足元の株式市場は一時に比べれば落ち着きを取り戻しているように見受けられます。新型コロナウイルスの感染拡大にピークアウトの兆しが見え、我が国では5/14(木)に39県で緊急事態宣言の解除が実現しました。ただ、景気・企業業績はかなり悪化しており、そこからの回復を見通すことは、まだまだ困難であると考えられます。そうした中、我が国では3月決算企業の決算発表がいよいよ最終局面に入ってきましたが、業績が悪化する企業がほとんどで、投資対象をみつけることが非常に困難となっています。

とはいえ、少ないながらも好業績銘柄が存在することは確かです。業績予想を公表できる企業は少数派ですが、アナリストが増益予想を出している銘柄はあり、それらの銘柄は今後希少価値が高まると期待されます。今回の「日本株投資戦略」では、逆風にも負けず、成長継続が期待される基調の強い銘柄を抽出すべく、スクリーニングをおこなってみました。

逆風にも負けず、成長継続が期待される基調の強い銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)広義の金融を除く業種に属している銘柄であること。
(3)時価総額1千億円以上の銘柄であること。
(4)業績予想を公表しているアナリストが3名以上存在している銘柄であること
(5)3月決算銘柄で、5/14(木)までに決算発表を終えている銘柄であること。
(6)2020年3月期営業利益が事前の市場予想(Bloomberg集計の市場コンセンサス)を上回っていること。
(7)決算発表後の株価上昇率が10%未満の銘柄であること。
(8)2021年3月期(今期)の市場予想営業利益が増益予想になっている銘柄であること
(9)2022年3月期(来期)の市場予想営業利益が増益予想になっている銘柄であること

上記のすべての条件を満たす銘柄を(8)の今期市場予想営業増益率の高い順にご紹介したものが表1となっています。これらの銘柄は、日本経済に襲い掛かる逆風が強いにもかかわらず、成長継続が期待される基調の強い銘柄であると、「日本株投資戦略」では考えています。

ご存知の通り、上場企業における2020年3月期の決算発表は、5/12(火)にトヨタ(7203)の発表が終了し、大きなヤマを越したと考えられます。週明けの5/18(月)にはソフトバンクグループ(9984)やパナソニック(6752)等の銘柄が発表を予定しており、株式市場の関心は「決算発表後、どのような銘柄が物色の中心になってくるか」という点に移ってくるものと考えられます。

日経平均採用銘柄について、業績の全体感を示唆する、平均予想EPS(1株利益)は昨年10月下旬ころには1,800円に近い水準まで上昇していましたが、本年4月末には1,256円に、足元の5/14(木)現在は809円まで大幅低下しています。予想EPSの大幅低下は、日本企業の業績見通しの大幅悪化を示しており、日本経済は現在、非常に厳しい逆風にさらされていると思います。

そうした中、本業のもうけを示す営業利益について、アナリストの期待を上回るのみならず、今期・来期とも増益が予想される会社は、希少性が高く、株式市場で高い評価を得る可能性が大きいと思われます。表1の銘柄はそれにもかかわらず、決算発表後の株価上昇率が限定的であるとみなされるのではないでしょうか。

逆風にも負けず、成長継続が期待される基調の強い銘柄
(画像=SBI証券)

表1 逆風にも負けず、成長継続が期待される基調の強い銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(5/14)終値 / 株価(5/14)騰落率 / 予想営業増益率今期市場 / 予想営業増益率来期市場
<6967> / 新光電気工業 / 1,352 / +5.9% / +128.5% / +80.4%
<3635> / コーエーテクモホールディングス / 3,060 / +7.4% / +37.1% / +14.8%
<8035> / 東京エレクトロン / 22,075 / -0.0% / +13.2% / +20.1%
<6857> / アドバンテスト / 5,160 / +3.5% / +8.1% / +21.1%
<4307> / 野村総合研究所 / 2,525 / -3.0% / +4.5% / +5.5%
<6754> / アンリツ / 2,187 / +3.2% / +3.6% / +13.9%
<9062> / 日本通運 / 4,770 / -6.1% / +2.2% / +13.1%
<9086> / 日立物流 / 2,561 / +3.6% / +0.3% / +4.5%

※各社公表データ等およびBloombergデータをもとにSBI証券が作成。日立物流が重視する「調整後営業利益」の増益率は上記の予想営業増益率の数字と異なっています。なお、スクリーニング条件をすべて満たしているものの、TOB成立で上場廃止予定の日立ハイテクは除外としています。騰落率は、決算発表日の前営業日から5/14(木)までの騰落率となっています。

掲載銘柄とその投資ポイント

世界経済は未曽有の景気悪化に陥る可能性が高まっています。米中通商摩擦を背景に、すでに世界中でモノの流れが滞り始めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、ヒトの流れも、ほぼ完全に止まってしまいました。新型コロナウイルスの感染を完全に抑え込めない限り、世界経済が元の姿を取り戻すことは難しいかもしれません。

2020年1~3月期は、世界で新型コロナウイルスの感染が拡大した時期と一致しますので、景気・企業業績は急速に悪化することになりました。このため、世界中の上場企業の多くがこの間、売上高や利益の減少に見舞われることになりました。3月決算企業で、前述のスクリーニング条件(6)を満たした銘柄は、そうした困難な時期を乗り切った銘柄が中心となっています。

なお、投資環境の変化があまりにも大き過ぎるため、多くの上場企業は合理的な業績予想を行うことができず、業績予想の公表を見送っています。このため、会社予想の業績予想数値を銘柄比較の材料にすることは難しいのが現状です。そこで、参考になるのがアナリストの業績予想になります。アナリスト予想は一般的に、会社予想数値に比べて確認することが難しいので、株価が織り込むのにその分、時間を要すると考えられます。そのことが、逆に投資チャンスにつながると考えられ、今回のスクリーニングでは重要な項目になっています。

最後に、表1に記載した銘柄の一部について投資ポイントをご紹介したいと思います。新光電気工業(6967・図1)は富士通(6702)系の半導体パッケージメーカーでインテル等が主要取引先になっています。同業者はイビデン(4062)で、広く半導体関連という括りでは、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857・図2)等の半導体製造装置関連メーカーと同様の分類です。

新型コロナウイルスの感染拡大で、売上が伸び悩む電子機器もあり、半導体もその分は逆風となります。しかし、動画需要の増加やテレビ会議システム等の普及でデータセンター等のサーバーについて負荷が高まり、半導体需要は増加傾向になっています。世界最大級の半導体メーカーであるインテルを顧客としている新光電気工業にも追い風が吹いています。なお、同社は業績予想の公表を見送っていますが、同業者のイビデンは今期37%の営業増益見通しとなっています。

コーエーテクモホールディングス(3635)は大手ゲームソフトメーカーの一角を占めています。この業界は、業績がヒットタイトルの有無に左右されるため、投資家にとって安定した成長イメージを描きにくいという側面があります。しかし、2020年3月期までの過去10期において、営業減益は2013年3月期のみで、翌期以降は7期連続の営業増益となっています。コンピュータゲームそのものが、巣ごもり消費に向いている部分もあり、今期の予想営業利益は11%程度の増益というのが市場コンセンサスになっています。

図1 新光電気工業(6967)・日足

新光電気工業(6967)・日足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

図2 アドバンテスト(6857)・日足

アドバンテスト(6857)・日足
(画像=当社チャートツールをもとにSBI証券が作成)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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