(本記事は、谷原 誠の著書『「いい質問」が人を動かす』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

人に好かれるための6つの法則

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(画像=wk1003mike/Shutterstock.com)

心理学者のロバート・チャルディーニは、人から好意を持たれるための法則として、①外見の魅力、②類似性、③賞賛、④単純接触効果、⑤協同、⑥連合といったものをあげています。

順番に説明します。

1 外見の魅力

心理学の研究によると、外見の魅力がある人は、才能や知性、性格の良さなどの望ましい特徴を持っているとみなされる傾向にあります。実際には違っていてもです。また、刑事事件での男性被告人の身体的魅力が高い者は、魅力的でない者の半数しか刑務所に入れられていなかったという調査結果があるそうです。

したがって、良い質問者になるためには、外見の魅力を備える必要があります。もともとの顔の作りは変えようもありませんが、清潔な格好をし、姿勢を良くし、常に笑顔を絶やさず、さわやかに振る舞うことくらいはできそうです。これでも相当の効果があるでしょう。

2 類似性

人は、自分と似ている人を好きになる、という法則を「類似性の法則」と言います。自分と郷里が同じ人、自分と大学が同じ人、自分と趣味が同じ人、自分と同じ野球チームのファンなどに親近感を抱いたことはありませんか?それが「類似性の法則」です。

この類似性の法則を使うには、相手に色々と質問してみることです。「ご出身はどちらですか?」「お子さんはおいくつですか?」「スポーツは何がお好きですか?」など、相手に興味を持って質問し、自分と共通項が出てきたら、「私もそうなんです!同じですね」と類似性をアピールしましょう。そうすると、類似性の法則が働き出し、相手はあなたに好意を抱くようになるでしょう。

3 賞賛

人は、賞賛されると、自己評価が上がり、自尊心が満足します。したがって、自分を賞賛してくれる人を求め、その人に好意を抱きます。会社でお世辞やごますりが有効な出世の手段であることも、この「賞賛の法則」の有効性を証明しています。

こんな実験があります。実験に参加した男性は、次のようにグループ分けをした他人から、自分についての評価を受けます。

Aグループ 望ましい評価だけを受ける。
Bグループ 望ましくない評価だけを受ける。
Cグループ 望ましい評価と望ましくない評価の両方を受ける。

この結果、実験に参加した男性から最も好まれたのは、Aグループの望ましい評価、つまり賞賛だけを受けたグループだったのです。

この賞賛の法則を使用するには、「良いことを前提として、それに関する誤導質問をする」という方法があります。たとえば、女性のバッグをほめるなら、「そのバッグ、すごくセンスが良いけど、どこで買ったの?」というように、相手のセンスが良いことを前提に、「バッグをどこで買ったのか」を質問します。そうすると、直接にはバッグを買った場所を質問していますが、質問された方は「センスが良い」という部分で自己評価がアップすることになります。

4 単純接触効果

人は、よく知っているものに対してより好意を抱きます。この性質を利用して、「多数回会う」という方法を使って相手の好意を獲得する方法があります。内容はともかくとにかく多く会ってよく知っている関係になればよいので、「単純接触効果」と言います。

選挙の前に選挙カーが政策ではなく、名前だけを連呼して名前の接触回数を増やそうとするのはこの効果をねらったものであり、広告看板などで商品名ではなく会社名だけを表示して名前を周知させようとしているのもそうです。

これは質問ではありませんが、相手の好意を獲得して良い質問者になるために憶えておいて損はありません。遠くの恋人より近くの他人を好きになってしまうのも単純接触効果のなせる業です。

5 協同

人は、誰かと協同するとき、その相手に好意を抱きます。たとえば、国内が混乱しているときでも敵国が現れたとたん、仲直りしてしまい、一致団結して敵国に立ち向かいます。この場合、同国人vs.敵国人という構図ができます。刑事事件の取り調べの際に、横暴で怒鳴り散らす刑事に対し、優しく被疑者を守るような態度をして被疑者の自白をもぎとる方法もそうです。この場合「被疑者と優しい刑事」vs.「コワイ刑事」という構図ができます。

この協同の法則を利用して質問するには、自分たちが仲間になり、誰かを対立する人に仕立て上げる構図を作ればよいことになります。たとえば、あなたが車のセールスマンだったとすると、最後の値段交渉の際、次のように質問することができます。「ようやくここまで来ましたね。上司にもう少し値引きしてもらえるように私が交渉してきます。仮にあと10万円値引きを勝ち取れたら、ご購入いただけますか?」この質問により、お客様は、あなたが自分のために上司と交渉してくれる仲間だという気持ちになり、あなたに好意を抱くでしょう。

6 連合

ある事が起きたときに、その外的要因とその相手とが結びつけられて特定の感情を持ってしまう法則を「連合の法則」といいます。たとえば、よいニュースを持ってくる人には好意を抱き、悪いニュースを持ってくる人には悪意を抱くが如くです。テレビのCMで、人気アイドルや俳優に商品を使わせて、商品に好印象を持たせようとするのは、この法則を利用したものです。車雑誌の表紙に美人モデルが車やバイクと一緒に写っているのも、この法則を利用したものです。商談などで相手を説得するときに食事をしながら行う方法も、「おいしい食事を食べて満腹になる」という幸福感と話の内容を結びつけようという試みです。シェイクスピアはこの法則について、「悪い知らせは、その話し手に伝染する」という趣旨のことを言っています。

この連合を使って相手に好意を抱かせるには、相手に対して、「今までに一番幸せだった思い出は何ですか?」など、幸せだった思い出、ウキウキすること、好きなこと、を思い出してもらう質問をすることです。反対に、相手に嫌な思い出、悲しい思い出などを聞くと、その思い出とあなたが結びつけられて悪い連合が生じてしまいます。

したがって、なるべくポジティブでよいイメージを抱かせる質問をするように気を付けましょう。

実は、もっと単純に相手に好かれる方法があったら、知りたいと思いませんか?

「いい質問」が人を動かす
谷原 誠(たにはら・まこと)
弁護士。1968年愛知県生まれ。明治大学法学部卒業。91年司法試験に合格。企業法務、事業再生、交通事故、不動産問題などの案件・事件を、鍛え上げた質問力・交渉力・議論力などを武器に解決に導いている。現在、みらい総合法律事務所を共同で経営

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