(本記事は、フランチェスコ・シリロの著書『ポモドーロ・テクニック入門』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

チームには高度な手法が必要な理由

いつの間にか稼いでくれるすごいチーム
(画像=GaudiLab/Shutterstock.com)

私は1990年代末、コーチングの仕事でポモドーロ・テクニックをチームに応用することを始めたが、そもそもの始まりはまったくの偶然だった。コーチングの相手は、ミラノにある銀行のソフトウェア開発者10人ほどのチームだった。

私はこの時期、ソフトウェア開発のプロセス効率化を目指す企業のコンサルタントをしていた。私の役目は、チームのメンバーが自分たちで問題の解決策を見つけられるようにすることだった。私はそのために、チームメンバーにたくさんの資料を渡して勉強させようとした。ところが、すぐに問題が生じた。

「いつ勉強すればいいのか」「どうすれば効果的に勉強できるか」「不安を感じずに勉強するには?」といった質問が出てきたのだ。

私にはもうなじみ深い質問だったので、休憩時間に、その答えはもうわかっていると気軽に話した。タイマーを用意して25分にセットし、「今日やること」と「仕事の在庫」のシートを用意して……というわけだ。追加的な質問に答えてから、また仕事に戻った。

ところが翌月、私が答えられない質問が出てきた。それが「ポモドーロをチームに応用するには?」だった。

質問の背景には様々な不安感があった。このチームはいつもソフトウェア開発の仕事が遅れ、1カ月と見通しを立てた仕事が5カ月もかかるようなありさまだった。

驚くまでもなく、マネジャーはもうメンバーを信用しなくなっていた。

このチームは強いプレッシャーを受けていた。そして、そうした状態で仕事をすることがバグの発生につながっていた。マネジャーが飛び込んできて、社内や顧客の銀行からバグが見つかったと連絡があったので、今やっている仕事は止めてすぐに修正しろと指示することも少なくなかった。そして、チーム全員で修正に取りかかるのだった。

残業や休日出勤もしばしばだった。このようなバグの修正は、チームの全員がその週の予定どおりに働けなくなることを意味していた。仕事はさらに遅れ、いっそう見通しが立ちにくくなってフラストレーションが生じ、チームの全員にさらなるプレッシャーがかかる―。

このミラノの銀行のチームのおかげで、あなたは今、この本を読めている。そのチームは、自分たちの成功体験をカンファレンスやブログを通じて共有しようとしてくれた。この手法が口コミで世界各国の何千ものチームに伝わっていき、それがこうしてあなたにも届いたのだ。

ミラノのチームは極端なケースに思えるが、チームで仕事をする場合には期限を守ることが難しくなったり、予定に大きな見込み違いが生じたりしやすくなる。耐え難いストレスを受けることや、上司や顧客から信頼されなくなったりすることも起こりうる。仕事が複雑すぎて、マイクロチームの手に負えなくなる場合もある。

あるいは、別のマイクロチームが仕事を終えるのを待たなければならないなどといった支障が生じることもある。

その他にも様々な問題が起こりうる。フラストレーションやストレスでチームの士気が落ち、生産性が低下して行き詰まり状態になってしまうことも少なくない。

チームとして複雑な仕事や中断、支障に対処するうえで、ポモドーロ・テクニックをどう生かせるか

以降のセクションでは、上述のようなフラストレーションを抱えることなく仕事をするためのポモドーロ・テクニックのチームへの応用について、私の「ベストプラクティス(最良の方法)」について説明していく。

ミラノのチームに対するコーチングの経験から、私は他のチームにも使える実践法をまとめ上げる方向に進んでいった。そして20年近くにわたり、規模やスキル、経験のレベルを異にする様々なチームに応用してきた。

私にとって、それぞれの実践は当該のチームと固有の形で結びついている。仕事の内容や不安の程度など、それぞれのチームがそれぞれに異なっているからだ。これから紹介する手法が、あなたにも役立つことを願っている。

ポモドーロ・テクニック入門
フランチェスコ・シリロ
コンサルタント、起業家。少ない時間と労力でより良い結果を達成する時間管理術「ポモドーロ・テクニック」の開発者。「ポモドーロ・テクニック」は効率性と生産性を上げる方法として、世界中のエグゼクティブに広まっている。ソフトウェア業界の最前線で20年以上働き、現在はソフトウェア企業、多国籍企業、起業家などのコンサルタントを務めている。

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