所得税率の高い高額所得者ほど枠が広がる

ふるさと納税特集

「ふるさと納税」は高額所得者ほど得するという、富裕層にとってはなんともうれしい制度だ。ふるさと納税で自分が選んだ自治体に寄付した金額のうち、2000円を超える部分が一定の範囲内で全額控除され、その上限は収入や家族構成などによって異なることは、前回述べた。その目安としては一般的に「納める住民税(所得割)の2割程度と考えればいい」とされている。しかし、高額所得者の場合、それが3割、さらには4割以上に膨らむケースもあるのだ。そのカラクリを見てみよう。下の図は税金控除の内訳を示したもの。

【税金控除の内訳】

ふるさと納税特集

寄付した金額のうち2000円を除いた部分は、以下の3つに分けて控除される(復興税率1.021%は考慮していない)。

① 所得税:[寄付額-2000円]×所得税率(5~45%)
② 住民税(基本分):[寄付額-2000円]×住民税率10%
③ 住民税(特例分):[寄付額-2000円]×[100%-住民税率10%-所得税率(5~45%)]

②は寄付金額から2000円を引いた金額に一定の比率をかけたもので、所得の大小によってパーセンテージに差は出ない。しかし、①はかけられるのが所得税率なので、所得によってパーセンテージが違ってくる(下の図3参照)。ご承知の通り、所得税は所得が多いほど税率が高くなるので、所得が多い人ほどこの金額は大きくなる。

たとえば、所得税率10%の人が1万円寄付した場合は、①が800円、②が800円、③が6400円となる。これに対し、所得税率40%の人が同じ1万円を寄付した場合、②は同じ800円だが、①は3200円、③が4000円となる。③は①②で控除しきれない部分を埋めるための特例分で、結果的に合計8000円控除されることに変わりはない。ただ、③の上限は住民税所得割額の2割、①の上限は総所得の4割、②の上限は総所得の3割と決まっている。高所得者ほど総所得や住民税所得割額が高いうえに、①の金額が増えて相対的に③が減るため、一定の範囲内で寄付の枠も広がるというわけだ。

熱心な高額所得者はいち早く制度を活用