(本記事は、齊藤 勇の著書『誰とでも会話が続く「相づち」のコツ』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

目下の人に「聞き上手」と好かれるには?

上司,部下
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

相槌の「う」について、もう一つ紹介します。

それは、話し手が友達、目下の人の場合に使える、「うん」です。一番、簡単な相槌です。

「うん、うん」という言葉は、発音が容易で、うなずきと一緒に声が出せるので、軽く同意を示すのには最も使い勝手のよい相槌です。

友達の方も、あらためて、「さすが」とか「すごい」と言われるよりも、「うん、うん」と軽くうなずかれる方が、仰々しくなく、話が進めやすいときもあるでしょう。

長いつきあいの友人の場合、あらためて関係を深める必要はなく、現状の良い関係を維持すればいい。そのため、軽い相槌で簡単な、合意を示す方が、会話がスムーズに運ぶのです。

友達同士の場合、両者が話すので、お互いがお互いの話に「うん、うん」と軽く同意することで、仲間意識を高めることができるのです。

ただし、この「うん、うん」の相槌は、上司には厳禁です。

たとえ、同意の相槌であっても、上司は不愉快になります。それは「うん、うん」という相槌には上司に対するリスペクトが全く含まれていないからです。

むしろ、蔑視の感情が、うかがわれてしまいます。同意や非同意以前に、上下関係の感情から、不快に思われてしまいます。上司や先輩には、「うん、うん」の相槌は失礼にあたるので、使用しないように注意しなければいけません。

対象が友人や目下の人に限られますが、「うん、うん」の相槌は仲良し状態を維持するのに気軽に使える便利な相槌だといえます。

日本人の好きな「縁」を使って強い絆を生む

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(画像=fizkes / Shutterstock.com)

人間関係を深める「あいうえお」の相槌の「え」は、「縁」の「え」です。日本人は何事にも縁による結びつきを考え、それを大切にします。年の始めに各神社、仏閣には、良縁を求めて、何万という人が集まるのを見れば明らかでしょう。

元々、縁は仏教用語ですが、日本人の伝統的な価値観となっています。知らない人同士のつき合いが、苦手な日本人でも、そこに何かの縁の結びつきという神秘的な力を感じると、急に、固さがとれるのです。縁を感じると、その日はじめて会った人でも旧来の友や親族のような親しさを感じてしまうのです。偶然ではなく、縁があって、会った、運ではなく、不思議な〝えにし(縁)〞により結びついた、と考えると心が和むのです。

そこで、この縁の相槌を人間関係を深めるために、うまく使うことが有効となります。

たとえば、

「縁がありますね」
「何かの縁ですよ、これは」
「不思議な御縁ですね、結ばれていますね」

といった感じです。

縁は、自分の意志や能力だけでなく、周囲の力や自分でも計り知れない自然や宇宙の力が働いて生じるものだと考えられています。

自分達でも気づかないような不思議な〝えにし〞による結びつきが「縁」という言葉には込められているのです。

会話の中で、話している話題や話している二人の関係が、「縁によって生じた」といわれると、「そうなるべくしてなった」と思え、理由を越えて、一体感を育むことにつながります。そして、縁で結ばれた二人だと思うと、親しさが増すのです。結びつきは、自然と強くなります。

また、縁の相槌を介在させると、二人の関係をほっとさせ、温かい関係に導いてくれます。さらに、「縁」の相槌は、関係性を人知の及ばぬ力によって結び付けられた強いものと捉えさせる効果があります。

ぜひ、深く結びつきたい相手には、機会をとらえて、「縁がありますね!」という相槌を使って下さい。

誰とでも会話が続く「相づち」のコツ
齊藤 勇 (さいとう・いさむ)
日本あいづち協会理事長。立正大学名誉教授、大阪経済大学客員教授、文学博士、日本ビジネス心理学会長、早稲田大学大学院博士課程修了。
人間関係の心理学、特に対人感情や自己呈示の心理などを研究。またテレビなどメディアでも活躍し、TV「それいけ!ココロジー」の監修者を務めるなど、心理学ブームの火つけ役となった。
著書、監修書に『心理分析ができる本』(三笠書房)、『恋愛心理学』(ナツメ社)、「人間関係の心理学』(誠信書房)など多数。企業や学校などで対人関係を良好にするコミュニケーション・スキルの研究に従事、最近は独自の「あいづち対話法」を開発し、日本あいづち協会(http://www.aiduchi.com/)を設立し、その普及に努めている。

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