不動産投資で運用が上手くいき始めた際、その利益をできる限り手元に残すためには税金と戦わなければなりません。税金については、家賃収入から得られるインカムゲインにかかる税金だけではなく、売却時のキャピタルゲインに係る税金についても考える必要があります。

不動産売却時の税金は、その不動産の所有者が個人なのか法人なのかで税率が異なります。

個人と法人の税率の違いを活用して節税をすることは時に有効ですし、今は活用しないとしても知っておいて損はありません。今回は、不動産売却時に係る税金を中心に、個人と法人の税率の違いについてお伝えしたいと思います。

個人所有不動産の売却における税率

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(画像=Jirsak/Shutterstock.com)

まずは、個人名義で所有している不動産を売却した場合の税率について確認します。

個人所有の不動産を売却した場合は、保有していた期間によって税率が異なります。売却する年の1月1日時点で購入から5年以内の場合は短期譲渡所得となり、譲渡所得に対して約39.63%の税金が課されます(住民税9%を含む)。

売却する年の1月1日時点で購入から5年超の場合は長期譲渡所得となり、譲渡所得に対して約20.315%の税金が課されます(住民税5%含む)。

ただし、これは減価償却後の不動産簿価よりも高い価格で売却できた場合に限ります。つまり、損失となる場合は短期譲渡であっても長期譲渡であっても税金はかかりません。

また、不動産売却に係る譲渡所得は分離課税となるため、サラリーマンとしての所得との合算は認められず、損失が出た場合であっても所得税の還付請求ができないことも注意が必要です。

法人所有不動産の売却における税率

次に、法人所有不動産の売却における税率を見てみましょう。

法人で所有している不動産を売却する場合は、個人所有のケースとは異なり、物件の保有期間によって税率が変わることはありません。また、個人のような分離課税ではなく、法人税の対象となります。

よって、短期売買でキャピタルゲインを狙う不動産投資家は、法人で売買を行うケースがほとんどです。

昨今の不動産投資では、家賃収入のインカムゲインをメインにした投資家が多いので、売却時の利益を目的としている人は少ないと思います。しかし、オンボロ物件を購入して、再生してから高値で売り抜くという手法で利益を狙う人もいます。そのような場合は、あえて法人で売買することを検討してもいいでしょう。

ただし、法人を設立すると法人の維持コストがかかることは留意しておく必要があります。例えば、合同会社であっても会社設立に15万円程度かかりますし、仮に利益がなかったとしても、最低7万円の法人住民税を納める必要があります。

その他にも、法人の住所移転や名称変更、定款の内容変更など、登記内容を変更する場合はその都度お金がかかるので、法人を設立して不動産投資を行う場合は、そのコストを越えるメリットがないと意味がありません。

所有期間と法人維持コストのバランスを見極める

上記のように個人所有の不動産と法人所有の不動産を売却した場合では、税率が異なります。仮に1,000万円の譲渡所得が発生したとすると、個人の場合、所有期間で税率に約20%の差があるため納税額が約200万円も変わることとなり、決して軽視できません。

不動産購入後の保有期間について、5年超の保有を考えている場合は個人所有でも問題ありませんが、5年超も保有する場合に発生する値下がりリスクを避けるため、短期間で売り抜けるような出口戦略を考えている場合は、個人所有ではなく法人所有のほうが得になるケースもあります。

ただし、コストは個人よりも法人のほうが多くかかります。これは間違いありません。

物件購入後の所有期間と法人の維持コストを考えて、「個人所有のほうが得か?」「法人所有のほうが得か?」を総合的に検討した上で、不動産投資を進めていくことをおすすめします。(提供:YANUSY

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