の分散には、大きく分けて範囲の分散と時間の分散があります。前者は、様々な対象に幅広く投資(分散)することで、そのうちのいずれかから損失が生じても、他の資産から利益が出ていれば相殺できることとなり、大きな損失を被るのを回避出来るというものです。また後者は、同じ投資対象に投資するにしても、全額を一度に投資してしまうのではなく、購入時期をずらす(分散する)ことで高値掴みのリスクを軽減出来るというものです。
そこで、NISAは1年100万円までの非課税枠が5年間継続することになるため、最大で500万円を同時に運用することが出来ます。そのため、毎年の100万円の枠内で分散投資するという方法、または1年ごとに違う対象に投資するという方法が想定されます。
単価が低い対象に投資する場合、または様々な対象に投資する投資信託を利用する場合には前者の方法が適合し、単価が高い対象に投資する場合には後者の方法が適合するでしょう。このことは、投資初心者だけでなく、投資経験者にも当てはまることですから、自分の運用方針に沿った形でNISAを活用し、収益の拡大に繋げて頂きたいと思います。
くれぐれも、投資をする際には資金分散が鉄則です。もちろん、どのように分散するかは投資家ごとの方針によって異なりますが、いずれの人にとってもNISAを利用した分散投資は有効といえます。したがって、NISAのデメリットをよく理解したうえで、より自分に適したポートフォリオを構築して頂きたいものです。
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