本記事は、サイボウズチームワーク総研の著書『サイボウズ流 テレワークの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

サイボウズのテレワーク導入の経緯

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(画像=PIXTA)

私たちサイボウズも、テレワークをここまで普及させるまでには、さまざまな試行錯誤をしてきました。そこで、参考までに、サイボウズがどのようにテレワークを導入してきたか、経緯を紹介します。

サイボウズがテレワークを試験的に導入したのは、2010年8月です。

2005年、サイボウズでは離職率が28%にまで上がり、打開策を探るため、社員にヒアリングを続けていました。どのような環境であれば、社員一人ひとりが成長しながら長く働けるのか。そのような話を聞く中で、2010年子育て中の社員からテレワークができればもっと働きやすいという意見がありました。この声をきっかけにして、テレワーク導入への取り組みが始まったのです。

テレワーク導入にあたっては、社員からさまざまな懸念が挙がりました。成果の判断や勤務時間の管理、さらに、コミュニケーションコストの増加、情報漏洩のリスク、モラルの低下など、さまざまな不安や課題が山積みだったと言えます。そうした課題の解決を目指しながら、まずは試験的にテレワークを導入しました。

試験導入は、「マネージャーの承認を得れば、月4回までテレワークができる」というルールで、全社員を対象に始まりました。

●試験導入で見えてきた課題

2010年10月に、一旦試験導入の評価を行っています。この時点で、延べ27人が、実際にテレワークで働きました。

結果として、一部の業務に制限があったものの、総じて成果物の品質が下がることはありませんでした。このような結果もあり、その後も本導入に向けた試験運用を続けていくことになります。

一方、このときに行った社内アンケート調査から、コミュニケーションに関する課題も持ち上がりました。テレワークで働く人の状況をすぐに把握できないため、マネージャーがストレスを感じやすくなっていたのです。そこで、WEBカメラの貸出を検討したり、スケジュールの共有方法を統一したりと、コミュニケーション手段の見直しや整備を行いました。

また、当時は、テレワークで勤務を終えたら、勤務時間と業務内容を報告するルールにしていました。しかし、このルールが窮屈に感じるという意見が多く、見直しを迫られました。特に、すぐに成果が現れにくい仕事では、1日単位で業務内容を報告することが負担になっていたようです。そこから、勤怠管理や業務報告の方法も、模索していくことになります。

●震災を機にテレワークが本格化

以降も改善を繰り返し、2011年2月からいよいよ本導入が始まりました。

そんな中、2011年3月に東日本大震災が発生。交通機関の混乱や原発事故の発生を受け、サイボウズの東京オフィスでは、一時的に在宅勤務の原則化を決定します。

この頃、経理部では決算に向けた業務が行なわれていました。それまでは、テレワークでは難しいと考えられていた業務です。しかし、緊急事態のため、出来る限り在宅勤務で行わなければなりませんでした。

そこで、自宅から必要なシステムに接続して作業ができるように、情報システム部が対策を講じます。そのおかげで、元の予定通りに、決算業務を進めることができたのです。これまでテレワークではできないと思われていた業務が、実は全くの不可能ではないと、多くの社員が気づくきっかけとなりました。

このときから、テレワークが本格的に使われるようになっていきます。

●100人100通りの働き方へ

その後、2012年8月には、上司に申し出れば突発的にテレワークができる「ウルトラワーク制度」の運用を開始。さらに、長期的に生産性を維持・向上できる働き方を模索し、2014年3月、働きたい時間と場所を9分類の中から選ぶ「選択型人事制度」を採用しました。

この頃にも、引き続き社内アンケート調査を行っています。「制度をうまく活用して、生産性を上げられた」と好意的な声があった一方で、「制度を使っている人が、仕事をしているかわかりにくい」と不安を示す意見もあり、制度の改善を重ねていきました。

2018年4月以降、「選択型人事制度」を拡張して、100人100通りの働き方を認める「働き方宣言制度」を採用しています。これは、「午前中は常にテレワークをします」「水曜日はテレワークをします」などと、それぞれの希望する働き方をあらかじめ宣言する制度です。

各自のスケジュールをチームメンバーに共有して、基本的には、そのスケジュール通りに働きます。ただし、これまで通りマネージャーの承認を得れば、予定を変更して当日突発的にテレワークを行うことも認められています。

このように、試行錯誤をしながら、制度や環境を改善してきました。2007年に28%まであった離職率は、現在は4%にまで下がっています。

サイボウズ流 テレワークの教科書
サイボウズチームワーク総研
「チームワークあふれる『社会』を創る」を企業理念に掲げてきたサイボウズが、これまでに挑戦してきた制度・風土改革をはじめとするさまざまな取り組みに基づいた、メソッド開発・研修事業を行っています。研修セミナー、講演者派遣、コンサルティングサービスを通じて、事例を学び実践する場を提供することで、企業・組織の課題解決をお手伝いしています。

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