(本記事は、フランチェスコ・シリロの著書『ポモドーロ・テクニック入門』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

目標Ⅰ 必要な労力の見極め

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(画像=Brian A Jackson/Shutterstock.com)

標準的なポモドーロ・テクニックは30分を1単位とする。25分間の作業と5分間の休憩だ。

1日の初めに「仕事の在庫」シートから、その日に片付けたいと思うものを選び出し、重要な順にそれぞれを「今日やること」シートに記入する。

図1
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

最初のポモドーロの開始

ポモドーロ(タイマー)を25分にセットし、「今日やること」シートの中の最初の作業に取りかかる。1人の場合でも複数の場合でも、タイマーは残り時間がはっきり見えるようにして使う。

図2
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

ポモドーロは中断できない。つまり25分間、作業に集中することになる。また、ポモドーロを半分や4分の1に切り分けることもできない。時間の「1原子」がポモドーロなのだ(ルール:ポモドーロは分割できない)。

誰か、あるいは何かに邪魔されてしまったら、そのポモドーロは無効になる。つまり、もうなかったことになり、最初から新しいポモドーロをやり直さなければならない。

タイマーが鳴ったら、それまでしていた作業項目の横の欄に「×」印を付け、3〜5分間の休憩を取る。

図3
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

タイマーが鳴ることは、その作業の完全な終了を意味する(ただし一時的な終了ということだが)。「もうあと何分か」作業を続けることはできない―たとえ、それで終わらせられるとわかっていても。

3〜5分間の休憩によって、自分を仕事から切り離すことができる。それまでの25分間で学んだことなどを頭にしみ込ませると同時に、次のポモドーロの成果を最大限に高めるためのリフレッシュの時間が得られる。

椅子から立ち上がって部屋の中を少し歩いたり、水を飲んだり、あるいは次の休暇にはどこへ行こうかなどと考えてみたりするのもいい。深呼吸やストレッチもできる。他の人たちと一緒に作業をしている場合には、冗談を言い合うのもいいだろう。

この短い休憩時間に頭を使うことをするのは避けるようにする。たとえば、仕事に関係する話を同僚としたり、重要なメールを書いたり、急ぎの電話をしたりすることなどだ。

そうしたことをしてしまうと、意識を集中させて次のポモドーロを始めるための頭と心の準備ができなくなってしまう。その種の事柄は「仕事の在庫」シートに記入して、そのためのポモドーロを確保するべきだ。

また休憩の間に、それまでしていた仕事のことを考えるべきでもない。

休憩時間が過ぎたら、タイマーを25分にセットしてまた作業を続ける。それが終わったら「今日やること」シートの横の欄にまた「×」印を付ける。

図4
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

再び3〜5分間の休憩を取ってから、新しいポモドーロを始める。

4回のポモドーロごとに

4回のポモドーロごとに作業を中断し、15〜30分間の休憩を取る。

図5
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

この長めの休憩は、デスクの上を片付けたり、コーヒーマシンのところまで行ったり、留守番電話や着信メールのチェック、あるいは単純な休憩や深呼吸、短い散歩をすることにも使える。

重要なのは、複雑なことを避けることだ。頭の中を整理し、学習したことを取り込むことができなくなってしまうからだ。それでは最高の状態で次のポモドーロに入れなくなってしまう。この休憩時間には、それまでのポモドーロでしていたことについて考えるのをやめる必要がある。

作業を完了させる

作業が完了するまでポモドーロを繰り返し、それが終わったら「今日やること」シートのその項目を横線で消す。

図6
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

個々の状況には常識を働かせて対応するべきだ。

● タイマーが鳴る前に作業が終わった場合には「タイマーが鳴るまでポモドーロは続く」のルールに従う。残った時間で、予定していた以上のことを学習したり、見直しや反復をしたり、小さな手直しや復習をしたりすることができる。

● ポモドーロの最初の5分未満で作業が終わった場合には、前のポモドーロで完了したこととしてポモドーロ数にはカウントしない。

一つの作業が完了したら、シートの中の次の作業へ移る。やはり1回のポモドーロごとに休憩をはさみ、4回目の後に長めの休憩を取る。

図7
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

記録

1日の最後に、完了したポモドーロをシートに記録する。パソコンでスプレッドシートやデータベースを使い、完了したものを「仕事の在庫」シートから削除するのもいいだろう。何をたどって記録するかは、あなたが何を見定めたいのか、どんなリポートをまとめたいのかによって変わる。

最初は、一つの仕事を終わらせるのに要したポモドーロの数をリポートにまとめることが目標になるかもしれない。それぞれの仕事を終えるのに費やした労力を集計してまとめ上げるという場合もあるからだ。

そのための項目欄として「日付」「(開始)時刻」「ポモドーロの総数」「結果に関する付記」が役立つ。この最初の記録フォーマットは、あなたがまとめたいリポートの内容を表し、紙の上に簡単に書くこともできる。

図8
(画像=ポモドーロ・テクニック入門)

この例で、もしもマークが開始時刻をメモしていなかったら?

ポモドーロ・テクニックでは、作業を始めた時刻は必要不可欠ではない。重要なのは、実際に要したポモドーロの総数を記録することだ。

それは実際に費やされた労力にほかならない。これがポモドーロ・テクニックを理解するポイントになる。記録は毎日少なくとも1回はすることになるので、作業を始めた時刻を思い出すのもさほど難しくはない。実際、この種の記憶をたどることも有益な頭の体操になる。

開始時刻を思い出すのに役立つテクニックとして、その日にした作業を現在時点から逆順にたどっていくという方法がある。

改善

「記録」は、ポモドーロ・テクニックをプロセス改善のための自己観察と意思決定に役立てようとする人にとって、効果的なツールになる。

たとえば、この1週間で仕事と自己開発のそれぞれに充てたポモドーロの総数や、1日当たりの平均ポモドーロ数を算出できる。あるいは、プロセスの各段階がすべて役立っているか、逆に省ける段階はないかという見極めもできる。

たとえば、図9でマークは「音楽の学び方」という記事の執筆と推敲、凝縮に合計10ポモドーロを費やしている。これは多すぎるように思える。マークは、9ポモドーロ以下で同じ成果を達成したいと思うだろう。そうすれば、差分のポモドーロを他の作業に充てられる。

「次の記事はクオリティを維持しつつ労力はこれほどかけずに書きたい。どうすればいいか。どこを省けるか。本当に役立ったのはどの作業か。もっと効果を高めるために、どう組み直せるか」

このような自問が仕事や勉強のプロセスの改善、あるいは少なくとも改善の取り組みを可能にする。1日の最後に記録をつけること(そして、そこから改善の方法を見つけ出そうとすること)は、1回のポモドーロで済ませるべきだ。

ポモドーロの性質

ポモドーロは時間の経過で区切りをつけるものであり、したがって時間という次元の測定になるが、複数の人が作業に関わることによって労力という次元の測定にもなる。その人数によって「パーソン・ポモドーロ」(1人の場合)、「ペア・ポモドーロ」(2人)、「チーム・ポモドーロ」(3人以上)として労力が測られる。

人数が違えば、ポモドーロの数で単純に労力を比較することはできない。また、別種のポモドーロの数を足し合わせることもできない。

個人、ペア、チームは、それぞれ生産要因の組成に違いがあり、コミュニケーションのあり方も異なる。パーソン・ポモドーロをペア・ポモドーロやチーム・ポモドーロに換算する定式はない。

個人、ペア、チームのそれぞれによる作業のコストを測定したいとする。
この場合、金銭的な測定を用いることによって、労力の多寡の比較や合算をすることができる。
たとえば、2回のパーソン・ポモドーロと3回のペア・ポモドーロでなされた作業があるとする。労力そのものに関して、これらの数字を直接比較したり足し合わせたりすることはできない。
しかし、1ポモドーロの労力をたとえば10ドルという金銭的価値で捉えることによって、この作業の費用は10ドル×2+10ドル×3×2=80ドルと表せる。

ポモドーロ・テクニック入門
フランチェスコ・シリロ
コンサルタント、起業家。少ない時間と労力でより良い結果を達成する時間管理術「ポモドーロ・テクニック」の開発者。「ポモドーロ・テクニック」は効率性と生産性を上げる方法として、世界中のエグゼクティブに広まっている。ソフトウェア業界の最前線で20年以上働き、現在はソフトウェア企業、多国籍企業、起業家などのコンサルタントを務めている。

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