(本記事は、齊藤 勇の著書『誰とでも会話が続く「相づち」のコツ』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

「知らなかった」で、さりげなく相手の知性を褒める

驚く
(画像=PIXTA)

基本の相槌、「さしすせそ」の「し」のもう一つの「し」は、「知らなかった」の「し」です。

「え!知らなかった〜」
「知らない!すごい」
「おお、知らないです」

など、驚きのリアクションとともに示される相槌です。

驚きの表情は、エックマンの表情分析の基本的感情表現の一つで、相手の関心を引く表情ですが、相槌による驚きは、さらに関心を引くといっていいでしょう。それに加えて、「知らなかった」は、単なる驚きの表現ではなく、話し手が情報通だとほめる相槌です。「自分が知らないことを、よくぞ知っていますね!」と絶賛する言葉といえます。「知らなかった」という驚きの相槌は相手への感心と相手に優越感を与えることができます。

この相槌は分類的には、賞賛の相槌に入ります。同じく賞賛の相槌である「すごい」が、話し手の業績をほめているのに対して、「知らなかった」は、博識さや情報収集力を評価しています。

これは、その人のインテリジェンスつまり、知性をほめることにつながるのです。

誰でも、頭の良さをほめられるのは、うれしいものです。話し手は、優越感をもち、「知らないのか、では教えてあげよう」と、もっと話したくなります。つまり、この相槌は、相手から情報を引き出すのに有効なのです。

是認欲求をくすぐるキラーワードをおさえよ

Robert Kneschke/Shutterstock
(画像=Robert Kneschke/Shutterstock)

基本の相槌、「さしすせそ」の「せ」は、濁点をつけた「ぜ」の「絶対」です。

話し手は、自分の思うところを話してはいるが、それが相手に受け入れられるかどうか、心配です。ましてや、絶対の自信はない。自信をもって話すときも、やはり、相手の反応は気になる。自信がないときはなおさらです。恐る恐る話し、相手の反応をうかがうことになります。

そんなとき、聞き手から、

「絶対!」
「絶対ですね」

とタイコ判を押されると嬉しい。これほど嬉しいことはない。なぜなら、人には強い是認欲求があるからです。

是認欲求は、相手の人からの同意や承認によってのみ満たされる。自分が正しいと思っていても、相手から否定されると、自信をなくしてしまうものです。たとえ強い確信をもち、自信は維持しても、否定されたら、愉快ではない。当然、自分の考えを受け入れない相手を好きにはなれません。人は、自分の考えが周りの人から是認されて、はじめて強い自信と喜びをもち、そして是認してくれた人に好意をもち、信頼をし、仲間となる。このことは対人心理学の研究でも実証されています。

そんな是認を表わす最も力強い相槌が「絶対」なのです。「絶対」は、批判や否定や疑問を、全く受けつけない是認です。話し手にとって、これほどありがたい賛意の相槌はありません。自信をもっている話し手にとっても、納得の相槌でありますが、特に自信がないときは、本当に心強い相槌となります。

あなたが、「絶対」と相槌を打った瞬間に、逆に、話し手から〝絶対〞の信頼を得ることができると言っても過言ではありません。

相槌の「絶対」は、絶対の後に、たとえば「絶対、そうですね」と同意の相槌を続けると良いです。「そうですね」など同意の相槌については、「基本の相槌」の「そ」のところで詳しく話しましたが、絶対が加えられると、さらに強い同意の相槌となります。

誰とでも会話が続く「相づち」のコツ
齊藤 勇 (さいとう・いさむ)
日本あいづち協会理事長。立正大学名誉教授、大阪経済大学客員教授、文学博士、日本ビジネス心理学会長、早稲田大学大学院博士課程修了。
人間関係の心理学、特に対人感情や自己呈示の心理などを研究。またテレビなどメディアでも活躍し、TV「それいけ!ココロジー」の監修者を務めるなど、心理学ブームの火つけ役となった。
著書、監修書に『心理分析ができる本』(三笠書房)、『恋愛心理学』(ナツメ社)、「人間関係の心理学』(誠信書房)など多数。企業や学校などで対人関係を良好にするコミュニケーション・スキルの研究に従事、最近は独自の「あいづち対話法」を開発し、日本あいづち協会(http://www.aiduchi.com/)を設立し、その普及に努めている。

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