(本記事は、フランチェスコ・シリロの著書『ポモドーロ・テクニック入門』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

ポモドーロ・テクニックの熟達

熟達
(画像=Frannyanne/Shutterstock)

確たる事実として、個人またはチームに対するポモドーロ・テクニックの効果は 一連の要因から生まれている。その要因は次のようにまとめられる。

「時間依存」の反転

ポモドーロは抽象的な時間を表す。ポモドーロは「時間の生成」を制限する箱だ。

この時間の生成に対する依存を断ち切り、それを反転させることによって時間を別の観点で捉えられるようになる。ポモドーロという一定の抽象的時間で自分自身を測定することにより、時間の生成という概念に対する直接的な依存を断ち切ることができる。

具体的には「タイムボクシング」(time-boxing=時間枠の設定)という概念、そして時間が逆に進むというポモドーロの考え方(25分から0分へと進んでいく)が意思決定プロセスを促す「良い緊張」(eustress=ユーストレス)を生み出す。それによって、あなたは主体的に作業を完遂できるようになる。

時間の経過をネガティブにではなくポジティブに受け止められるようになる。ポモドーロの一つひとつが向上のチャンスになる。危機的な状況の中では、それは速やかな立て直しのチャンスになる。

時間の経過とともにプロセス向上の可能性が高まっていく。作業の見通しを立てて予定を組むことも楽になっていく。時が経つにつれて不安感は薄れていき、「今ここ」に対する意識と集中力が高まり、明確な思考で次の行動を決められるようになる。その結果、生産性が高まる。

さらに加えてポモドーロ・テクニックには、それと同じ「依存の反転」が中断の防止や削減にも効果をもたらす。それによって集中力と継続性が高まり、やはり生産性の大きな上昇につながる。

複雑性への対処

次の2つのルールに従って毎日、難度の高い作業をいくつか終えていくようにすれば、モチベーションを最大限に高めることができる。

・5〜7ポモドーロを超えるものは分割する。
・1ポモドーロに満たないものは組み合わせる。

複雑性の低い作業は見通しを立てやすく、量的な推測力が高まることになる。複雑な作業を分割することも目標達成への意志の強化につながる。

休憩

ポモドーロの合間に頻繁に休憩を取ることは、生産性向上につながる明晰な頭の働きを保つうえで必須だ。重要なポイントとして、休憩を取ることは弱さの表れと誤解されやすい。

「真のマネジャーは朝9時に会議を始めて10時に終え、あとはデスクから離れない」とされている会社も多い。このような極端な働き方はフラストレーションや集中力低下の大きな原因となり、能率の低下につながりうる。

ポモドーロ・テクニックの実践により、多くの人が休憩の重要性を理解するようになる。25分ごとに休憩を取ることで、新しい視点で問題について考え、別の解決策を見いだすことが可能になる。自分で間違いに気づいて修正したり、創造のプロセスが刺激されたりすることにもなる。休憩によって継続性の価値が高まるのだ。

ただし、休憩は本当の休憩でなければならない。タイマーが鳴った後、ただ仕事の手を休めるだけで、頭の中で仕事について考え続けていては休憩にならない。

ポモドーロ・テクニックの実践を通じて、自分を仕事から切り離すこと、つまり能率の低下につながる「働き詰め」をなくせるようになる。立ち止まって自分自身を外側から見つめることで、自分の働きぶりに対して意識を高められる。つまり休むことは弱さではなく、むしろ強さに結びつくということだ。

観察と継続的なフィードバック

ポモドーロ・テクニックは25分ごとの成果を比較する手法だ。その最初と最後の5分間はおさらいと見直しで、それによって作業の進め方が正しいのかどうかを見極められる。

2人のペアで作業をする場合には、個人やチームの場合よりもこのプラスの効果が大きくなる。状況によっては、次のポモドーロから予定を組み替えるといったことにもなりうる。

少なくとも毎日一度、各ポモドーロの記録をシートに書き込むことで、自分のやり方の効率性を客観的な尺度で評価できる。自分自身の観察を記録に残すことにより、見通しの精度を高めながら、作業の進め方に調整を加えて成果を高めていくことができる。目標をより明確にしたり、作業を分割したり、重複する作業や無駄な作業をなくし、別の進め方を試したりもできる。

仕事や勉強のプロセスを高める可能性が開けることは、主体的な取り組み意欲の向上につながる。

持続できるペース

休憩時間も含めて予定表に従うことは継続性の確立につながる。高い能率を維持するうえで、朝から晩までノンストップで仕事や勉強を続けるのは得策ではない。

工場の機械なら休みなしに稼働時間を延ばせば生産量が増えるが、人間はそうはいかない。

ポモドーロの合間、そしてポモドーロのセットの合間の休憩をきちんと取ることで、ペースを保ったまま仕事や勉強を続けられる。疲れは当然感じるとしても、疲れきってしまうことにはならない。言い換えれば、ポモドーロ・テクニックでは休憩と作業の難度を意識的に管理していくことによって、自分自身が維持できるペース、心理的なリズムをつかめるようになる。

ポモドーロ・テクニック入門
フランチェスコ・シリロ
コンサルタント、起業家。少ない時間と労力でより良い結果を達成する時間管理術「ポモドーロ・テクニック」の開発者。「ポモドーロ・テクニック」は効率性と生産性を上げる方法として、世界中のエグゼクティブに広まっている。ソフトウェア業界の最前線で20年以上働き、現在はソフトウェア企業、多国籍企業、起業家などのコンサルタントを務めている。

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