本記事は、サイボウズチームワーク総研の著書『サイボウズ流 テレワークの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
一対一のテレビ会議「ザツダン」
もう少しじっくりコミュニケーションを取りたい際には、チャットよりも、テレビ会議が適しています。
サイボウズでは、マネージャーとメンバーが一対一で対話をする「ザツダン」(1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングのようなもの)を行っています。ザツダンは、マネージャーとメンバーの一対一、もしくは一対複数で行うことが多いですが、チームメンバー同士や違う部門の相手同士で行うこともあります。
まず、ザツダンが生まれた背景から説明しましょう。
サイボウズはかつて離職率が非常に高く、2005年には28%に上りました。その状況を変えようと、副社長の山田が社員から率直な意見を引き出すために採った策が、一人ひとりと話をするザツダンでした。
当時100人ほどいた社員全員から話を聞き、その結果、社員それぞれの状況や、社内で起きている問題をよく把握できたといいます。これを機に、業務のこと、家族のこと、心配事や悩みなどを、ざっくばらんに話す機会が大事だとわかり、それ以来、ザツダンが続けられてきました。
テレワークでも、テレビ会議を活用することで、定期的なザツダンの時間を設けています。
とりわけ、マネージャーとチームメンバーのザツダンは、マネージャーがメンバーの状況や、チーム内の雰囲気を知るために効果的方法です。
あるチームでは、マネージャーとメンバーのザツダンは、事前に日程を決めておいて、週に1回、30分間、定期的に実施しています。
一般的な1on1ミーティングがメンバーに成長を促すためのものであるのに対し、ザツダンの最大の目的は、コミュニケーションの量を増やすことです。それで、メンバーが抱えているわだかまりやモチベーションを聞き出し、それぞれの個性などをマネージャーが把握できれば、なお良いと考えています。
そのため、ザツダンで話す内容は業務報告や進捗報告ではありません。家族のことでも仕事の悩みでも、できるだけ自由に語り合えると望ましいです。
マネージャーが時間を割いて話をするとなると、メンバーは「面談のように評価されたり注意されたりするのではないか」と身構えてしまい、リラックスして話せないかもしれません。
ザツダンは何でも話していい場だという認識を根付かせるために、ザツダンの目的を共有して根気よく続けましょう。
とはいえ、いきなり何でも話すというのも難しいかもしれません。そこで、ザツダンをやりやすくするために、サイボウズが実践している工夫を紹介します。
1つは、ザツダンの時間の前に、あらかじめ簡単なアンケートに回答するという方法です。例えば、最近の気分やモチベーションを、1~10までの数字や、「絶好調」「普通」「いまいち」「助けて!」のような4段階などで表します。その回答をとっかかりにして会話を始めます。
他にも、事前に話したい話題を簡単に伝え合っておくと、滞りなくザツダンができます。今日のザツダンは業務寄りの話題か、プライベート寄りの話題か、心の準備ができるため話を始めやすいです。
●社内の誰とでも「ザツダン」
マネージャーとのザツダンが馴染んできたら、チームメンバー同士や部門を跨いだザツダンもやってみましょう。
マネージャーとのザツダンとは違い、定期的にやる必要はありません。話したい人同士で日程調整をして、テレビ会議を使って会話します。一緒にランチを食べながら、ラフな会話をするような感覚に近いかもしれません。
はじめは、よく知らない他部門の人に急に「ザツダンしましょう」と誘うのは難しいかもしれません。まずは、仲の良いメンバー同士から始めることになると思います。徐々にチームをまたいでザツダンをできるようになり、社内コミュニケーションの輪が広がっていくのが理想です。
サイボウズでも、ザツダンの実施を始めたばかりの頃は、多くの社員が戸惑いました。しかし今ではザツダンが定着し、会社の風土を作っています。縦の関係でも横の関係でも、頻繁にザツダンを行うようになりました。
特に、コロナ禍でテレワークが増えてからは、業務時間内のザツダンの実施頻度が増えているように感じます。最近は、一対一ではないものの、誰でも自由に入れるザツダン用のテレビ会議が常設されているくらいです。
テレビ会議でのザツダンを一度根付かせることができれば、テレワークでのコミュニケーションは各段に向上すると思います。テレビ会議を活用してコミュニケーション量を増やし、チームワークを育てましょう。
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