(本記事は、掛越直樹氏の著書『なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方』秀和システム、2017年6月21日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

前日の米国市場の動向を調べる意味は

なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方
(画像=Song_about_summer/Shutterstock.com)

「米国がくしゃみをすると日本が風邪を引く。」

経済やマーケットでこんなたとえ話があります。

これは米国にとっては大事ではなかったとしても、日本では時にそれが重大な影響を及ぼすというものです。

そのくらい当日の日本の株式市場や為替市場は前日の米国市場の影響を多く受けます。

つまり、前日の米国市場の動向を調べることは当日の日本のそれを予測することにつながってくるということになってきます。

米国市場と、それらの指数を確認する意味について説明しましょう。

まずは米国市場についてです。

代表的な米国の株価指数のうち、ニューヨークダウとS&P500については、ここでは割愛します。

その他の指数としてはナスダック総合指数があります。

これはナスダック市場というハイテク企業が数多く上場している世界最大級の新興市場で、そちらに上場している企業を、時価総額で加重平均にて算出した指数です。

1971年2月5日の基準値を100として、2017年4月28日現在で6047.60と実に46年余りで指数は約60倍強まで上昇したことになります。

他にチェックすべき米国市場の指数は、ニューヨーク市場でのドル円レートを中心とした外国為替市場。

金利の動向を知るための米国債券市場、原油価格の今後の動向を知るための原油先物市場、あとはシカゴで取引されている日経平均先物などをチェックしておくといいでしょう。

このうち、原油価格については、ここでは省略します。

まずは外国為替市場です。

為替相場は基本的に月~金まで24時間眠らない市場だと言っていいでしょう。

特に東京市場が終わったあとはロンドン、ニューヨークにバトンが引き継がれて一日が終了するといった流れになります。

ですから少なくとも、ニューヨーク市場でのドル円の為替レートをチェックしておいて、それが前日の東京市場と比べて、ニューヨークは円高ドル安なのかそれとも円安ドル高で推移したのかは確認しておいてください。

米国債券市場については特に米国10年国債の利回り水準を確認しておき、それが前日と比べ金利が上昇したのか、それとも下落したのかはチェックしておいたほうがいいでしょう。

最後はシカゴで取引されている日経平均先物です。

これはシカゴマーカンタイル取引所で取引されているもので、よく「シカゴ日経平均先物」と呼ばれています。

中でも日本時間の早朝に取引が終了する清算値については、次の日の日本株式市場の前場の最初の株価をつける取引で、日経平均がどのくらいの水準になるのかを考える際の参考になることが多くなってきます。

そのため、市場関係者もシカゴ日経平均先物の清算値については目を配らせ、その値を参考にしながら、当日の日経平均の動きを予測しています。

ちなみに、シカゴ日経平均については円建てとドル建てがありますが、みなさんは円建ての値をチェックしておくといいでしょう。

米国市場での主な指数を一通り説明しましたが、みなさんの中には忙しくて、こんなに多くの指数を見ていられないといった方もいらっしゃるかと思います。

その中でも重要な指数といえば何になるのでしょうか?

優先順位をつけるとすればシカゴ日経平均先物とニューヨーク市場終了時のドル円レートということになってきます。

理由は以下の2つです。

ひとつは、この2つは東京市場に値が引き継がれていくケースが多いことです。

もうひとつは、米国株式市場や米国債券市場での指数の値は、シカゴ日経平均先物とドル円レートに多くの影響を及ぼすからです。

たとえば、前日のニューヨーク株式市場が堅調に推移すれば、シカゴ日経平均先物の値が大幅に下がるということは少ないでしょうし、米国債券市場で米国債10年利回りが上昇すれば、日米の金利差拡大からドルが買われて、円が売られることからドル円レートが円安ドル高に向かいやすくなることが推測できます。

みなさんが、経済トークでの話題の中で、当日の東京市場での日経平均やドル円レートの見通しを聞かれたときには、前日のシカゴ日経平均(円建て)の清算値とニューヨーク市場終了時点でのドル円レートの値を頭に入れながら、話をするとより論理的な話題になることでしょう。

●まとめ

・当日の日本市場は前日の米国市場の影響を受けやすい
・米国市場については株式市場、為替市場、債券市場、原油先物市場、シカゴ日経平均先物の動きをチェックする
・中でも米国市場終了時のシカゴ日経平均先物とドル円レートの値は経済トークの話題にも取り入れることができ、優先的に頭の中に入れたおいたほうがいい

原油価格を調べる方法とは

次は原油価格についてです。

実はこれも重要です。

なぜなら原油価格はマーケットに大きな影響を及ぼすからです。

たとえば、原油価格が下がれば、エネルギー企業の収益減につながる懸念から、当該企業の株価が下がることとなります。

概してエネルギー企業は時価総額の高いところが多く、結果としてエネルギー企業の下落が相場全体を押し下げる要因につながってくるのです。

もし、みなさんが朝出勤前にニュースで米国株式市場が下落したことを伝えるとき、その要因が「エネルギー株を中心に値下がりしました」とのコメントがあれば、そのときは原油価格も値下がりしたケースが多くなってきています。

ここでは原油価格について説明していくことにします。

まずは原油価格を見る上での代表的な指標は何になるのでしょうか?

それは以下の3種類が挙げられます。

(1)WTI(ウエスト・テキサス・インターメディエイト)
(2)北海ブレント
(3)ドバイ原油

です。

それぞれ見ていきましょう。

まずはWTIからです。

WTIは米国のテキサス州西部とニューメキシコ州南東部で算出される低硫黄の軽質原油のことを指します。

この価格はニューヨークマーカンタイル取引所で取引が行われ、WTI原油先物価格として表示されています。またWTIは北米での原油価格の指標としても利用されています。

次は北海ブレントです。

北海ブレントは、英国とノルウェー領海に広がる北海油田で生産される軽質低硫黄の原油で、別名ロンドン原油とも呼ばれています。北海ブレントは、欧州の原油市場相場の指標とも言われており、インターコンチネンタル取引所で取引されています。

最後にドバイ原油です。

ドバイ原油はアラブ首長国連邦(UAE)のひとつドバイで算出される重質高硫黄の原油のことを指します。

定期契約に基づかない、スポット契約を取っているため、価格の指標性が高くなっています。そのためドバイの原油は、アジア市場での原油価格の指標とも言われています。

なお、取引については、英プラッツ社が発表した価格を基準として、東京商品取引所が中東産原油の先物価格を決定しています。

ちなみにドバイ原油は日経新聞1面の「WORLD MARKETS」にも指標のひとつとして掲載されています。

以上、3つの代表的な原油価格の指標を説明しましたが、この中で特に重要な指標は何でしょうか?

それは「WTI」です。

その理由としては流動性が高いことと取引量・市場参加者が多いことが挙げられます。

前日の米国市場ではシカゴ日経平均先物価格とドル円のレートをチェックした方がいいと述べましたが、加えてWTI原油先物価格についても押さえておいたほうがいいでしょう。

ちなみにWTI原油先物価格の変動要因としては、原油の需給が多いとされています。

たとえば、OPEC(石油輸出国機構)が協調減産に合意したなどといったニュースが新たに伝わってくれば、原油の供給減懸念から、WTI原油先物価格の上昇要因にもつながってきます。

以上、原油価格について一通り見てきましたが、中でも、WTI原油先物価格は、米国市場のみならず、世界経済を動かす指標のひとつといっても過言ではないでしょう。

●まとめ

・原油価格の動向はマーケットに重要な影響を及ぼす
・代表的な原油価格の指標としては、「WTI」、「北海ブレント」、「ドバイ原油」の3つがある
・中でもWTIは世界経済を動かす指標としても注目されている。

なぜかお金持ちを引きつける経済トークの磨き方
掛越 直樹(かけごし・なおき)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ファイナンシャルプランナー、元メガバンク富裕層営業担当。年慶應義塾大学卒業後、大手都市銀行に入行。法人・国際業務を経て、2001年個人FP(ファイナンシャルプランニング)業務に従事。2002~2004年に6期連続で全国上位10%以内のリテールカンパニー長賞を受賞。現在、資産運用相談やビジネスパーソンの営業支援等について幅広くコンサルティング業務を行っている。著書に「営業マンはお金持ちをねらえ!」(日本経済新聞出版社)、「トップ0.1%の超富裕層だけが知っているお金の哲学」(KADOKAWA)、「お金持ちはなぜ、お金持ちになれたのか」(SBクリエイティブ)がある。

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