(本記事は、谷原 誠の著書『「いい質問」が人を動かす』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)
金持ち投資家と破産寸前の男〜会社の同期2人は何が違ったのか
2人の男が同窓会で顔を合わせました。2人とも大学を卒業したときに同じ会社に入社しました。しかし、現在、1人は悠々自適の生活をする投資家、1人は破産寸前、2人の男達はどこが違っていたのでしょうか。
2人の男が勤めた会社は、2人が就職して5年後くらいから、業績が悪化し、10年後には、給料が全く上がらない状態になりました。破産寸前の男は、自分に質問しました。「なぜ俺はこんな会社に就職したのか?なぜこんなに運が悪いのか?」。そして、近くの居酒屋で愚痴をこぼしました。
他方、投資家の男も、自分に質問しました。
「このままではこの会社はダメになる。これまでの経験を生かしてビジネスが始められないだろうか?今後需要があるのは、どんな分野だろうか?」。そして、投資家の男は独立し、事業を興しました。
40歳になると、破産寸前の男は、関連会社に出向させられました。事実上の左遷です。
男は自分に質問しました。「なぜ俺だけがこんな目に遭うのか。神はいないのか?」。そして、近くの居酒屋で愚痴をこぼしました。
投資家の男は、40歳になると、ビジネスも軌道に乗ってきました。男は自分に質問しました。
「このままずっと働き続けるのは限界がある。家族との時間も大切だ。自分が働かずに収入を得るにはどういう方法があるだろうか?」
そして、投資家の男は、ビジネスを他人に売却し、数億円を手に入れました。そして、そのお金を元手に、不動産投資を始めました。
そして、50歳になり、同窓会で顔を合わせたのです。1人は悠々自適な不動産投資家、1人は会社をリストラされた破産寸前の男です。この2人の違い、それは、自分に対する質問でした。破産寸前の男は、いつも自分の置かれた状況を他人のせいにして、愚痴ばかりこぼして何も行動しようとしませんでした。投資家の男は、常に自分が向上すべく自問しました。「どうすればもっと良くなるか?」という質問をし続け、その答えを得て行動したのです。
質問は他人にばかりするものではなく、自分に対しても行うものです。考えるというのは、自分に質問するということです。自分に良い質問をすれば、良い方向に思考が回転し、悪い質問をすれば悪い方向に思考が回転します。「なぜ俺はダメなんだ?」と自分に問いかけて、良い答えが生まれるはずがありません。「自分が他人より優れているところはどこか?どうすれば自分の長所を伸ばせるか?」と質問するから良い答えが生まれるのです。
その意味で、自分に質問をするということは、自分をコントロールするということでもあります。人生で成功するためには自己コントロールが不可欠ですが、自己コントロールをするための一番の近道が自分に良い質問をすることです。
もう一つ、例を挙げましょう。
『こころのチキンスープ』に次のような話が載っています。
ある時、カナダのバリーという町が竜巻に襲われ、数十人が亡くなり、数百万ドルの被害が出たそうです。その時、テレメディアという放送会社のボブ・テンプルトンがその町を通りかかり、被害のひどさを目の当たりにし、一つの計画を思いつきました。それは、バリーの被災者を救済するために、3日以内に準備をし、3時間以内に300万ドルを集める、という計画でした。そして、テンプルトンは、その計画を重役会議で提案しました。
すると、1人が言いました。「本気か?そんなことできるわけないだろう?」
テンプルトンはいいました。「僕は、できるとか、しなければならないとか、そういうことは言っていない。ただ、皆がやってみたいかどうかを聞いているんだ」「もちろん、やってみたいさ」と皆が言いました。
すると、テンプルトンは、黒板にアルファベットのTを書き、その右側に「なぜできないか?」、左側に「どうしたらできるか?」と書き込むと、さらに右側の「なぜできないか?」という文字に大きく×印をつけました。
そしてテンプルトンは言いました。「僕は、『なぜできないか?』なんてことを議論する気はないんだ。時間の浪費にすぎないからね。『どうしたらできるか?』だけを議論したいんだ」。その結果、3日以内である翌週の火曜日にはラジオマラソンが始まりました。カナダ全域の50のラジオ放送局が協力し、著名司会者の協力も得て、3時間で300万円を集めてしまいました。
私たちも、何かを始めるとき、「できるはずがない。なぜかと言うと〜」と言って、できない理由ばかりを探していないでしょうか。それよりも「どうすればできるか?」を考えるべきです。質問の仕方によって、成功もし、失敗もするのだということを憶えておくべきです。
ぜひ自分に対する質問力を磨いていただきたいと思います。