(本記事は、横山啓太郎氏の著書『健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

老化に効くのは「習慣」を軸とした健康マネジメント

習慣
(画像=marekuliasz/Shutterstock.com)

「いつか地震が来る」と脅す医療からの脱却

現代医療は「こんな数値だと、いつか急性疾患になりますよ」と脅して薬を飲ませるものでした。いわば「いつか地震が来る!」と脅すだけ脅しておいて、地震の備えという方策をあたえないようなものです。

いまは、急性疾患になったとしても、助かる確率が高まっています。そのぶん、今後は長生きの結果、誰もがなる可能性の高い認知症や寝たきりに対してどんな備えをするかに比重をおくべきです。

これからの医療では、その備えとして有効な「薬以外の方策」、そしてその方策を「継続するための情報」を、私たち医師は提案していかなければなりません。

ただ、現代医療はいまのところ、薬以外の方策を患者さんに提案できる体制にありません。ひょっとしたら将来、人生100年時代を生きる私たちに合った医療を提案する体制に変わるかもしれませんが、今のところその予定もなさそうです。医療体制を変えるにも、十分な議論と長い時間が必要でしょう。

しかしながら、人生100年時代はそこまで来ています。私たちには、もうあまり時間はないのです。

主体的な健康マネジメントで人生100年に対処する

そこで私が提案したいのが、個人による主体的な健康マネジメントです。

これまではマーカーという定点しかみずに、私たちは健康を薬でコントロールしようとしてきました。急性疾患に対応するにはそれでよかったかもしれませんが、老化する体を受け入れつつ、日常生活を送れる体力を100年維持しなければならない私たちにとって、マーカーと薬だけでは方策として不十分です。

なぜなら、老化は「定点」ではなく「プロセス」の結果として起こるものだからです。プロセスとは、私たちが毎日おこなっている「習慣」です。プロセスの結果である老化を遅らせるには、日々の習慣を変えるしか方法はありません。この日々の習慣を土台とする健康マネジメントを、私たちは人生100年時代に主体的につづけていくべきなのです。

習慣の積み重ねは、イコール「人生」であるといっていいでしょう。人生100年を最後まで自分らしく楽しむには、日々の習慣を変えねばなりません。

日々の過ごし方を考えるには、自分が将来「どうありたいか」を思い描く必要があります。その、将来の理想像から逆算し、老化を遅らせ、健康をできるだけ長く維持することのできる習慣を考えて継続していく。それが人生100年時代の健康マネジメントです。

急性疾患のような突発的な病気に対しては、ぜひ医師と相談しながら適切な投薬や治療をしてください。ただ、自分の習慣がもとで生活習慣病になっている人は、薬だけにたよることはやめてみましょう。薬は対症療法にすぎず、老化の進行そのものは解決しません。

日々の習慣にアプローチし、老化をなるべく遅らせる健康マネジメントこそが、人生100年時代に対処できる唯一の方策なのです。

健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である
横山啓太郎(よこやま・けいたろう)
東京慈恵会医科大学教授・行動変容外来診療医長。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。

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