(本記事は、フランチェスコ・シリロの著書『ポモドーロ・テクニック入門』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)
目標Ⅱ中断を減らす(「次のポモドーロはもっとうまくいくはずだ。」まで)
ポモドーロの時間は25分と短いため、何らかの理由で遮られることはなさそうに思える。ところが、これまでの経験から、ポモドーロ・テクニックの実践を始めると中断が厄介な問題になりうることがわかっている。したがって中断を最小限に抑え、ポモドーロをスムーズに終えられる状態を高めていく効果的な戦略が求められる。中断は2種類の原因から起こる。内的原因と外的原因だ。
内的中断
ポモドーロは25分しか続かないが、最初のうちは中断させないことがハードルになる。何か食べたり飲んだりしたくなったり、急に連絡する必要を思い出したり、インターネットで何か(作業中の仕事に関係すること、あるいは無関係なこと)を検索したり、メールをチェックしたくなったりするかもしれない。
加えて、今なぜこの作業をしているのかという思いにとらわれるかもしれない。
私たちは常に、自分が立てた1日の予定や決定事項について考え直そうとするものなのだ。
このような形で作業が止まったり、作業を先延ばししたりすることは「内的中断」と呼ばれる。仕事を予定どおりに意図した形で終わらせられるだろうかと不安を感じる背景には、このような要因が潜んでいる。内的中断には集中力の不足が関係することが多い。
このような内的中断から自分自身を解放するには、どうすればいいのか。2つの側面から対処する必要がある。
- この種の中断を可視化する。中断が起こりそうな状況になっていると感じたら、その都度、ポモドーロの「今日やること」シートにアポストロフィ(')を書き込む。
- 状況にどう対処するかを決める。次のどれかを選ぶことができる。 ・先送りできないと思ったら、「今日やること」シートの「予定外&緊急」の欄にそれを書き入れる。 ・「仕事の在庫」シートに書き入れて「U」(unplanned=予定外)を付記する。必要なら期限も書き加える。 ・現在のポモドーロを完了させる意志を固める。アポストロフィを付けたら、タイマーが鳴るまで作業に集中する(ルール:タイマーが鳴るまでポモドーロは続く)
ここでの狙いは、何らかの急な必要は生じるものであり、それを無視することはできないという事実を受け入れることにある。客観的な目で見て判断し、必要に応じて予定を組み直せばいい。
シナリオ
内的中断への対処について、その力学を事例で説明しよう。「音楽の学び方」の記事執筆の2回目のポモドーロの最中に、マークは急にキャロルに電話しなければと思い始めた。好きなロックバンドの次のコンサートの予定を知りたくなったのだ。マークはこう自問した。
「これは本当に緊急の用件なのか。今日でなければダメなのか。いや、そうではない。先に延ばせる。1時間か2時間後。明日でもいいかもしれない」
マークは「今日やること」シートの現在の項目の横にアポストロフィを付け(図10参照)、「仕事の在庫」シートに予定外の用件として記入したうえで(「U」を付記して―図11参照)、ポモドーロを続けた。
そして、マークはこう自問した。
「これは明日までにしなければならないことか。いや、週末までにやればいいことだ」
マークは、その期限を「U」の横にカッコを付けて書き込んだ(図12参照)。
もし、その10分後に突然ピザが食べたくなったら、マークはアポストロフィをもう一つ書き込むかもしれないが、今度はそれを「今日やること」シートの「予定外&緊急」の欄に書き込むだろう(図13参照)。そして、マークはまたポモドーロを続ける。
ここまで、ポモドーロは中断されていない。時間が進んでいくなかで、マークは状況に対処しながら作業を続けている。
状況への対処はできるかぎり短時間で済ませるべきで、数秒が限度だ。そうしないとポモドーロは中断され、無効になってしまう。
タイマーの音が鳴ったので、マークはシートに「×」印を書き入れ、短い休憩を取る(図14参照)。
マークは次のポモドーロに入ることにした。この3回目のポモドーロには中断の原因になりうる8つの事柄があるが、幸いなことに、そのすべてに対処できている。
1つは緊急ではないので「仕事の在庫」シートに記入したが、残りは緊急の用件に分類するしかなかった(図15参照)。
図15に書かれている事柄のなかには、本当に緊急なのかと思えるものもあるかもしれないが、マークはこう受け止めている。
ここでのポイントとして、ポモドーロ・テクニックでは、用事ややりたいことがたくさん頭に浮かんできても、今のポモドーロが終わってからにすると努めて意志を固めなければならない。
それぞれの事柄の内容と緊急度に目を通してみると、私たちが頭の中でどれほどいろいろなことを考えているか、つまり作業に集中するのがどれほど難しいことであるかがわかる。内的中断を引き起こしうる原因の数と種類の多さは、作業に集中できないのではないかという自分自身の不安の表れである場合も少なくない。
このような事柄には、後から見るとまったく緊急ではないと思えるものも多い。
1回のポモドーロや1つの作業、あるいは1日が終わった後、自分が緊急や重要の印を付けた事柄に別の形で対処できることに気づくことになるだろう。
・「仕事の在庫」リストに移す。自転車選びは明日でいいだろう。
・長い休憩の間に済ませる。ジャズコンサートのネット検索がそうだろう。
・消せるものもある。マークは本当にピザと春巻き、北京ダックを一緒に注文したいのか。どちらも注文せず、夜になってから食べればいいということになるかもしれない。
後からリストを見ると、別の目で見直すことになる。新しい見方に自分で驚くこともある。本当に緊急の用件は必ず「今日やること」シートに入る。
ポモドーロ・テクニックの目的は、いま取りかかっているポモドーロがそうした用件によって中断されないようにすることにある。次のような方法で、そうした用件に対処できる。
・次のポモドーロでする予定だった事柄と入れ替える。
・その日のうちに他の事柄と入れ替えて済ませる。
・次のポモドーロ、そのまた次のポモドーロというように、その日の最後まで先送りしていく。こうすることで、本当に緊急なものの見極めがついてくる。
予定外の緊急の用件をその日のうちに済ますことができたら、シートの中のその項目を横線で消す(図16参照)。
ここまで説明してきたケースは、すべて中断への対処が可能なものだった。ポイントは、別のポモドーロに移せないかをまず考えてみることだ。
誘惑にあらがいきれずに、あるいは本当に緊急の用件が飛び込んできて、ポモドーロを中断しなければならない場合、できることは1つしかない。たとえ終了間際であっても、今のポモドーロを無効にすることだ(ルール:ポモドーロは分割できない)。
そして、中断したポモドーロを記録に残すために、シートの当該項目にアポストロフィを書き加える。言うまでもないが、終了していないポモドーロに「×」印を付けることはできない。中断後に5分間の休憩を取り、新しいポモドーロを始めるのだ。
次のポモドーロはもっとうまくいくはずだ。
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