(本記事は、フランチェスコ・シリロの著書『ポモドーロ・テクニック入門』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)
ポモドーロ・テクニックのチームへの応用
科学的なデータから、人類は200万年前に狩猟を始めたことが示されている。
原始時代の人間が初めて、自分のプライドを脇に置いて他者に助力を求めたときのことを思わずにはいられない。大きな動物を1人で仕留めることは難しい。
現代の私たちが目標とすることの大半もまた、自分だけでは難しい、あるいはできない事柄だ。私たちは他者の助けがなければうまくいかないのだ。
たとえばパートナー、家族、職場のチーム、長年の同僚、あるいは場合によって一緒に仕事をする人たち。人間はチームで取り組むことによって、たとえば遠く離れた惑星を探索したり、私たち自身のDNAを読み解いたりするのに必要な知識を獲得することができたのだ。
初めて大きな動物を仕留めようとした原始時代の人たちの姿を想像せずにはいられない。すぐにはうまくいかなかったことだろう。獲物を取り囲み、1人ずつ襲いかかっていく姿が目に浮かぶ。場当たり的で統率のない行動だったはずだ。獲物のほうがエサにありつけたとほくそ笑んでいる姿を想像してしまう。
チームが「目標の餌食」になってしまうことが起こりやすい
私たちがチームで取り組む場合、目標は複雑になりやすい。目標が複雑になるほど、想定外の事態や緊急の作業を伴いやすくなり、遅れや中断の影響が大きくなっていく。
目標が複雑になれば、より多くの人と協力することが必要になる。そして、関与する人―チームのメンバーや外部のコンサルタント、取引先など―が増えれば、中断や遅れが生じやすくなる。
チームとしての時間管理の戦略―時間が問題になった際にチームとして効果的に行動できるようにする戦略―をもたないと、チームのメンバーが不安や恐れを感じるようになる。
たとえば、今日中にセールスリポートを上司に提出しなければならないとする。
それにはチームの全員から担当報告を受ける必要がある。
アンジェラは時間がかかるデータ分析、マークは最上級の顧客からのフィードバックの集約を担当している。あなたもチームもすべてに関して計画を立てていたし、目標も達成可能なものだ。
ところが、想定外のことが起きている。アンジェラはデスクにいない。連絡をしてもらったが、すぐには戻れないという。マークは顧客の一部と連絡が取れずに苦労しているが、そのことをあなたに報告せず、自分でなんとかしようとしている。
このリポートは本当に重要なもので、あなたはチームのメンバーを信頼している。
しかし、夕方の5時になってアンジェラとマークが間に合わないと言ってきたら、あなたはどう思うだろうか。これからも2人を信頼し続けるだろうか。
この状況をさらに厄介にしているのは、アンジェラもマークもまじめに取り組んでいたという点だ。問題は、2人が効果的な時間管理の戦略をもっていなかったことにある。
このような状況はフラストレーションをもたらす。不安はチームの雰囲気に広がる。怒りがこみ上げてくるかもしれない。メンバー同士が責め合い、チーム内の信頼が崩れ始める恐れもある。摩擦も生じる。目標、非難、不信という悪循環に陥ったあげく、チームは緊張と不安、フラストレーションの空気に包まれる。
チームがこのような状態に行き着いたら、もう「目標の餌食」になってしまったということだ。
ポモドーロ・テクニックはチームの目標達成にどう役立つか
ストレスも摩擦もなく、チーム全員が満足できる形で午後5時までにセールスリポートを提出できるようにするために、ポモドーロ・テクニックをどう生かせるのか。
ポモドーロ・テクニックのような時間管理の戦略をチームとして用いることには、次のようなメリットがある。
・チームメンバー間の摩擦を減らせる
・不要な会議を減らせる
・チームを中断から守れる
・チームとして予定どおりに目標と活動を果たせる
これからのセクションで、ポモドーロ・テクニックがチームにもたらすメリットについて見ていくことにする。
まず必要になるのは、ポモドーロ・テクニックのツールとプロセスの修正および拡大だ。ツールはタイマーと一連のシートで、その活用が目標達成へのプロセスとなる。「何をいつするか」という問いの答えになるのがプロセスだ。
たとえばタイマーが鳴ったとき、あるいは中断が起こった場合に、どうすればいいのか。プロセスを支えるのは、「5〜7ポモドーロを超えるものは分割する」というルールや「連絡・交渉・再連絡の戦略」だ。
最初に、ポモドーロ・テクニックのツールをチームに応用する方法について説明する。そしてそのうえで、生産性を高めるための新しいルールと実践法に焦点を合わせる。それでは、さっそく始めよう。
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