旺盛な消費行動は経済成長につながる。巨大な内需を誇る中国で、キャッシュレス化によって消費行動が一層活発化している。中国をさらに強くし、中国企業の成長も後押しするキャッシュレス化の進展により、中国に対する投資の有望性はさらに高まっている。

キャッシュレス
(画像=PIXTA)

キャッシュレス決済、中国は70.2%で世界第2位

一般社団法人「キャッシュレス推進協議会」が2020年6月に発表した資料によれば、世界の主要国におけるキャッシュレス決済の割合を比べたところ、2017年時点で中国は70.2%の第2位となっている。

日本の割合が21.4%であることを考えると、中国の数字がいかに高いかが分かる。ちなみに第1位は韓国で97.7%という別格の数字だが、中国はキャッシュレス化では、カナダ(62.1%)やオーストラリア(59.9%)、イギリス(56.1%)などよりも上位だ。

<世界主要国におけるキャッシュレス決済状況(2017 年)>

1位:韓国(97.7%)
2位:中国(70.2%)
3位:カナダ(62.1%)
4位:オーストラリア(59.9%)
5位:イギリス(56.1%)
6位:シンガポール(53.3%)
7位:スウェーデン(47.4%)
8位:アメリカ(45.5%)
9位:フランス(42.7%)
10位:日本(21.4%)

※出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会

中国でキャッシュレス化が進んだ理由は?

なぜ中国でキャッシュレス化がここまで進んでいるのだろうか。その要因としては、中国の中央銀行である中国人民銀行が「銀聯(ぎんれん)カード」を発行したことや、高額紙幣がないこと、偽札の問題があったことなどが挙げられる。

中国では2002年、政府主導で中国人民銀行が中心となり、銀行間決済ネットワーク運営会社として「中国銀聯」が設立された。中国銀聯が、さまざまな省や銀行における決済の一本化を目的に発行したのが銀聯カードで、発行枚数はすでに50億枚を超えるといわれている。

また日本の1万円札に相当するような高額紙幣が中国に無いことも、キャッシュレス化を後押ししたとされる。高額紙幣がないということは、それだけ持ち歩く紙幣の量が増えるということだ。さらに偽札問題もあり、現金をやり取りするよりキャッシュレス決済のほうが安全だと多くの人が感じたことも、キャッシュレス決済の普及につながった。

中国人民銀行は2014年ごろから「デジタル通貨」の研究にも着手しており、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深センに研究所を設立し、発行に向けて動いている。最近では、デジタル人民元のテスト運用のためにデジタルウォレットを12万個開設したことが話題になった。

圧倒的な支持を得ているのが「QRコード決済」

そんな中国において、いま圧倒的な支持を得ているキャッシュレス手段が「QRコード決済」だ。中国では多くの店舗に決済のためのQRコードがシールで貼られている。このQRコードをアプリで読み取ることで、簡単に決済ができる仕組みだ。

QRコード決済の普及の背景には、中国国内においてスマートフォンの普及が早かったことや、アリババの「Alipay」やテンセントの「WeChat Pay」のユーザーが急速に増えたことなどが大きい。AlipayもWeChat Payも中国で開設した銀行口座と紐づけ、使用する形だ。

最近では、QRコード決済をさらに便利にさせようという動きもある。それはQRコードの統一だ。2020年1月に、テンセントと中国銀聯のモバイル決済におけるQRコードが統一されることについての報道があった。QRコードの種類が減れば、店舗側も利用者側もよりシンプルにQRコード決済を利用できるようになる。

外国人も中国国内でより簡単にキャッシュレス決済ができるようになりつつある。Alipayは2019年11月から、アプリで外国人旅行客向けの新たな機能の提供を開始した。Alipayが利用可能な店舗であれば、外国人でもキャッシュレス決済ができるようになった。

新型コロナウイルスの影響で、現在は中国を訪れる外国人旅行者による消費は期待ができないが、コロナ禍が収束した後はこういった仕組みが最大限生かされ、旅行者の消費がより活発となることが予想される。

イノベーションに対する貪欲さが中国をさらに強くする

国家主導で最新テクノロジーや先端的なサービスの導入がいち早く進む傾向にある中国。キャッシュレス化はまさにその典型例と言える。

新技術の導入という点で言えば、自動運転の実証実験の実施状況などを見ても、欧米や日本に比べて進んでいる印象を受ける。すでに公道での実証実験も各地で始まっており、自動運転タクシーのサービス実証も盛んに行われている。

こうしたイノベーションに対する貪欲さが、今後も中国をさらに強くしていくことが予想される。そしてもちろん、中国で事業を展開する企業の成長性も期待できる。こうしたことを考えると、いまが中国市場への投資の好機だと言えるだろう。

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