(本記事は、横山啓太郎氏の著書『健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

「10年後老化度チェック」で未来の自分を知る

質問
(画像=9dream studio/Shutterstock.com)

老化を実感する項目は年齢で変わる

自分に合った生活習慣を考える手だてとして、「10年後老化度チェック」を紹介します。10年前と比べて自分の老化がどう進んでいるか、10年後の自分がどう老化しているかに目を向けることができるチェックシートです。

若いうちは、自分の老化を意識することは少ないでしょう。しかし、年をとるにつれ、老化を感じることが増え、老化を感じる項目が年をとるごとに変化していくこともわかってきます。

みなさんも、いまごろになって「学生時代にもっと○○すればよかった」と考えることがあるのではないでしょうか。健康に対してはそんなふうに考えないですむように、いまのうちから自分の老化度、10年後に起こりうる老化を知っておいてください。

まずは、次の20の項目にイエスかノーで答えてみてください。10年前と変わらないことはなんでしょうか?反対にできなくなっていることはありますか?

それぞれのチェック項目には意味があります。説明していきましょう。

Q1〜7……身体機能スコア
Q8〜13……体内代謝関連スコア
Q14〜17……社会性スコア
Q18〜20……知的スコア

10年後老化度チェック

Q1 体の左右でバランスが違うなど姿勢が左右対称ではない
Q2 背中の後ろで手を合わせられない
Q3 10年前と比べ、腰痛や肩こりが増えた
Q4 10年前と比べ、転びやすくなっている
Q5 10年前と比べ、顔や手のシワが増えている
Q6 10年前と比べ、体重は3kg以上増加した
Q7 10年前と比べ、同じもの(同じ量)を食べていてもより太る
Q8 10年前と比べ、酒に弱くなった
Q9 10年前と比べ、階段で息切れを感じる
Q10 10年前と比べ、歩く速度が遅くなっている
Q11 10年前と比べ、徹夜ができなくなっている
Q12 10年前と比べ、眠りが浅くなっている
Q13 10年前と比べ、冷え性になっている
Q14 10年前と比べ、物忘れが多くなっている
Q15 10年前と比べ、運転中に道路標識の判断が遅くなっている
Q16 おしゃれでなくなった
Q17 自分以外の個人の携帯電話番号を3件以上覚えていない
Q18 この1年で家族以外の友人とプライベートで2回以下しか食事をしていない
Q19 5年以内に新しい趣味やゲームを始めていない
Q20 この20問を答えるのに3分以上を要している

身体機能についてはわかりやすいと思います。筋力、体の柔軟性やバランス、つまり運動に関するスコアです。

体内代謝関連は、毛細血管量、体内水分量に関連したスコアです。いわゆる「血のめぐり」が良ければ細胞機能は維持されます。お酒を飲んだときのアルコールの処理もうまくいきます。

同様に、食べ物からとった栄養を体じゅうの細胞でしっかり使うことができるため、新陳代謝がよく、太りにくい体といえます。

社会性スコアと知的スコアは、それぞれあなたの社会性がどの程度か、知的レベルや知的好奇心がどの程度かをはかるものです。

本書の制作にあたり、この老化度チェックを329人の人にやってもらいました。イエスが多いほど、回答者が老化を感じていると評価します。

この老化度チェックのおもしろいところは、年齢とともに老化を感じる項目数が単純に増加していくわけではないことです。20〜30代、40〜50代、60代以上でのイエスの数を平均すると、年をとることによって老化を感じる項目の数は6.17から6.77へと微増にとどまりました。

ただ、老化を感じる項目は年代別で変わってくることがわかりました。

20代が老化を感じるのは、同じものを同じ量しか食べていないのに太るようになった、徹夜ができなくなった、腰痛が起こったなど、身体機能や体内代謝機能に関する項目で、認知機能の低下を感じることは少ないことがわかりました。

一方、60代以上が老化を感じる点は20代とは異なります。太ることよりも物忘れをすること、お酒に弱くなったこと、シワが増えることで老化を強く感じることが多いようです。この年代は中年太りの時期をとうにすぎているため、太ることに対する意識はそれほど高くないこともわかりました。

身体機能においては、心肺の衰えを感じることが増えます。そして、60代以上でなにより顕著なのは、知的対応能力の低下を老化ととらえる点です。

今回実施した老化度チェックでは、頻度としては少なかったのですが、運転時や老化度チェック回答時の判断が遅れること、歩く速度が低下すること、階段を上がるときの息切れや転びやすくなることに関しては、年齢を重ねるごとに確実に割合が増加することもわかりました。

また、これは女性回答者特有の傾向ですが、若い年代ほどシワに敏感で、シワにより老化を感じていることがわかりました。

年をとるほど認知機能の衰えに敏感に

この10年後老化度チェックの結果を分析してみると、年齢とともに知的スコアの衰えを敏感に認識していることも統計的に明らかになりました。これは、「自分は認知症にはなりたくない」という願望、「ひょっとしたら自分も将来、認知症になってしまうかも」という恐れをもっていることを意味します。

寿命が延びる人生100年時代だからこそ、認知症の状態で長生きしたくない、人生を終えたくないと考える人が多いのでしょう。だからこそ、ちょっとした認知の遅れ、判断の遅れをことさら重大に認識してしまうのです。

一般的には、中年で身体機能、壮年期に知的機能のめだつ低下がみられるようになります。身体機能より知的機能の落ちこむ時期が早くおとずれた人は、晩年に認知症になります。知的機能より先に身体機能が落ちこんでしまった人は、寝たきりの状態で亡くなるまでの時間を過ごすことになります。

10年度老化度チェックの結果をもとに、年齢を重ねると自分にどのような老化が起こるか、自分の身体機能と知的機能がどのような曲線をたどりそうか、予想してみてください。その予想をもとに、自分の健康マネジメントを考えていきましょう。

身体機能の落ち込みより知的機能の落ちこみが激しいと思えた人は運動をして毛細血管を増やし、知的機能を保つことを心がけてください。新しいコミュニティに参加するなど外へ出る機会を増やしたり、友人と食事に出かけておしゃべりに興じる機会をもつのもいいでしょう。

身体機能にめだつ低下がみられる人は、いまより運動の習慣を増やすといいでしょう。ただ、やみくもに運動するのではなく、やり方に工夫を凝らしてみてください。これまでとは種類のちがうスポーツに挑戦したり、友人といっしょにやってみたり、タイムを競い合ったり……無理なくできる、つづけやすい運動を考えるようにします。

スポーツ関連のコミュニティに所属すれば、運動ができるだけでなく友人もできます。人と交流し、つながりをもつことで知的機能の活性化も期待できます。

健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である
横山啓太郎(よこやま・けいたろう)
東京慈恵会医科大学教授・行動変容外来診療医長。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。

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