(本記事は、横山啓太郎氏の著書『健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

ダイエットに我慢は禁物。低いハードルではじめる

ダイエット計画
(画像=Syda Productions/Shutterstock.com)

嫌なことは長続きしない

健康マネジメントを考えるにあたり、ダイエットを計画している人もいるかもしれません。ただ、一つ注意点があります。それは「けっして我慢が必要なダイエットをしないでほしい」 ということです。

本書でもくりかえし述べてきたように、私たちは自分に向かないこと、嫌なことはけっして長続きしません。いくら体によくても、不向きで嫌いなことは継続できないのです。

ダイエットでリバウンドしてしまう人がいるのも同じ理屈です。我慢が必要なほど無理なダイエットをすると、その反動で目標体重に達した後、太っていたころの食生活に戻ってしまうのです。

ダイエット成功後も目標体重を維持するのであれば、ダイエットをしていた時期の半分程度の食事制限を維持するべきだとされています。ダイエットをはじめるなら、この「目標体重に達した後、どうやってそれを維持していくか」までを織り込んだ計画を立てるべきです。

いままでまったく食事に気をつかっていなかったのに、気合いの入りすぎたダイエット計画を立てると、おそらく挫折してしまうでしょう。こうなると無駄に自己肯定感を損ねてしまい、せっかくわきあがってきたやる気まで失ってしまうことになりかねません。

太る行動を10個書き出してみる

健康マネジメントに取り組みたい、その気持ちをまず大切にしてください。そのうえで、無理のない計画を立てることをおすすめします。

ダイエットの計画を立てるのには、コツがあります。まず、自分の太る原因と思われる行動を10個、紙に書き出します。次に、一番悪いと思う行動から順に、1から10まで番号をふります。

ダイエットを成功させたいなら、もっとも太ることから順にやめていけばいいと考えるでしょう。しかし、それが挫折のもとです。

もっとも太ることは、あなたにとって楽しい、あきらめたくない習慣である場合が多いのではないでしょうか。その行動を長期間、本当に断ちつづけることができますか?おそらく無理でしょうし、そんな生活は味気ないものです。なるべく自分にとってやめることがつらくない行動から変えてみる。そう考えたほうが健康マネジメントはつづきます。

我慢が必要なほど無理な食事制限をしてもつづかないことは、私自身、経験から実感しています。

私は好きに飲み食いしていると、適正体重57〜58キロが62キロまで増えてしまいます。ですが、好きなビールやご飯を我慢すれば、かんたんに適正体重に戻すことができるとわかっています。

だからといって、ビールとご飯を一生やめる生活をしたいか、といわれれば答えはノーです。自分の好きなお酒や食事を楽しめない人生なんてつまらないですし、そんな無理がつづくとも思えません。

そのため、私はビールを飲んだ日はご飯を食べない、ご飯を食べたらビールは控えるというふうに、無理のない、これならできそうと思えるルールを自分でつくり、実行しています。

ハードルの高いことを一度にやらない

行動変容外来でも、肥満を解消したい患者さんに、太る原因と思われる行動を10個書き出して番号をふってもらっています。そして、私はこう尋ねます。

「いちばん悪い行動をやめられますか?」

患者さんが「できる」と即答しても、私は「本当にできますか?」と念を押します。すると患者さんのなかには「……やっぱり無理かもしれません。2番目、いや3番目の行動ならやめられるかもしれない」とおっしゃる方が出てきます。

そこで私は、患者さんにこうアドバイスします。

「1番目と2番目の行動をいっぺんに断つのはやめてください。ハードルの高いことを一度にやって失敗し、ダイエットをしようと思った気持ちまで台無しにしてはもったいない。もっとハードルの低いことからはじめませんか?」

健康マネジメントをつづけて適正体重を維持するのは、一時のことではありません。人生100年時代に、死ぬぎりぎりまで人生を楽しみたいのなら、無理なく、ずっとつづける必要があるのです。だからこそ、ダイエットに無理は禁物なのです。

健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である
横山啓太郎(よこやま・けいたろう)
東京慈恵会医科大学教授・行動変容外来診療医長。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。

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