(本記事は、齊藤 勇の著書『誰とでも会話が続く「相づち」のコツ』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

「話し上手」になる必要はなかった

マネジメント,人間関係,リーダーシップ
(画像=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

人間関係を良好にするもっとも簡単な方法が相槌と聞いて、驚かれた方も少なくないでしょう。

なぜならば、それは日々、無意識にあまりにも簡単に行っていることだからです。しかし、この無自覚に行っている相槌を自覚的に行うことで、人間関係をきわめて良好にできるのです。

話し上手になることよりも、ずっと簡単にできると思いませんか?

では、もう少し「話し上手にならなくてもよい理由」をお伝えします。

デール・カーネギーは、名著『人を動かす』で、「話し上手になる必要はない」と言い切っています。その代り、人に好かれるには、ほめ上手になることだ、と一貫して主張していのです。

『人を動かす』の内容は、具体的なほめ言葉が並んでいて、すぐに実行できる実践書となっています。難しい論理が並んでいるだろうと敬遠していた人にとっては意外かもしれません。

では、人間関係を良好にするには「ほめ上手」になることなのでしょうか?

もちろん、それはとてもよい方法だと思います。

しかし、よく考えてみてください。一朝一夕にほめ上手になれるでしょうか?

付き合っていた恋人が髪型を変えたとき、あなたは気づきましたか?ほめる前には、ほめるべき要素にも気づく必要があります。

さも「ほめてくれ」という顔で自慢話をする人を前に、無口になってしまったことはありませんか。ほめたくない人でも、ほめなければいけない辛さに耐えられますか。

『人を動かす』に挙げられている例は、一九三〇年代のアメリカ社会において効果的とされていたものです。話し好きで、パーティー好きの当時のアメリカ人の社交社会での会話が中心です。

口下手な日本人が応用するには難しい部分があります。特に人間関係に悩んでいる人には難度が高い。カーネギーは、「心からほめれば、気持ちは通じる」というが、そのほめ方こそが、難題なのです。

口下手な日本人が、ほめ上手を目指すのはいばらの道です。

そこで、私は人間関係に悩む日本人がどうしたらよいかを考えてみました。上手なほめ言葉に代るものはないか、考えました。その結果、結論が出ました。それは、うまく『相槌』を打つことを習得することです。ほめる相槌をうまく打つことで、人間関係を良くしたいという願いがかなえられるのです。

相槌ならば、話し下手でも苦になりません。

相槌は長く話す必要もありません。むしろ短い方がよいのです。

相手の話の区切りに一言、決まっている相槌を打てばよいのです。

実に簡単なことです。

しかも、この相槌が対人関係に効果てきめんなのです。

人から好かれたいという願いが、本書の「あいづち対話法」で実現できます。面白い話をする人よりも、うまく相槌を打ってくれる人の方がずっと好かれるのです。

真剣に話を聞いてくれて、その都度、心を打つ相槌を打ってくれて、自分をのせてくれ、良い気分にしてくれる人、そんな人に、誰も好意を持たずにはいられません。上手く相槌を打てば、多くの人が、あなたと話したくて近づいてきます。

多くの人は、あなたの話を聞きたくて来るのではありません。自分の話に相槌を打ってもらいたくて来るのです。人は無意識のうちに、自分の話に上手く相槌を打ってくれる人を求めています。ですから、あなたはそれに応える人になればいいのです。

相槌は、人の心を満たし、相手に自信を与えます。だから、相槌上手の人は多くの人から求められる存在になるのです。

「人に好かれる相槌上手の人になること」

それが本書の目標です。

本書では、どんなときに、どんな相槌を打てば、相手から好かれるかを心理学的に解説していきます。私がこれまで研究してきたことを基に論理的にご紹介しますが、難しくはありません。

相槌にもいくつか種類があります。場面によってその選び方を具体例と共にご紹介していきます。どんなに人間関係が苦手な人であっても、的確な相槌が打てるようになれる本となっています。

この本で相槌の極意を習得すれば、これまでの苦労がウソのように、人から好かれ、人間関係の悩みは、ぐっと少なくなるはずです。

相槌は、あなたの人生を大きく変えるツールとなるはずです。

全てのコミュニケーションは主従関係でできている

英会話スクール,比較
(画像=metamorworks/Shutterstock.com)

「コミュニケーションはキャッチボールだ」とよく言われています。

私はあるとき人間関係についての取材で、

「人間関係はキャッチボールですよね」

と言われ、同意しなかったことがあります。

「よくそう例えられますけど、日本人のコミュニケーションはキャッチボールではないですよ」と、私は答えたのです。

記者はキョトンとした顔をして、

「えっ、それはどういうことですか」と怪訝な顔をしていました。

対人コミュニケーションがキャッチボールにたとえられるのは、二人の間で、ボールを交互に投げ合うからです。ボールが言葉で、一方が話し、他方がそれを受け、続いてその逆が行われる。言葉の交互作用とも言い換えられます。

確かに、欧米人の会話は、お互い対等のやり取りで、言葉の量も質も同等の場合が多い。

そのため、まさに「キャッチボール」となります。

しかし、日本人同士のコミュニケ―ションを観察すると、会話は対等でも平等でもありません。キャッチボールのイメージとは程遠いのです。

あえてキャッチボールにたとえるならば、一人がピッチャーで、一人がキャッチャー。

つまり、片方を座らせてのキャッチボールとなります。したがって、会話は話す方の投手と聞く方の捕手と、役割は常に決まっているのです。日本人の会話は対等・平等ではなく、主と従の関係にあるのです。

たしかに、友人同士でワイワイ話すときは、キャッチボールになっていることもあるでしょう。しかし、それはあなたの会話のうちの何割を占めていますか?

多くの対話は、上司と部下、先輩と後輩、顧客と店員のように対等ではない関係性です。

一方が大半を話し、他方は相槌を打つ程度。

つまり、逆に言うと、話を聞く側の方から考えると、会話は相槌が主なので、それがパーフェクトであれば、聞き手のコミュニケーション力が百点満点となるのです。

一見すると、相槌を打つ側は受け身な対応ととられるかもしれません。しかし、実は相槌は会話のなかでとても重要な役割を果たしているのです。しゃべる方は、相手の相槌に合わせて話を進めているのです。

誰とでも会話が続く「相づち」のコツ
齊藤 勇 (さいとう・いさむ)
日本あいづち協会理事長。立正大学名誉教授、大阪経済大学客員教授、文学博士、日本ビジネス心理学会長、早稲田大学大学院博士課程修了。
人間関係の心理学、特に対人感情や自己呈示の心理などを研究。またテレビなどメディアでも活躍し、TV「それいけ!ココロジー」の監修者を務めるなど、心理学ブームの火つけ役となった。
著書、監修書に『心理分析ができる本』(三笠書房)、『恋愛心理学』(ナツメ社)、「人間関係の心理学』(誠信書房)など多数。企業や学校などで対人関係を良好にするコミュニケーション・スキルの研究に従事、最近は独自の「あいづち対話法」を開発し、日本あいづち協会(http://www.aiduchi.com/)を設立し、その普及に努めている。

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