(本記事は、横山啓太郎氏の著書『健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

ますます長くなる定年後の人生をどう生きるか

人生を楽しむ
(画像=simona pilolla 2/Shutterstock.com)

健康でないと人生がつまらない

これから私たちは、「マインド」を変え、「習慣」を変え、急性疾患よりも「老化」への対応に重きをおいた健康マネジメントをしていく必要があると述べました。

ただ、健康マネジメントで老化を遅らせなければならないのは、なにも現代医療が頼りないからばかりではありません。主体的に健康マネジメントをしなければ、単純に私たち自身の人生がつまらない、不幸なものになってしまうからです。

私たちは全員、かならず年老いていきます。老化を完全に止めることはできません。

それでも、最低限の健康マネジメントで老化の進行をゆるやかにしておけば、いわゆる後期高齢者になっても自分の足で好きなところへ行き、趣味を楽しんだり、自分の口で好きなものを食べたりできる健康状態でいることができます。

私たちが年老いたときには、自動運転もロボットもAI(人工知能)もIoT(センサーやデバイスなどのモノがインターネットとつながっていること)も日常生活に入り込んでいることでしょう。これらの技術は暮らしを便利にするだけでなく、高齢者の老化した機能をおぎない、幸せにする可能性もあります。

少子高齢化の時代、高齢者は企業にとって最も重要な顧客層の一つです。テクノロジーの恩恵を受けて、高齢者のアクティビティはいまよりますます高まり、多様化していくにちがいありません。

ただ、それも健康あってのことです。人生100年時代は急性疾患を防ぐことも大切ですが、「老化」のスピードをなるべく遅らせることが、人生を最期まで楽しむカギとなってきます。

人生100年時代においては、働く年数より定年後の年数のほうが長くなる可能性があります。

そうなると、自分のやりたいことを好きなようにやれる健康状態を維持しておかなければ、100年もの人生がとてつもなく退屈なものになってしまいます。せっかく時間に余裕ができても、生活習慣病で体がいうことをきかないのでは、あまりにもったいない。

寿命が20年、30年と違ってくることは、想像を絶する大きな変化です。定年後の数十年をどのようにして過ごすか、経済的な面を考えただけでも途方に暮れてしまいそうになります。

そのとき、健康という基盤がなければお金をかせぐことはできません。国民皆保険制度があるとはいえ、体調を崩したままの状態がつづけば、それにともなう出費がかさむでしょう。

医療費だけでなく、交通費、病気によってできなくなったことを代行してもらう費用もかかります。働けないために収入がなく、お金は懐から出ていってしまうばかりになるのです。

延びた余生をどう過ごしたいか

人生100年時代になると、私たちは何年働き、何年余生を送ることになるでしょうか。

大学まで出て新卒で就職したとしましょう。60歳定年ならば22歳からの38年間、会社員生活を送ることになります。100歳で亡くなるとすれば、定年後40年の余生が待っています。

まさに、働く年数より定年後の人生のほうが長くなる。90歳で亡くなる場合でも、余生は30年もあります。死ぬまで働きつづけたい人を別にすれば、このあいだは年金以外の収入がないかもしれないのです。

みなさんは、この長く延びた余生をどのように過ごしますか?

人生70年時代と比べれば、当時の70歳といまの70歳の健康状態はまったく違います。もちろん、いまの70歳のほうが見た目も格段に若々しく、健康状態も良好なはずです。

私たちの祖父や祖母が70歳だったころを思い出して、いまの70歳と比べてみてください。相当なちがいを感じられるのではないでしょうか。

昔の70歳で一日中ゴルフを楽しめる人はまれでしたが、いまの70歳は余裕でコースを回れます。マラソンや水泳を習慣にしている人もいます。引退するにはまだ早い、若い人には負けていられないと、パートやアルバイトとして仕事をつづけたり、ボランティアに精を出したりする人もいるでしょう。

現役世代に仕事で体を酷使してきた人でも、なんとか無事に70歳をむかえられる人が増えています。40代、50代で急性疾患を起こし、回復した人も少なくないはずです。

こうした現状をふまえて考えてみてほしいのです。

健康維持にある程度気を配りながら70歳をむかえる人。

不摂生をつづけ、急性疾患を克服しながら70歳をむかえる人。

この二人の20年なり、30年なりの余生はそれぞれどのようなものになるかということを。

健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である
横山啓太郎(よこやま・けいたろう)
東京慈恵会医科大学教授・行動変容外来診療医長。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます