「世界の年金基金ランキング」が発表され、トップ300のうち最も運用資産が最も多いのは、1.2兆ドルを運用する日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)であることが分かった。年金積立金管理運用独立行政法人は2010年から連続で首位を維持している。日本からは地方公務員共済組合連合会も13位に入った。

ランキングはロンドンを拠点とするコンサルティング企業ウイリス・タワーズワトソン が、2016年4月1日~2017年3月31日のデータに基づいて作成したもの。

調査の対象となった年金基金トップ300の総運用資産額は、前年度から6.1%増の15.7兆ドル。世界の全年金基金の運用資産の43.2%に値するという。

運用資産額が最も大きい年金基金トップ20

20位 ATP(デンマーク) 1131億ドル
19位 GEPF(南アフリカ) 1192億ドル
18位 オンタリオ州職員退職年金基金(カナダ) 1304億ドル
17位 テキサス州職員退職年金基金(米国) 1332億ドル
16位 フロリダ州運用管理理事会(米国) 1539億ドル
15位 従業員積立基金(マレーシア) 1655億ドル
14位 ニューヨーク州公務員年金基金(米国) 1716億
13位 地方公務員共済組合連合会(日本) 1832億ドル
12位 ニューヨーク州職員退職年金(米国) 1845億ドル
11位 カリフォルニア州教職員退職年金(米国) 1939億ドル

10位 PFZW(オランダ) 1964億ドル
9位 中央積立基金(シンガポール) 2271億ドル
8位 カナダ年金制度(カナダ) 2358億ドル
7位 カリフォルニア州職員退職年金基金(米国) 3066億ドル
6位 中国国家社会保障基金(中国) 3487億ドル
5位 ABP(オランダ) 4043億ドル
4位 韓国国民年金公団(韓国) 4622億ドル
3位 連邦退職貯蓄(米国) 4856億ドル
2位 政府年金基金(ノルウェー) 8931億ドル
1位 年金積立金管理運用独立行政法人(日本) 1.2兆ドル

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トップ300の運用資産総額は回復基調、トップ20の増加率は平均以上

2015年度には3.4%の減少を見せた年金基金トップ300の運用資産総額だが、2016年度は6.1%増と回復の兆しを示している。特にランキングのトップ20の運用資産規模の増加率は、7.1%と平均(6.1%)よりも高くなっている。

過去5年で最も顕著な成長を記録したのは北米(6.7%)で、欧州(3.1%)やアジア(2.8%)の2倍以上の年間増加率だ。年金基金トップ300が運用する資産を米国の年金基金が占める割合は38.6%に達しており、全134基金中7つがトップ20入りを果たしている。

米国の規模にはおよばないものの日本(12.5%)、ノルウェー(5.7%)、カナダ(5.4%)、英国(4.8%)という結果だ。英国は前年度から0.6ポイント減でカナダに順位を抜かれた。

米国では年金基金が増加、ドイツ・メキシコ・日本などは減少

米国では運用資産総額が増えただけではなく、新たな基金の設立も活発化している。過去5年で新たに設立された28の年金基金のうち、13は米国のものだ。次いで英国(26)、カナダ(18)、日本とオーストラリア(各16)が最多となっている。ノルウェーはひとつしか基金がないにも関わらず、運用総額のシェアでは3位という点が興味深い。

最も年金基金が減ったのはドイツとメキシコで、各4つの年金基金が廃止された。日本、スイスでも各3つ、英国やカナダ、オランドなどでも各1つ減った。

トップ20の過去5年の成長増加率を比較すると、中国(20.6%増)が圧倒的な伸びを見せている。ノルウェー(9.2%増)、韓国(8.6%増)、米国(7.6%増)、シンガポール(7.3%増)がトップ5で、デンマーク(1.4%減)日本は(2.3%減)はマイナス成長だ。

日本・中国・韓国など、アジア圏の基金も多数上位に

日本からは年金積立金管理運用独立行政法人(1位)と地方公務員共済組合連合会(13位)のほか、企業年金連合会(26位/1011億ドル)、全国市町村職員共済組合連合会(30位/948億ドル)、国家公務員共済組合連合会(50位/652億ドル)、勤労者退職金共済機構(73位/489億ドル)などがトップ100入りを果たした。

ほかのアジア圏では韓国の国民年金公団(4位)、中国の国家社会保障基金(6位)、シンガポールの中央積立基金(9位)、マレーシアの従業員積立基金(15位)が上位にランクイン。

トップ21~50にはインドの従業員積立基金(21位/1103億ドル)、オーストラリアの公務員積立年金(32位/920億ドル)や退職年金(36位/781億ドル)、台湾の労働年金基金(35位/805億ドル)が名を並べている。

投資市場の盛況が年金基金の運用益拡大に貢献?

ウイリス・タワーズワトソン投資部門国際責任者ロジャー・アーウィン氏は、「許容範囲内のリスクで魅力的な価格の資産を探すという市場傾向が、引き続き年金基金の運用益拡大に貢献する」との見解を示している。

またトップ20の特徴として、過去の成功手法に依存するのではなく、「より効率的な資産は分や事実に基づいた戦略、スマートベータの利用など、革新を起こす能力」を挙げている。

総体的には確定給付型の資産は5.6%増、確定拠出型は9.6%増、リザーブファンドは3.9%増、ハイブリッド型は2.9%増。公表されている運用資産総額の過半数を確定給付型(65.5%が占めているが、前年からは0.4ポイント落ち込んでいる。代わって確定拠出型は0.7ポイント増え(22.2%)、リザーブファンドやハイブリッド型は変動なしだった。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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