(本記事は、本田直之・松尾大の著書『人生を変えるサウナ術』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)
温泉大国・ドイツのサウナ
フィンランドのほかにサウナ大国といえば、ドイツがその筆頭にあがるだろう。
そもそもドイツは、サウナ大国というより温泉大国と言われている。火山国ではないのだがやたらと温泉が多く、浴場を意味する「Bad」がついた地名も多い。
国指定の温泉保養地になっている源泉は約260もあり、バーデン・バーデンのような有名な温泉地も各地にある。
ドイツでは、この温泉の発展とともに、サウナも一緒に発展してきたのである。
まず、ドイツのサウナを特徴づけるのは、日本でも人気のサービスになっているアウフグースという文化だ。アウフグースはそもそも蒸気を意味するロウリュをドイツ語で表現した言葉であるが、一般的にはサウナ室内でスタッフがロウリュを行って蒸気を発生させ、客に向かってタオルであおぐサービスのことを指す。ドイツでは、フィンランドのように自分でロウリュを行わず、スタッフがロウリュするのである。
日本でもそうだが、ドイツでのアウフグースはショーのような様相を呈していて、アウフグース中にはかけ声が、終った後には拍手が起きる。
アウフグースの世界選手権では、そのスキルやテクニックはもちろん、ストーリー性やエンターテインメント性によって競われる。そこに言葉は存在しないが、熱波とともにそのストーリーを身体に受ければ、汗と一緒に涙も流れるという。
また、ドイツのサウナのフィンランドと少し異なるところは、「汗を床に垂らしてはいけない」ということだ。
タオルを敷いて汗がしたたり落ちないようにしなければならず、垂れると怒られることもある。ドイツでサウナに行くときには注意しよう。
驚きの混浴文化
アウフグースのほかにドイツのサウナを特徴づけるのは、混浴の文化だ。
更衣室の時点から男女共用で、浴室内も共用、水着はもちろん、バスタオルを巻いて身体を隠すのも禁止で、完全裸な状態での男女混浴というのだから驚きだ。
ドイツのおすすめスパで、Vabali Spa Berlin というところがあるのだが、こちらももちろん男女混浴。18ものサウナがある巨大な施設のため、何百人もの裸の男女がいて、さながらそこはエデンの園のような空間だ。
客の中には子どももお年寄りもいて、いやらしい感じは全くない。裸が文化となっており、混浴だからといって性的な話をしたり、そういう目で異性を見てはいけない、というのがマナーとしてきちんと守られているのだ。
日本人からするとちょっと驚きの文化ではあるが、ドイツに行ったらぜひこの混浴サウナを体験してみてほしい。
サウナグッズが充実しているエストニア
フィンランドから船で2時間ほどで行けるエストニアという国も、2014年にヴォローマ地区のスモークサウナがユネスコの無形文化遺産へ登録された、知られざるサウナ大国だ。この国でも、家庭へのサウナの普及率がかなり高い。みんな家でサウナに入れてしまうので、エストニアの公衆サウナ施設はもう数えられるほどしか残っていないのだが、文化としてはしっかり定着している。
そんなエストニアのサウナは、施設としてはフィンランドのものとあまり変わらないのだが、面白いのは9割以上の人がサウナハットをかぶっていることだ。
日本でもサウナーアイテムとして定番になりつつあるサウナハットとは、サウナ室内でかぶる帽子のことだ。これをかぶることによって、特に熱さを感じる鼻や耳などの顔まわりの体感温度を5°Cくらい下げることができ、サウナに楽に入れるようになる。
しかしながら、実はフィンランドでは、サウナハットをかぶっている人はほとんど見かけない。タンペレでフィンランド最古のサウナに行ったときも、サウナハットをかぶっていたのは、「タイムズスパ・レスタ」と書かれたサウナハットをかぶった、日本人ただひとりだけだった。
なぜフィンランドではみんなサウナハットをかぶらないのか、理由はわからないが、そういうわけでみんながサウナハットをかぶっているエストニアのサウナの光景は、なかなか珍しく面白い。
また、エストニアでは同じく9割以上の人がマイ・ヴィヒタを持っている。前日使ったヴィヒタはビニール袋に入れて持って帰り、葉が落ちて古くなったら新しいものを買う。そして、各自自分のヴィヒタでバシバシと身体を叩いている。
サウナハットやヴィヒタといったサウナグッズに興味のある人は、一度エストニアに行ってみると良いかもしれない。
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