「孫の教育資金をできるだけサポートしたい」という人は多いかもしれません。しかし、援助額の相場やどんなタイミングで援助しているかなどの他人のサポート傾向は意外とわからないものです。そこで、今回は2,000人規模のアンケートをもとに、「みんなの教育資金の援助」を探ります。
教育資金の用途は学用品の購入や入学費用が多い
一般社団法人 信託協会の調査(※)によると、孫がいる50~80歳代の男女に聞いた「教育資金に対する援助の用途」で一番多かった回答は「学用品の購入費用」で、63.2%を占めています。また、2位は「入学金」が39.1%で続き、5位「授業料」(21.2%)、6位「学習塾の月謝等」(19.1%)です。習い事に関する費用も高い割合となっており、3位「習い事に必要な物品の購入費用」(27.3%)、4位「習い事の月謝等」(24.4%)でした。
※「信託商品受容性把握のための基礎調査」(2018年8月に実施)
そもそも教育資金の援助とは?110万円以下は原則非課税
教育資金の援助は、税法上は「贈与」にあたりますが、暦年(1月1日~12月31日までの1年間)において110万円(基礎控除額)以下の贈与には税金がかからない仕組みになっています。したがって300万円を教育資金として孫に贈りたい場合は、一度に贈らずに100万円ずつ3年間に分けて贈与すれば、非課税で援助することが可能です。
ただし、毎年同じ時期に同じ金額を長期間贈与し続けると、「連年贈与」とみなされ、税務署から指摘される可能性がある点に留意しましょう。
幼児~小学生の頃=援助割合高、高騰教育=援助割合低の傾向
次に資金援助のタイミングと金額を見てみましょう。まずタイミングですが、高額な入学金がかかる「大学に入学した頃」は23.0%と意外に割合が低く、一番多いのは「小学校に入学した頃」で61.2%という結果でした。これは援助の用途トップの「学用品の購入費用」とほぼリンクしています。つまり祖父母は孫が大学進学を決めてから援助するわけではないのです。
小学校の早い時期から学用品の購入費用という形で援助を始めていることがわかります。その後は「中学に入学した頃」(39.7%)、「高校に入学した頃」(26.8%)と、孫の学年が進むに連れて比率が減少傾向です。気の早い祖父母であれば、「孫が生まれた頃」(35.2%)や「保育園や幼稚園に入園した頃」(49.4%)から援助している例もあり割合としては高くなっています。
これらを踏まえると一般的な教育資金援助では、「幼児~小学生の頃=援助割合が多い」「高等教育=援助割合が少ない」傾向です。一方、援助額を見ると最も多い金額帯は、「10万~50万円未満」の29.3%で、2位の「10万円未満」(24.8%)と合わせ、半数以上が50万円未満という結果になっています。500万円以上の高額な援助も6.1%ありますが、教育資金贈与が中心です。
富裕層は「教育資金贈与信託」の利用も視野に入れるべき
2018年6月時点で「教育資金贈与信託」の利用率は11.7%と少ないものの、相続税対策を検討しているのであればうまく活用しておきたいものです。「教育資金贈与信託」とは、子どもや孫などの教育資金として祖父母が信託銀行などに金銭を信託した場合、1,500万円までの贈与に関して非課税になるという信託商品です。塾や習い事など、学校以外でかかる費用は500万円までとなります。
しかし贈与額の基礎控除110万円を超える金額を贈りたいなら、検討する価値がある商品といえます。税務申告も受託者(信託銀行など)が行ってくれるので便利です。
教育資金の援助は祖父母ができる精一杯のことをすればよい
今回のアンケート結果から見えてくるのは、「かわいい孫のために教育資金を援助したいが、無理はできない」という祖父母のリアルな葛藤です。アンケートの回答結果は、「祖父母が孫の高校や大学進学時に高額な入学金などを援助する人が多いのでは?」という贈与のイメージを覆すものでした。現状は、文房具などの学用品購入といった細やかな援助など、祖父母ができる精一杯のことをする形が多い傾向です。
調査結果は手が届く範囲で出来る援助を行っている人が多いことを物語っています。しかし「教育資金贈与信託」は便利な制度のため相続税対策などを検討するような資産を保有している場合は、制度をしっかりと利用して節税対策を進めることが大切です。(提供:Wealth Lounge)
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