(本記事は、渡部清二氏の著書『日経新聞マジ読み投資術』総合法令出版、2018年12月19日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
キーワード、データ、トレンドに注目する
日経新聞は注目するポイントが3つある。
ここでは、簡単に説明しよう。
(1)キーワード(言葉)に注目する→大きな変化・転換点に気づく
見出しや本文にある際立つキーワード(言葉)に注目する読み方だ。「最」や「初」「新」といったいくつかのキーワードに注目するだけで、現在進行形で起きている大きな変化を簡単に捉えることができる。
2018年は、異常な天候が続き、豪雨や地震など、天災によって、多くの人の生活が脅かされた。日経新聞でも観測史上最速の梅雨明けや、福井県で37年ぶりに積雪が130センチを超えたことが報じられた。
こうした天気という身近な変化からも、早い梅雨明けによってアパレルや食品メーカーなど、企業の業績に直結する動きを感じ取れる。
大きな転換点には、天気以外にもいろいろな種類がある。
(2)データ(数字)に注目する→マーケット規模を知る
次にマーケットデータに注目する。マーケットデータにはストックデータとフローデータという考え方がある。
ある一時点において貯蔵されている量がストックデータ、一定期間内に流れた量をフローデータと呼ぶ。
新聞記事では、フローデータに言及されることが多い。
しかし、できればストックデータに注目したい。これはストックデータを知って、記事で報じられている内容の規模感を知らないと、大きな転換点のインパクトを見誤りかねないからだ。
なお、ストックデータが新聞に出るのは年末年始が多い。
(3)トレンド(方向性)に注目する→景気の方向性を見る
先に見たマーケットデータを踏まえ、マーケットがどのように変化していくかを見よう。たとえ注目が集まっているテーマであっても、景気が悪ければ株はなかなか買われない。
最後に景気の方向性を見る必要がある。
先に説明した3つの視点で本質を知ることと組み合わせて、日経新聞をマジ読みすることで、ものの流れが見えてくる。流れが見えてくるから、頭の中でつながってくる。
こうしたことが銘柄ピックアップにもつながり、投資のテーマが見つかるのだ。
日経新聞の紙面構成
日経新聞の紙面構成と特徴を押さえておこう。
日ごろ日経新聞を欠かさず読んでいる人でも、あらためて紙面の特徴を知ることで、何かしらの発見があるだろう。
実際に私が読む順番は後ろからだが、ここでは一面から文化面に向かって説明をする。
●一面~その日の経済ニュースの全体感をつかむ~
一面は、その日押さえておきたい重要ニュースが凝縮されている。一面の記事は、中面に詳細が書かれていることも多く、「目次」の役割も果たしている。
一面トップ記事には必ず目を通そう。また、「春秋」は話のネタに使えることも多く、チェックしておきたい。
●「総合」面~さまざまなニュースの大きな流れをつかむ~
「ニュースを深く、やさしく」をコンセプトに、景気や政策、企業経営や社会情勢などをわかりやすく解説している。
事実関係だけでなく、ニュースの背景や今後の展望も詳しく掲載している。
特に、二面の右上にある「社説」は新聞社としての視点が表れる。「日本経済新聞社はこう考えます」という自社の考えだ。
また、三面左下の「きょうのことば」も逃さずに確認しよう。一面トップ記事に関連する用語解説だが、知らない言葉が紹介されていれば、ここで覚えたほうが良い。
●「政治」面~経済、社会のベースにある政治の動きを追う~
政府の政策や外交、国会の動向など政治関係の記事を掲載している。景気対策や雇用対策、社会保障を支えるための税制などはしっかりチェックしたい。
四面右下の「首相官邸」は首相の動向をリポートする記事。経済界の誰と会っているかを確認することで、国策が見える。
ちなみに、「首相官邸」をチェックする中で、ある時期私は、安倍首相がイマジカ・ロボットホールディングス(現・IMAGICA GROUP)の長瀬文男会長と頻繁に会っていたことに注目できた。
●「経済」面~経済を動かすお金の流れを読む~
政府の経済政策や財政、税制、通商政策といった政策関連のニュースが掲載される。
銀行・証券会社・保険会社などの経営動向や金融商品・サービスの最新情報、日本銀行の動きといった金融関連のニュースを報道している。
●「国際」面~グローバルな視点で経済を捉える~
各国の政治、外交の話題、経済政策や金融政策、個別企業の動きを報道している。「日本の経済とどう関係するのか」という視点で読む。特に、政権の交代、制度の変更などは確認する。
また、自動車販売台数や原油の生産量、金融の指標、GDPなど、注目したいグローバルな経済指標を押さえる。
●「アジアBiz」面~急成長するアジアのビジネスをクローズアップ~
「アジアビジネスの最前線がわかる」がコンセプト。日本企業だけでなく、現地の有力企業や欧米大手の動向をリポートしている。
●「企業」面~投資に直結する「ネタ」を見つける~
月曜日の「新興・中小企業」面を含め、個別企業の動きを報じている。業界や同業他社の戦略、伸びている新興企業や中小企業、新製品・新サービスの動向をリポートする。
●「企業・消費」面~消費の現場からトレンドをチェック~
生活者の関心が高い消費財や流通サービス、インターネット関連などのニュースをさまざまな視点で報じている。
●「投資情報」面~「企業の成績表」を詳報~
企業の経営成果を示す企業決算情報や、資金調達などの財務情報を掲載。
主な企業や業界の業績動向の詳細や新株発行、社債の公募情報、新規上場企業の紹介など投資に役立つ情報を伝えている。IPOは「新規公開株の横顔」をチェック。「会社人事」も確認したい。
決算は、左から売上高、経常利益、純利益、1株利益、1株配当(紙面での表記は売上高、経常益、利益、1株益、1株配)の順に並んでいるが、左から2列の売上高と経常利益を見る。
特に経常利益をザッと上から確認し、売り上げの伸びとの組み合わせを見ると良い。
例えば、利益が増えているにも関わらず、売り上げが減っている。
これが減収増益。これは株価の投資タイミングとしてはいいだろう。そういう銘柄は面白い。
●「マーケット総合」面~グローバルな金融の動きを見開きで読む~
国内外の株式、債券、外国為替、商品先物など、各マーケットの現状を一覧できる。右ページは主に前日の市場の動き、左ページはこれからの方向性を探る。
ネタ的、話題的に使えるのが「スクランブル」。また「大機小機」は業界の重鎮がペンネームで書くことがあり、使える情報がある。
●「マーケット商品」面~鋼材から食材まで、商品相場を俯瞰~
原油、穀物、鋼材、半導体などの基礎資材の商品市況を知る。卸売価格などの最新データやその背景をわかりやすく伝える。
●「証券」面~株式や投信の価格を一覧できる~
原則トータル5ページを使い、全上場銘柄と全ての追加型公募投信を網羅している。
ここで気づいてほしいのは、投信の本数だ。上場企業数にも負けない数がある。つまり、私から言わせれば投信を選ぶのは、株を選ぶより難しいのではないかということだ。
●「経済教室」面~識者が論じる重要な経済テーマを感じ取る~
60年余の歴史を誇る。その時々の経済問題や政策課題を専門家が執筆する。ここで執筆すると、大学によっては論文と見なされるようだ。
●「スポーツ」面~スポーツの裏にあるビジネスの動きを知る~
スポーツの結果、その裏にあるドラマや人々の思いまでしっかり読める。往年の名選手や評論家による珠玉のコラムは多くの固定ファンに支持される。日々のスポーツの結果以外にも、大きなスポーツイベントの経済的・社会的影響などの分析記事も多い。
●「社会」面~社会ニュースで時代の空気感をつかむ~
社会のニュースを幅広く報道する。社会面には、後々振り返ったときに、とてつもなく大きな転換点だったと気づく記事が多々掲載される。記事に派手さがない分、「わかっているからいいや」と見逃してしまわないようにしたい。
●「文化」面~心の豊かさを養うことも、経済人として大事~
伝統文化や芸能、芸術の分野で活躍する人々が登場し、自らの体験に基づいた文明批評や研究成果、体験談などを披露する。著名人の半生を描く人気の連載「私の履歴書」はビジネスの会話で必須。