要旨
- 中国経済は昨年来の減速に歯止めが掛かった。19年1-3月期の成長率は実質で前年比6.4%増と前四半期(同6.4%増)と同率に留まり、1年ぶりに横ばいとなった。但し、4月の景気指標を見ると、工業生産が前年比5.4%増と3月の同8.5%増を3.1ポイントも下回るなど、3月に上ぶれした反動で軒並み低下、「債務圧縮(デレバレッジ)」と「米中対立」という景気悪化の根本原因も残る。一方、消費者物価は2%前後で推移、18年の抑制目標「3%前後」を下回った。
- 個人消費の代表的な指標である小売売上高の動きを見ると、19年1-4月期は前年比8.0%増と18年通期の同9.0%増を1ポイント下回った。雇用指標は今のところ堅調で、消費者信頼感指数も高水準、自動車販売も19年下半期にはボトムアウトすると予想されるため、個人消費が失速する恐れは小さいものの、米中対立再燃に伴う株価下落や雇用への影響には注意(下左図)。
- 投資の代表的な指標である固定資産投資の動きを見ると、19年1-4月期は前年比6.1%増と、18年通期の同5.9%増を小幅に上回った。製造業の投資は減速したが、不動産開発投資やインフラ投資が持ち直した。今後は、米中対立が再燃したため、製造業の投資はさらに落ち込む恐れがあるものの、景気対策でインフラ投資が加速し、全体では緩やかな減速に留まる(下左図)。
- 中国経済の第3の柱である輸出動向を見ると、19年1-4月期は前年比0.2%増と、18年通期の同9.9%増を大幅に下回った。先行指標となる新規輸出受注を見ると、4月にはやや持ち直したものの、境界線(50%)を11ヵ月連続で割り込んでおり、輸出の回復は期待できない(下左図)。
- 19年の成長率は前年比6.3%増、20年は同6.2%増と、6%台前半での低迷を予想する。米中対立がさらに激化して景気が失速しそうになれば、中国政府は景気対策を上乗せするため、成長率が6%を割り込む可能性は低い一方、米中対立の緩和で景気が上向けば、中国政府は再び「債務圧縮(デレバレッジ)」に動くため、成長率が7%に近付くこともないと見ている(下右図)。