世界の株式市場は全体で見ると好調を維持しているが、国によっては温度差もある。そうした中、ウォール街の市場関係者で「今年下半期の投資先」として注目されているのが資源国である。なぜ資源国が注目されているのか。今回はその背景を整理し、投資対象として有望な国を吟味してみよう。

流れはリスクオン、資源国の株価が好調

資源国経済,投資
(写真=Thinkstock/Getty Images)

まず、2017年上半期の株価を見ると、先進国を対象とした「MSCIワールド」の年初来の騰落率は7月14日現在で+11.2%なのに対し、新興国を対象とした「MSCIエマージング・マーケット」は+21.4%とほぼ倍の上昇率となっている。

新興国の株価が先進国を圧倒的にアウトパフォームしており、リスクオンの流れになっていることが確認できる。

また、見逃せないのはIMF(国際通貨基金)や世界銀行といった国際機関が「世界経済の成長加速にともなう資源価格の上昇」を予想していることだ。好調な世界経済に加え、貿易取引の拡大、中国経済の減速回避、ドル安といった追い風が吹いていることも資源国への投資魅力を高める要因だ。

世界銀行によると、2017年の貿易取引量は+4.0%と昨年の+2.5%から伸び率が大きく改善する見通しである。世界経済は成長・貿易取引量ともにようやく底入れを迎え、資源価格にも支援材料となることが予想されている。

中国リスクの後退、ドル安もサポート

中国経済の減速回避もプラス要因だ。ウォール街の市場関係者の間では昨年末の時点で中国経済の失速を危惧する声もあったが、実際には今年4~6月期の中国のGDP成長率は前年同期比+6.9%を示している。IMFが4月と6月に中国の成長見通しを上方修正したこともあり、「中国経済は思ったほど悪くない」との観測が広がっている。

中国は世界最大の「資源消費国」であることを踏まえると、資源国経済にも当然プラス要因として作用する公算が大きい。

さらに、為替市場でドル安が続いていることも「ドル建ての資源価格」には追い風だ。FRB(米連邦準備制度理事会)が公表しているドルインデックス(対広域通貨)は昨年12月をピークに低下に転じ、現在もそのトレンドを継続している。

2017年は米利上げでドル高になるとの見通しも多かったが、インフレが鈍化していることで長期金利が上がらなかったことから、むしろドルインデックスは低下トレンドにあるのが現状だ。

カナダは利上げ開始で成長がピークアウト

では具体的にどの資源国が投資先として有望なのだろうか。ひと口に資源国と言っても国ごとに状況は異なる。今回は代表的な資源国としてカナダ、オーストラリア、ブラジル、ロシア、南アフリカを見てみよう。

カナダでは7月12日に2010年以来7年ぶりとなる利上げが実施された。「潜在成長率を上回る成長が続く」との見通しが利上げを後押しした。実際、1~3月期のカナダのGDP成長率は年率換算で+3.7%に達している。

カナダの利上げの背景には、中国からの投資マネーの流入で住宅価格が高騰していることも一因となっている。4~6月期も3%超の成長が見込まれており、追加利上げが実施される可能性が濃厚だ。

ただし、注意すべきは原油価格が伸び悩んでいる点である。カナダ経済は原油への依存度が大きく、原油価格の伸び悩みは不安材料でもある。

カナダ中銀は2017年の同国の経済成長率を+2.7%、2018年は+1.8%と予想しており、今年1~3月期をピークに成長は鈍化する見通しが示されている点も気掛かりだ。

ちなみに、トロント総合指数の年初来の騰落率は0.7%の下落で、4月以降は軟調な展開が続いている。当面は利上げと原油価格の低迷が重しとなる恐れがある。

オーストラリア、103四半期連続のプラス成長

資源国の中で最も有望視されているのがオーストラリアだ。1~3月期のGDP成長率は前期比+0.3%と103四半期(25年9カ月)連続でプラス成長を維持しており、世界最長の景気拡大期間となっている。

OECD(経済協力開発機構)が6月に公表した世界経済見通しによると、2018年のオーストラリアのGDP成長率は+2.9%と2017年の+2.6%から加速する見通しで、この数字は先進国の中では最も高い成長率となる。政治面での安定感もあり、オーストラリアは「資源国の中で最も安心して投資できる優等生」と言えそうだ。

また、地理的にも近く、経済のみならず最近では政治的な依存度も高まっている中国経済が好調なのも心強い。

オーストラリアの代表的な株価指数であるASX200指数の年初来の騰落率は+1.8%にとどまっているが、原油価格の下落で資源国が全般的に売られたことも影響しており、その分伸びしろがあると見ることもできよう。

ブラジル、金融市場はテルメ大統領を評価

ブラジルといえば、不安定な政情もあって投資先としては敬遠されがちであるが、ここにきて信頼回復に向けた動きも見られる。

テルメ大統領は痛みをともなう改革を進めていることから国民には極めて不人気だが、その一方で同政権の構造改革は金融市場からは高い評価を得ている。ちなみに、6月下旬にテルメ大統領は収賄容疑で起訴されたが、目下のところ退陣に追い込まれる様子は見られない。風当たりの強い政策を進めていることから、だれも政権を引き継ぎたくないのが実情なのだろう。

こうした状況もあり、ウォール街の市場関係者からは「構造改革のさらなる進展」を期待する声も聞かれる。

7月14日現在、ボベスパ指数の年初来の騰落率はで+8.6%、この1カ月弱では+7.7%となっており、にわかに地合いが好転している。構造改革の進展がブラジル経済への信認をどこまで高めることができるかがポイントになろう。

ロシアは原油価格の低迷がアキレス腱

ロシアのGDP成長率は2015年1~3月期から7四半期連続でマイナスを記録したあと回復に転じ、今年1~3月期まで2四半期連続のプラスを示している。

ロシア経済は、どうやら長いトンネルからようやく抜け出したようだ。3月から6月にかけて3回連続で利下げを実施していることもあり、当面はプラス成長を維持する可能性が高い。

とはいえ、ロシアの代表的な株価指数であるRTS指数の年初来の騰落率は7月14日現在でマイナス9.4%と大きく下げている。期待されていた原油価格の上昇が見られなかったことが主な原因であり、株価はおおむね昨年11月のOPEC減産合意前の水準に逆戻りしている。

ロシアへの投資は原油を買っているのとほぼ同じであり、原油価格の低迷が続くようだと株価の値上がりも期待できないだろう。また、トランプ政権のロシア疑惑、ウクライナやシリア情勢を背景とした不安定な米ロ関係も懸念されている。

南アフリカ、政治の混乱が続く

南アフリアでは不安的な政局が景気の足を引っ張っており、GDPは1〜3月期まで2四半期連続でマイナスだ。

景気低迷で公的債務の対GDP比率が上昇しており、格下げが相次いでいる。S&Pは南アを「投資不適格」としており、金融市場における南アの評価は著しく低下している。

インフレ率は目標のレンジ内まで低下しているものの、通貨ランド安が警戒されて利下げに慎重になっていることも景気の回復を遅らせる要因だ。

政治的な混乱が収束する見通しは立っておらず、資源国と言えども現時点での投資には慎重にならざるを得ないだろう。

中国経済やドルの変調に注意

上記の通り、資源国は有力な投資先と見られるが、その中でもウォール街で特に有望とされているのが成長の加速が予想されているオーストラリア、構造改革が進展しているブラジルである。

繰り返しになるが、資源国が注目されている背景には景気減速を回避した中国経済とドル安の存在がある。したがって、中国の金利上昇による過度な金融引き締め効果や、米バランスシート縮小開始によるドルの反発などがリスク要因として警戒される点は留意しておくべきだろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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