FXの取引を始めるにあたり、まず必要なのが口座開設だ。口座開設の手続きは、基本的にはどのFX会社も同じようなステップを踏むことになるが、審査は必ず行われる。
ただFX会社は、審査内容や審査基準を公表していない。しかし公開されている口座開設基準からおおよその審査内容の見当をつけることはできる。この記事では、口座開設基準をもとに審査基準を推測し対策方法を紹介する。
FXの口座開設の審査とは何か?
FXを始める場合、証拠金(取引をするための資金)を入金する口座をFX会社で開くことが必要になる。どのFX会社でも口座開設の申し込みをして実際に口座を開設するには「審査」を通過すしなければならない。審査では「申込者がFXの取引を行うのに適しているか」などをチェックされる。
FX口座開設の審査は基本的に自己申告
開設時の申し込みフォームに入力された内容と公的証明書によって審査が行われるが、基本的には自己申告だ。
FX口座開設の審査項目
・1.本人確認
個人の場合、口座開設の申し込みフォームなどに記入されている氏名・住所・生年月日を公的証明書で確認される。公的証明書は、マイナンバーカードや運転免許証、住民票の写しなどが相当する。
・2.口座開設基準
申し込みフォームに記入されている事項のうち口座開設基準に関わる項目が基準を満たしているか確認される。
FX口座開設の流れ
口座開設の申し込みから口座開設までの流れは、おおよそ以下の通りだ。
1.FX会社のホームページから申し込みフォームに必要事項を入力する
2.本人確認書類やマイナンバー記載書類のスマホ・PCでアップロードもしくは、郵送する
3.提出書類と申し込みフォームの記載内容をもとに審査が行われる
4.口座開設完了の通知・IDなどがメール、または郵送で通知される
5.FX会社のホームページからIDを使ってログインし初期設定を行う
6.証拠金を入金した後は、FX取引を開始する
7.証拠金の入金方法は、WEBから行う方法と銀行窓口やATMで行う方法がある
本人確認書類のアップロードをスマホで行うと最短で申し込んだ当日には口座を開設できる。
FXの口座開設の審査基準は公表している?
FX会社の多くは、審査基準を公表していないが「約款」などの中で口座開設基準を明記しておりホームページで見ることができる。ここでは、いくつかのFX会社で示されている「口座開設基準」をもとに主な審査基準を推察してみよう 。
口座開設基準をもとに推察される主な審査基準
1 | どの会社も年齢制限を設けており「下限は18歳または20歳、上限は80歳」としているところが多い傾向にある。18歳から口座を開設できる会社では、未成年の申込者に対して法定代理人(保護者など)の同意が必要になる。 |
2 | 「日本国内に居住していること」を条件としている会社が多い傾向にある。なかには、米国籍を持っている人は口座が開設できない会社もある。 |
3 | どの会社も「取引のためのネット環境が整っている」「申込者自身のメールアドレスを持っている」「FX会社と常時連絡を取れる」といったことを条件としている。 |
4 | どの会社も「証券会社や金融先物取引業者の従業員でないこと」を条件としている。 |
5 | どの会社も「反社会的勢力に該当していないこと」を条件としている。 |
6 | 金融資産については会社によって「具体的に最低金額を設定している場合」と「十分な資金を有することとしている場合」がある。 |
7 | どの会社も「個人情報を正確に提供すること」が条件だ。虚偽が分かった場合は、取引を停止することもある。 |
FXの口座開設で審査に落ちないためのポイントとは?
FXの口座開設で審査に落ちないようにするには、各FX会社の口座開設基準を確認しておくことが重要だ。年齢や職業など口座開設ができない条件が明確に示されている場合、その条件に該当してしまうと当然のことながら審査に落ちてしまう。
また、上記の主な審査基準に「個人 情報を正確に提供すること」とあるように住所や氏名が本人確認書類と一致していないと審査を通過することはできない。
さらにFX会社によっては、申し込みフォームに保有資産や予定投資額を記入する必要がある。実際の資産を調査されることはないが、正直に記載するべきだろう。口座開設の条件として保有資産に最低額を設けているFX会社もあるが、多くの会社では具体的な最低額を設定していない。このような会社の場合、審査では保有資産の多寡よりも保有資産と予定投資額のバランスを見ている可能性がある。
保有資産に対してギリギリの投資額を記入しないように注意した方が良いだろう。
FXの口座開設で審査に落ちた際の解決策は?
口座開設基準は、FX会社によって細かい点が異なる。そのため「A社の基準では審査に通るがB社の基準では通らない」といった可能性もある。そのため、1社の審査で落ちても別の会社で口座開設の申し込みをするとよいだろう。なお、審査に落ちた場合、その理由について会社から示されることはない。
最初から複数社でFX口座を開設するという選択肢も?
口座の開設にあたって費用は発生しないため、最初から複数の会社で口座開設を申し込むという選択肢もある。申し込み方法や必要な書類は、どのFX会社もほぼ同じなため、同時に申し込んだほうが効率的だ。複数社で口座を開設できたら取引ツールの使い勝手などを比較しながら自分に合ったFX会社を見つければよいだろう。
FXの口座開設で審査すると勤務先にバレる?
「審査」というとカードローンのように「勤務先へ身元照会があるのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし、勤務先にバレる可能性は非常に低いと考えられる。なぜなら多くのFX会社では、口座開設の申し込みフォームに「会社員」「公務員」「自営業」など選択する傾向で具体的に勤務先を書く欄がないことが多いからだ。
なかには勤務先名称の記入欄があるFX会社もあるが、 電話番号や住所は記入しないため、審査の過程で照会をする可能性はほぼないといえるだろう。
FXの口座開設になぜ審査が必要なのか?
審査の目的は、本人確認に加え各FX会社で設けている口座開設基準を申込者が満たしているかチェックすることにある。口座開設の際に本人確認が必要となるのは「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」で義務付けられているからだ。犯罪収益移転防止法は、金融機関などがテロ資金供与やマネー・ローンダリングなどに利用されることを防止し国民生活の安全を確保するためのものだ。
先述した口座開設基準でも「反社会的勢力に該当していないこと」が口座開設の条件とされているが、これも犯罪収益移転防止法に沿った条件の一つとなる。また所有資産額を基準項目に設けている会社は、申込者が取引の中で損失を出した際、「追加で証拠金を支払う能力があるか見極めたい」と考えている可能性もあるだろう。
なぜなら申込者が損失を補てんできないとFX会社が被害をこうむるリスクがあるからだ。
FXの口座開設審査にかかる日数は?
FXの口座開設の際にスマホの本人確認を利用することで早ければその日のうちに口座開設が完了する会社もある。そのため審査そのものには何時間もかからない可能性が高いだろう。申し込みフォームの記載内容が口座開設基準を満たしているか確認し、本人確認書類と照合する作業を行っていると考えられる。
万が一本人確認書類と申し込みフォームの記載内容が一致しない場合は、FX会社から連絡が来ることもあり、その場合は再申し込みとなるため、通常よりも時間がかかることになる。
審査に落ちても諦めず申し込みを
上述したように口座開設の審査は、各FX会社で共通する基準がある一方、それぞれの会社によって異なる点もある。仮に一つの会社で審査に落ちたとしても別の会社で審査に通る可能性は十分にあるため、諦めずにいくつかの会社で申し込みをしてみるとよいだろう。
FX口座開設Q&A
最後に、FXの口座開設にあたり多くの人が疑問に思うことをQ&A方式で紹介する。
Q.口座開設の申し込みで本人確認書類を郵送することもできるのか?
A.FX会社によって本人確認書類の郵送を受け付けているところと、受け付けていないところがある。各FX会社のホームページで確認するべきだろう。
Q.申し込みフォームにマンションの部屋番号を登録したいが、本人確認書類には部屋番号の記載がない。どうすべきか?
A.本人確認書類に加えて部屋番号の記載がある公共料金など「領収書の写し」の提出を求められる可能性がある。ただし領収書の名義が申込者本人ではなく家族である場合、関係性を証明するために住民票も提出することが必要だ。申し込み時にFX会社に問い合わせると良いだろう。
Q.本人確認書類として使える公的証明書は、具体的にどのようなものがあるか?
A.マイナンバーカードや運転免許証、パスポート、健康保険証、年金手帳、印鑑登録証明書、住民票の写しなどが該当する。顔写真付きではない書類の場合、複数の書類を提出することが必要となる。各FX会社のホームページで確認すべきだろう。
Q.通称やペンネームなどで口座を開設することはできるか?
A.本人確認書類以外の名前で口座を開設することはできない。また本人確認書類とは異なる家族の名前を使って口座を開設することもできない。
Q.マイナンバー記載書類を提出するのはなぜか?
A.支払調書に利用者のマイナンバーを記載する必要があるため。 FX会社は、税務署に支払調書(利用者の取引損益などを記載した書類)を提出する義務がある。
Q.一つのFX会社で同一名義人が複数の口座をつくることはできるのか?
A.一つのFX会社で開設できる口座は、一人1口座のみとなっている。 注意しなければならないのが、過去にそのFX会社で口座を開設していたが口座を所有していることを忘れてしまっているケースだ。心当たりのある人は、過去に口座開設手続き完了のメールや書類がないか確認してみるとよいだろう。