(本記事は、西田 悠二の著書『「億」稼ぐ人の深層思考法』秀和システム2019年9月18日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
貧しい人を助けたいなら、自分が豊かであることが絶対条件
お金についての議論をしていると、「お金はいる」「お金は要らない」という極端な二元論に陥ってしまうことがよくあると思います。
また、そのなかで、「自分はお金は要らない」「それよりも人を救いたい」という主張もよく耳にします。そのように考える精神性や貢献欲求はとても素晴らしいのですが、あえてこのような意見に警鐘を鳴らしておきたいと思います。
私の経験上、お金がない状態で人を救おうとすると、最終的に自分と他人に迷惑をかける可能性が非常に高くなります。自分も含め、そのような人を多く見てきました。
図の左の人をみてください。溺れている人を助けるには、自分が溺れていてはいけません。船に乗っていない状態で助けようとすると、助けられないばかりか自分も溺れてしまい、最終的には他人に助けを求めることとなります。
本来であれば、図の右の人のように頑丈な船と救助のための浮き輪、さらには保護したあとに提供する食料や飲料など、救助には必要最低限の装備が必要です。そうした準備もなしに人を助けようとすることは、慎重さに欠け非常に危険なのです。
実は私も昔、同じような経験をしたことがあります。
脱サラをして、シンガソングライターをしていた時代、自らアーティストとして活動しながら、同時にアーティストの支援団体を立ち上げました。生活が苦しいアーティストたちを救うべく仲間同士で団結し、イベントを開催したり、PRやプロデュース活動を実施したり、また今後の音楽業界についてさまざまな実現したいアイデアを出し合い行動しました。そして、数ヶ月もすると、数百人を抱える大きな規模の組織にまで成長したのです。
ただし、成功は長くは続きませんでした。すべての活動を突然終了することになります。理由は資金難です。当時は収入につながるような活動モデルではなく、私たち自身の経済的な理由から、今後活動は長く続けられないと判断しました。考えたすべてのアイデアは形にできず、途中ですべてを断念せざるを得ない状況となったのです。
そのときに実感したのは、いくら社会貢献として活動していても、お金がなければ継続できず、人に迷惑をかけてしまうということです。お金が幸せ行きのスペシャルチケットなのだとしたら、そのチケットなしに、より多くの人を幸せに導くことはできないと気付きました。
自分が溺れているのなら、溺れている誰かを助けることはできません。まずは、自分が陸にあがること。そして、溺れている人を助けられる環境を構築するのが先決です。貢献欲求は本当に素晴らしいことですが、本気で多くの人を幸せに導くためには、まずは自分が経済的にも豊かであることが極めて重要なのです。