(本記事は、本田直之・松尾大の著書『人生を変えるサウナ術』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)

今、サウナブームが起きている!?

サウナ
(画像=Kichigin/Shutterstock)

今、日本にはサウナブームが起きている。

サウナの話をすると「実は僕もサウナ好きで、よく入りに行っているんです!」という若い人も出てくるし、サウナー(サウナ愛好者)を公言する著名人も、ずいぶん増えてきたように思う。最近知ったところでは、ワールドカップで目覚ましい成績を残したラグビー日本代表のキャプテン、リーチ・マイケル氏。自宅にサウナがあり、心身のコンディションを万全の状態に保つために、サウナを利用しているのだという。

僕らの周りの仲間の中では、もはやサウナはある種の教養、「当たり前」のものになりつつあって、「ととのう」「羽衣」「サフレ」といったサウナ用語や「サウナ→水風呂→外気浴」という入り方のサイクルが一般化し、タナカカツキ氏の『サ道』(PARCO出版)によってそれらがマンガで可視化され、芸能界屈指のサウナー、オリエンタルラジオ・藤森慎吾氏のサウナ専門番組「オリラジ藤森のThe SAUNNER〜サウナdeアツアツ〜」で紹介されたりもした。

2018年11月11日には、松尾が代表を務めるTTNE主催の日本のベストサウナ「サウナシュラン」が発表、2019年に入ってからは、『GOETHE(ゲーテ)』(幻冬舎)のウェブサイトで松尾の連載「ととのえ親方のサウナ道」が始まり、7月に『サ道』のテレビドラマ化(テレビ東京)、8月にはこれまたサウナを題材にしたドラマ『サウナーマン〜汗か涙かわからない〜』(ABCテレビ)の放送開始、9月にはサウナのドキュメンタリー映画『サウナのあるところ』が公開され、NHKなどのニュース番組でもサウナが取り上げられるなどのメディア展開が続き、いよいよこのサウナブームも確固たるものになった。

いずれにもサウナ発祥の地・フィンランド由来のサウナ文化や効果的な入浴方法、実在するサウナ施設などが登場し、映像によってその魅力がリアルに伝えられている。

サウナ施設(サウナ専門の施設に加え、町の銭湯やスーパー銭湯など)は、探してみると意外とたくさん身近にあるもので、ドラマや映画を観て「サウナ良いかも......!」と思ったら、すぐに入りに行くこともできる。良い形で、今のブームの流れを牽引してくれている。

メディア化以前にどのようにサウナのブームが広まってきたのかといえば、やはり口コミの積み重ねによるものが大きいように思う。

そもそも、日本人の中に「サウナに全く入ったことがない」という人はほとんどいなかった。温泉や健康ランドにサウナがあれば、誰でも一度は入ってみた経験があるだろう。

にもかかわらず、サウナに対して苦手意識を持つ人たちは非常に多い。今でこそサウナブームのおかげもあって「サウナが好き」という人も増えたが、それでもまだ7割ほどの人たちが「サウナを苦手」と感じているという。

「熱い」「つらい」「苦しい」というサウナのイメージ。しかし、一部の人たちは本当のサウナとその力について、直感的に気づいていた。そして、近年正しいサウナ文化が様々な形で言語化・可視化されたことによって、それらを他者に伝えることが可能になり、伝聞を通して徐々に広まってきたのである(ちなみに松尾も〝ととのえ親方〞として数々の経営者をサウナーに変え〝ととのい〞に導いてきた、まさにその張本人である)。

最近変わってきたサウナのイメージ

サウナ
(画像=Robert Nyholm/Shutterstock.com)

これまでのサウナには〝汗だくな昭和のおじさん〞という、なんだかイケてないイメージがあった。今ではちょっと想像がつかないかもしれないが、昔はサウナ室内でタバコを吸ったり、ヒゲを剃ったりするような人もいたりした。

だから僕らにも「サウナは好きだけど、サウナおやじだと思われたらいやだなぁ」とサウナ施設には行かず、ジムのサウナにしか行っていなかった時期もあったし、わざわざ「サウナが好きです」と周囲には公言せず、個人的にサウナを楽しんでいた。

そもそも、サウナに入って気持ちいいのは、僕らにとっては当たり前のことすぎて周囲に話すまでもないことだった。「耳かきすると気持ちいいよね」と上司や部下、同僚はもちろん、家族や友人と確かめ合うことがないのと理由は同じだ。

そこには「美味しい」や「楽しい」ではなく「気持ちいい」という感覚を共有し合うことへの照れくささもあったのかもしれないし、「一緒にサウナで気持ちよくなろうよ」と友人を誘うのは、やはりなかなか勇気がいるものであった。

しかし、こうしたサウナのイメージも、ここ数年で大きく変わってきた。

「サウナ→水風呂→外気浴」という、サウナをより気持ちよく楽しむための一連の流れが明確になり、僕らをはじめとする一部のサウナーが「もっと気持ちいいサウナの入り方」を他人に教え始めたのだ。主に流行に敏感なIT企業の経営者やクリエイターの人々の間で「みんなで一緒に行こうよ」「入り方ちょっと教えてくれない?」というサウナに人を連れて行く流れが広がり、加速した。

ちなみにこうした流れは、日本でヨガやトライアスロンが流行したときに似ているなと感じる。かつてオウム真理教がヨガ教室と偽って信者を勧誘していた影響で強烈な負のイメージのあったヨガに、2000年頃にセレブが颯爽とヨガマットを持って歩く海外のスタイリッシュなイメージが持ち込まれ、ライフスタイルとして急速に一般化した。

トライアスロンも〝なんだか「鉄人」のようなストイックな人たちがやっている、"マイナーな競技"という印象のあったものが、僕らの周りの経営者を中心に流行り出し、一気にブームへと波及した。

サウナもヨガもトライアスロンも、本来は良いはずのものがイメージの影響によって抑圧され、マイナーなものであり続けてきた。だからこそ、その負のイメージが払拭されたとき、反動的なブームのインパクトも大きいのである。

サウナは新たなカルチャーへ

サウナ,カルチャー
(画像=Billion Photos/Shutterstock)

最近増えてきたサウナ関連のイベントも、ブーム牽引の大きな要因となっているだろう。サウナがイベント化することで「みんなでサウナに行く」「友達を誘ってサウナに行く」といったことのハードルはだいぶ下がった。

「キャンプ×サウナ」「音楽×サウナ」「グルメ×サウナ」といった、サウナと他の要素のコラボレーションにより、サウナの楽しみ方も一気に拡大した。

2018年、僕らがTRUNK(HOTEL)のテラススイートにテントサウナを導入して開催したサウナ・パーティーでは、人気シェフの料理やDJのノリの良い音楽とサウナとのコラボを実現し、「おっさんの文化からカルチャーへ」を象徴する、日本サウナ史における歴史的なイベントとなった。YouTubeで「TRUNK HOTEL SAUNA PARTY」と検索してもらえれば、きっとその雰囲気を感じて頂けるだろう。

また、下北沢の高架下で開催した「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」は、都心の真ん中でアウトドアサウナを楽しめる流行最先端のイベントとして、好評を博した。このイベントの最終日にも人気シェフの料理とワインを用意した会を開催し、「サウナとサウナ飯を楽しむ」というサウナの新たな方向性を提供した。

9月には、主催団体として運営に参加した日本最大級のサウナイベント・SAUNA FES JAPAN 2019が長野県フィンランドヴィレッジにて開催され、全国のサウナーが一堂に会した。今後もますます、こうしたサウナ関連のイベントは増えていくだろう。

また、2017年に松尾が〝サウナ師匠〞こと秋山大輔とふたりで立ち上げたサウナーによるサウナーのためのサウナー専門ブランド「TTNE」では、サウナーのためのアパレル商品を展開し、文字通りの「サウナのファッション化」に貢献している。一度ホームページを覗いて頂ければ、今の日本のサウナシーンにいかに大きなイメージ変革が起きているか(あるいは僕らが起こそうとしているか)きっとおわかり頂けるだろう。

人生を変えるサウナ術
本田 直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。日米ベンチャー企業への投資育成事業を行う。食やサウナのイベントプロデュースも手がけている。フィンランド政府観光局認定サウナアンバサダー
松尾 大(まつお・だい)
サウナー専門ブランド・TTNE株式会社代表。フィットネスクラブや福祉施設等、複数の会社を経営する傍ら、世界各地のサウナを渡り歩き、現在、サウナに関する執筆、TV、ラジオ、CM、イベント、デザイン性豊かなサウナ室のプロデュース等に関わり、サウナの素晴らしさを伝える為の活動をしている。フィンランド政府観光局認定サウナアンバサダー

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