日経平均株価が2万円台前後で推移する等、株式市場では良好な投資環境が続く。株式市場の好調を見て、投資を始めたという人も多いだろう。株式をはじめとした投資は自己責任で行わなければならない。

タカタ <7312> が6月26日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。同社が取り扱う国内外で発生したエアバッグの不具合等によるリコール問題の影響を受けて業績が悪化、経営破綻という結果になった。

個人投資家はNISAで「タカタ」を購入

タカタ
(写真=PIXTA)

ここ数日、タカタが民事再生法の適用を申請するのではないかという思惑から株価は大幅に下落した。2017年5月には株価は一時632円まで上昇したが、6月22日現在は110円という状況であり、5分の1以下にまで値下がりした。

株価が下落する過程で、株価を安いと判断した個人投資家の多くが、タカタ株の購入に「NISA(ニーサ)」を利用している。SBI証券が発表しているNISA口座での国内株式出来高ランキング(6/19 ~6/23)では、タカタがランキング3位となっている。

NISAとは2014年から始まった少額投資非課税制度のことだ。NISA専用の口座を開設することで株式や投資信託等を購入できる。①毎年120万円を、②最長5年間まで、③投資総額最大600万円まで、投資することができる。投資枠で発生した利益に対して税金がかからない。非課税にすることができる。

利益に対して税金がかからないと聞くと、お得に感じる人も多いかもしれないがデメリットもある。特定口座や一般口座であれば、株式投資等で損失が発生した場合には利益と損益通算できる。一方、④NISA口座で購入した株や投資信託等は、特定口座や一般口座の株等と損益通算を行えない。損失が確定してしまうのだ。

監理銘柄と整理銘柄の違い

個人投資家がNISA口座でタカタ株を買う中、東京証券取引所は6月26日、タカタ株を7月27日付で上場廃止にすることを発表した。タカタ株は整理銘柄に指定された。

証券取引所では、上場銘柄が上場廃止基準に該当する恐れがある場合、その銘柄を一定期間監理銘柄に指定して売買を行わせる。株式が上場廃止になると、証券取引所での売買が行われなくなる。上場廃止になる可能性が高い銘柄を投資家に周知させるためだ。

監理銘柄に指定された場合、必ず上場廃止になるわけではない。その後、監理銘柄が上場廃止基準に該当する恐れがなくなれば再び通常銘柄になり、通常銘柄として取引できるようになる。

一方、上場廃止基準に該当し、上場廃止が決定した場合、直ちに株式を取引停止にすると投資家の売買の機会が著しく失われてしまう。上場廃止が決定した場合、株券は紙切れ同然の価値になってしまう。

投資家にその事実を知らせるために、整理銘柄に原則1ヵ月間、周知を行う。そして、整理銘柄として銘柄の売買が行われた後に上場廃止となる。売買できる最後の日は1か月後の7月26日で、27日に上場廃止になる。

万一買った時よりも株価が下落すれば、損失は確定してしまう。とは言え、タカタ株は1か月後に紙切れ同然の価値になってしまうわけだから、タカタ株を保有している株主には株を売る時間が与えられたわけだ。

損失が確定した場合、特定口座や一般口座でタカタ株を保有していたのであれば、他の株式から発生した利益と損益通算を行うことができる。しかし、損益通算を行うことができないNISA口座でタカタ株を保有していた場合には損失は確定されてしまう。いち早く売却できれば、投資資金を少しは回収できることになる。

上場廃止の報道されてからというもの、タカタ株は大量の売り注文が殺到し、最安値を更新する毎日だった。「少しでも高値で売れてよかった」という投資家もいれば、「売りたいのに売れない」という投資家もいるだろう。

「大企業だし、まさか上場廃止なんてないだろう」「これまでも何とかなったんだから大丈夫」だと思った投資家も多いかもしれない。上場廃止が決定されるまでの間に、何度も売る機会はあったはずだ。早く売ればそれだけ損失も少なく済んだはずなのに、売らなかったのだ。投資に対しての甘さが、損失という結果を招いたと言わざるを得ないだろう。

株式投資をはじめとした資産運用に絶対はない。整理銘柄や監理銘柄に指定されることについて、事前にしっかりと理解しておかなければならない。さらに、NISA口座を使う場合も、ただ安易に安いからと銘柄を選定するのではなく、上場廃止になるリスクが少なさそうな好業績銘柄の組み入れを考えることが大事だろう。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。WAFP関東理事。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、メルマガ発行( http://yokoyamarika.com/9zu1 )、講演活動、株塾を行う。

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