(本記事は、掛越直樹氏の著書『なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方』秀和システム、2017年6月21日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「日経平均とTOPIX」、「ニューヨークダウとS&P500」の違いとは?

なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方
(画像=marvent/Shutterstock.com)

経済トークをするにあたって、主に営業マンに知ってもらいたい経済指標やイベントについて説明します。

まずは、日米の代表的な株価指数である日経平均とTOPIX、ニューヨークダウとS&P500についてです。

どれもテレビなどのニュース番組で取り上げられる株価指数ですが、みなさんはこれらの違いについてご存じでしょうか?

おそらく、おおよその内容はわかっていてもはっきり答えられる人は少数派ではないでしょうか。

ここで、これらの指標の概要を知っておけば、経済トークにおいても話題のひとつになることでしょう。

最初に日経平均とTOPIXからです。

日経平均は東京証券取引所第一部(以下東証1部)に上場する225銘柄を選定し、その株価を使って算出するものです。

日経平均を構成する225銘柄は市場流動性やセクターバランスをもとに定期的に見直しされます。

また日経平均は長期間にわたる継続性を維持することと産業構造の変化を的確に反映させることを満たしながら、市場流動性の高い銘柄で構成する株価指数を目指しています。

算出開始は1950年9月からで当初は東京証券取引所が算出していましたが、1970年から日本経済新聞社が算出しています。

代表的な銘柄としては、「ファーストリテイリング」、「ソフトバンク」、「KDDI」などが挙げられます。

TOPIXは東証株価指数とも呼ばれ、東証1部に上場する普通株式の全銘柄を対象とする株価指数です。

1968年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものです。

2017年4月現在の指数は1500台、50年弱で約15倍に増えたことになります。

代表的な銘柄としては「トヨタ自動車」、「三菱UFJフィナンシャルグループ」、「NTT」など挙げられます。

これが日経平均とTOPIXのそれぞれの定義ですが、では両者の違いは何なのでしょうか?

TOPIXは日経平均に比べると、特定の企業の株による影響を受けにくくなっています。

その一方で単元当たりの出来高が高い株式については影響を受けやすくなっています。

どちらが大切かといえばどちらも重要です。

ただ政府は日経平均を参照している ケースが多いため、ニュースではそちらにスポットが当たるケースが多いように思われます。

次はニューヨークダウとS&P500です。

ニューヨークダウは世界的に活躍する優良30銘柄を米国の通信社ダウ・ジョーンズ社が選定し、算出しています。

算出開始は1896年で、120年余り続いています。

ダウ算出株の指数には工業関連株、サービス関連株、金融株、輸送株、公共株などで構成されています。

一方、S&P500は米国の投資情報会社スタンダード・アンド・プアーズ社が発表しており、ニューヨーク証券取引所に上場している銘柄から代表的な500銘柄の株価を時価総額比率で加重平均し、指数化したものです。

1923年に算出が開始されましたが現在の500銘柄になったのは1957年からとなっています。

ニューヨークダウもS&P500もどちらが大切かといえば、どちらも大切です。

ニューヨークダウは米国株式の主要銘柄の株価推移ですし、S&P500は米国株式市場全体の水準を見極めるのに役立ちます。

経済トークをする医者や経営者の方は日経平均やニューヨークダウは知っていてもTOPIXやS&P500を知らない人はけっこういらっしゃいます。

それらも含めて覚えておけば怖いものなしです。

●まとめ

・日米の代表的な株価指数として「日経平均」、「TOPIX」、「ニューヨークダウ」、「S&P500」がある
・「日経平均」と「TOPIX」、「ニューヨークダウ」と「S&P500」のおおまかな違いは主要銘柄の株価の平均と市場全体の時価総額の指数化と覚えておく
・TOPIXとS&P500は日経平均やニューヨークダウよりも認知されていないケースも多く、恰好の経済トークのネタになる

「ドル円」と「ユーロ円」のレートを即座に言えますか

次は為替についてです。

たとえば、みなさんがお客さまと経済トークをしていたとします。

そのときに次のようなことを質問されたらどうでしょうか?

「ドル円とユーロ円のレートって現在、いくらぐらいの水準かわかりますか?」

そのときに「1ドル111円、1ユーロ121円ぐらいでしょうか」と答えられれば大丈夫です(2017年4月現在)。

ドル円あるいはユーロ円が変動相場制であることは周知の事実ですが、そもそもなぜそのようになったのでしょうか?

そういった背景も知っておいたほうが経済トークのネタのひとつにもなってきます。

ここではドルと、ユーロの歴史を振り返りながら、現在の為替レートが即座に話せることを目的に説明します。

まずはドルからです。

もともとドル円は固定相場制で、第2次世界大戦後、1ドル360円と決められていました。

ドルは当時金本位制を取っており、その理由はドルがいつでも金と交換できる通貨で、それを発行するためには金の保有量の裏付けが必要だということからでした。

ところが、米国の国際収支が赤字となり、同国の保有する金が減少してきました。

その結果、1971年にドルと金の交換が一方的に停止され、大きな国際危機となりました。

これがニクソンショックです。

その後、主要通貨に対して米ドルが切り下げられましたが、長くは続かず、1973年に先進国の間で為替レートは変動相場制に移行しました。

その後、1985年のプラザ合意で円高ドル安に誘導され、ドルは次第に弱くなっていったと言われました。

しかし、貿易取引など実需取引の多くはドルで決済されており、基軸通貨としての地位は現在でも保たれています。

次はユーロです。

ユーロは基軸通貨のドルに対抗するために1999年から新たに誕生した欧州単一通貨で、その後2002年1月から流通が開始されました。

流通が開始された当初は12カ国でスタートし、現在は19カ国にまで広がっています。

もともとユーロが誕生した背景には、実体経済の統合と為替相場の安定化があったといわれています。

ただその一方で、財政政策は各国政府が個別で行っているため無理が生じてきました。

そのひとつの例がギリシャです。

ギリシャは2000年にユーロへの参加が承認されましたが、2009年に同国で債務危機が明るみになりました。

これを受けてギリシャ国債は暴落、2011年には財政再建の達成は困難だと判断されました。

そして、この危機はポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインといった諸国にも飛び火し、欧州債務危機が懸念されました。

それを受けてユーロの信任は低下していったのです。

このようにドルとユーロの成り立ちを理解しておけば、現在のドル円、ユーロ円の水準が過去に比べて円高なのか円安なのかを理解することができます。

また経済トークの中でドル円、ユーロ円の現在の数値のみだけでなく、過去の経緯も話すことができれば、お客さまから「よく勉強している」とお墨付きをいただくことも可能になってきます。

ぜひ、ドル円、ユーロ円の数値ともに、その背景も理解するようにしておいて下さい。

●まとめ

・ドル円、ユーロ円の現在の数値はチェックしておく
・ドルの転換点は1971年のニクソンショック、ユーロが市場に出回り始めたのは2002年ということは理解しておく
・ドル、ユーロの歴史的背景を理解すると経済トークに弾みがつく

なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方
掛越 直樹(かけごし・なおき)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ファイナンシャルプランナー、元メガバンク富裕層営業担当。年慶應義塾大学卒業後、大手都市銀行に入行。法人・国際業務を経て、2001年個人FP(ファイナンシャルプランニング)業務に従事。2002~2004年に6期連続で全国上位10%以内のリテールカンパニー長賞を受賞。現在、資産運用相談やビジネスパーソンの営業支援等について幅広くコンサルティング業務を行っている。著書に「営業マンはお金持ちをねらえ!」(日本経済新聞出版社)、「トップ0.1%の超富裕層だけが知っているお金の哲学」(KADOKAWA)、「お金持ちはなぜ、お金持ちになれたのか」(SBクリエイティブ)がある。

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