(本記事は、掛越直樹氏の著書『なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方』秀和システム、2017年6月21日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
金曜ロードShow!のスタジオジブリの作品と為替の関係とは
ジブリの有名な作品といえば、「風の谷のナウシカ」や「千と千尋の神隠し」などが挙げられますが、これらの作品はテレビでもたびたび放映されています。
それが日本テレビ系列で金曜の21時に放送される「金曜ロードShow!」で、この番組では年に数回、ジブリ作品が放映されています。
金曜ロードShow!でジブリ作品が放映されると、市場関係者からこんな声が聞こえます。
それは、「ジブリ作品がテレビで流れると相場が荒れる」というもの。
これは「ジブリの法則」とも言われていますが、もし、仮にジブリ作品がテレビで流れ、それが原因で為替が円高に振れ、結果として株安になったとしたら、ジブリ作品なんか観たくないと考える人も出てくるかもしれません。
そこで、ジブリ作品は本当に為替に影響してくるのか、実際に検証してみました。
上の図14では1999年1月~2009年7月までを、下の図15では2009年8月~2017年1月までの金曜ロードShow!で放送されたジブリ作品をそれぞれ抽出して、放送日前日のドル円レートの終値と放送日当日のそれを調べ、その差額を算出してみました。
その結果、放送回数109回のうち、円高ドル安が54回、円安ドル高が54回、変わらずが1回ということになりました。
また円高ドル安の最大は、2015年8月21日放送の「おもひでぽろぽろ」の▲1.37円、円安ドル高の最大は2009年6月5日放送の「千と千尋の神隠し」の+2.07円という結果になりました。
検証結果を見てみると、ジブリ作品がテレビで放映されると、相場が荒れるとは言われていますが、それほどではないように思われます。
ただ数値を眺めてみると、第1金曜日の週に放映された分は他の週に放映されたものよりも、為替が大きくぶれている感じがします。
この要因はこの日に原則、米国の雇用統計の発表があるため、その結果次第で為替が変動していることが言え、ジブリ作品の放映とは無関係のように思われます。
「ジブリの法則」は、たまたま別のイベントと重なったために為替が変動してしまっただけにすぎず、むしろ心理的な側面が大きいと言えそうです。
●まとめ
・市場関係者の間では、ジブリ作品がテレビで流れると相場が荒れるという「ジブリの法則」があると言われている
・実際にジブリの法則を検証してみると、相場が荒れるという相関はそれほど見られなかった
・ジブリの法則は別のイベントと重なったために相場が変動してしまっただけにすぎず、心理的な側面が大きいように思われる
大河ドラマと株価の関係とは
次は大河ドラマと株価の関係についてです。
大河ドラマは日曜夜にNHKで放送されますが、大河ドラマは放送前の時点、たとえば、タイトルや配役が決定したときから話題になりますし、また、主人公の発祥地においては、観光客が訪れるなど一定の経済効果はあるように思われます。
このように大河ドラマは時代を映す鏡であるとも言え、もしかしたら、きっと大河ドラマと株価についても何らかの因果関係があるかもしれません。
そこで、歴代の大河ドラマ作品と日経平均を表にしてみました。
図16は歴代の大河ドラマの作品を、1963年から2016年まで古い順に並べ、放送開始前月末の日経平均の終値と放送終了当月末のそれを比較して、騰落率を算出してみたものです。
大河ドラマは2016年までで計55回放送されましたが、うち、期間中、騰落率がプラスになったのが34回、マイナスになったのが21回、上昇確率は61.8%ということになりました。
騰落率の最大は1972年・新平家物語の+91.9%、最小は2008年・篤姫の▲42.1%という結果になりました。
また主演を男性単独主演、女性単独主演、複数主演(男女混合を含む)別に騰落率を出してみると、男性単独主演が全35回でプラスが23回、マイナスが12回、上昇確率65.7%、女性単独主演が全9回でプラスが7回、マイナスが2回、上昇確率77.8%といずれも高い確率で上昇することがわかりました。
しかし、複数主演の場合は対照的に全11回でプラスが4回、マイナスが7回、上昇確率36.4%と他の2つに比べ、劣ることがわかります。
このため、株価にとって、大河ドラマの主演は単独であることが望ましく、中でも女性主人公は高パフォーマンスを上げ、一方、複数で主演した場合は株価的には好ましくないということが過去のアノマリーからはわかりました。
●まとめ
・2016年までの大河ドラマと株価の関係は期間中に約6割強が上昇する
・主演別の上昇率では女性単独主演が最も高く、逆に複数主演は最も低い
・今後の大河ドラマの予定をみると、過去のアノマリーから2019年は株価にとって、鬼門といえそうだ
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