本格的な少子高齢化社会を迎え、政府は制度維持のため現役世代の社会保険料負担を年々増やしてきた。富士通総研のエグゼクティブ・フェロー早川英男氏のコラム『「賃金税」としての社会保険料』によれば、サラリーマン世帯の場合、厚生年金保険料と健康保険料を合わせた社会保険料負担はここ10年間で収入の21.93%から27.35%へと5.4%あまり上昇しているとのこと。

こうした負担増以上に問題視されているのが逆進性だ。簡単に言えば、社会保険料は高所得者ほど負担割合が少なく、中・低所得世帯への負担が重くなる状況のこと。

毎年増え続ける社会保険料

社会保険,逆進性
(画像=PIXTA)

本来社会保険とは、将来の老後生活に備えて現役世代のうちに積み立てる制度である。一方、現在の年金制度は、現役世代が高齢者世代の生活を支える「相互扶助」の仕組みを採用している。その結果、少子高齢化が進む中で、社会保険制度を維持するためには現役世代の負担を増やさざるを得ない事態に陥った。

平成16年度の年金制度改正により、厚生年金保険料は毎年13.594%から0.354%ずつ引き上げられ、その結果平成29年度には18.30%まで上昇した。年金の保険料制度は、主にサラリーマンが負担する厚生年金保険料と、自営業者・フリーター等が負担する国民年金保険料で構成されている。

厚生年金と健康保険料とを合わせた社会保険料合計で、負担率は27.35%に達している。医療保険制度は、主にサラリーマンが加入する健康保険と、自営業者・フリーター等が加入する国民健康保険で構成されている。勤め先と従業員本人で負担を折半しているため負担感は緩和されているが、それでも従業員負担額は所得税・住民税を上回っている。こうして現役世代の負担が増やされる一方で、社会保険料が抱える逆進性の問題は一向に解消されていない。

厚生年金保険料:一定報酬以上は負担額が頭打ちに

サラリーマンが拠出する厚生年金保険料の場合、標準報酬月額(月々の給料)に応じて一定額が徴収される。

例えば報酬月額が15万円の保険料負担額は2万3850円(従業員負担分はこの半分)だが、30万円の場合は4万7700円と負担額が倍増する。60万円の場合は9万3810円とさらに倍増する。

ところが報酬月額が60.5万円を超える場合、負担額は上限の9万8580円に達し、これ以上増えない。この結果、報酬月額が60.5万円までの負担割合が概ね15.3%から16.4%の範囲に収まるのに対し、報酬月額100万円の負担割合は9.858%、200万円の場合は4.929%にまで低下する。

ちなみに、保険料を負担するサラリーマン3600万人のうち、上限に達するのは240万人で、全体の6.5%に過ぎない。これが、厚生年金保険料の逆進性である。健康保険も負担額を頭打ちにする仕組みを採用しており、同様に逆進性の問題を抱えている。

国民年金保険料:報酬に係わらず同じ金額を負担

国民年金保険料の場合、さらに逆進性が顕著になっている。ちなみに国民年金保険料は、20歳から60歳までのサラリーマン・専業主婦以外、つまり自営業者やフリーターなどの非正規労働者、スポーツ選手、デザイナー、開業医などが対象者となる。

国民年金保険料は月々の収入に関係なく、一律で1万6490円が徴収される。フリーターで月々の収入が15万円前後の場合、負担率は16.49%に達する。加えて厚生年金と違い、事業主との折半制度はないため、本人が全額を負担しなければならない。

低所得者に対する1/4から全額までの免除・猶予制度はあるが、この制度の適用を受けた場合、将来の年金給付自体が減額されてしまう。一方で高所得者、例えば全国に7万人いる開業医の平均報酬(収入から経費を差し引いた額)は月200万円に達するが、この場合の保険料負担額は0.82%に過ぎない。

課題は残されたまま

こうしたいびつな構造は、所得の再配分(税金・社会保険料といった公的負担を通じた所得格差の平準化)機能を阻害し、先進国の中でもアメリカに次いで高い貧困率やジニ係数(所得格差を示す指数)拡大の一因となっている。一方で政府がすすめる社会保険改革では、「消費税を引き上げて年金財源の不足に充てよう」との主張が先行し、逆進性の問題に関してはほとんど議論されなかった。(ZUU online 編集部)