本記事は、Hamish McKenzie氏(著)、松本剛史氏(訳)の著書『INSANE MODE インセイン・モード イーロン・マスクが起こした100年に一度のゲームチェンジ』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の中から一部を抜粋・編集しています

イーロン・マスクがテスラやスペースXを作った理由とは

持続可能エネルギー
(画像=みのすけ/PIXTA)

マスクは自分の会社を、事業というだけにとどまらず、倫理的なミッションも帯びた企業と位置づけている。彼がテスラやスペースXを作ったのは金儲けのためではなく、世界にはこうした会社が必要だと思ったからだという。もしいま持続可能なエネルギーに切り替えずにいたら、地球上に住む人々の未来はどうなるのか。もし電気自動車がなければ、気候変動がもたらす危難は想像を超えたものになるだろう。

火星に植民をするという彼の目標は、少なからず倫理的な衝動に衝つき動かされてもいる。気候変動の激化から人工知能の暴走まで、何かしら破滅的な事態が起これば、私たちはみんな住む場所を失う。「人間が別の惑星に向かうことには、強力なヒューマニズム的論拠があると思う」とマスクは語っている。「なんらかの破局が訪れた場合でも、人類が生存を続けられるようにするための手段なんだ」

マスクが自分の会社をどれだけ深い、個人としてのレベルで大事にしているかが、2014年にロンドンのテスラストアで行われたインタビューからうかがえる。リポーターから、あなたは会社への批判にとても敏感に反応するがと聞かれて、マスクはその経験を、わが子に不当な汚名を着せられた親の気持ちになぞらえてみせた。「まっとうな批判は、たしかに受け入れるべきだ。でも自分が大事にしているものがまちがった批判にさらされるのは受け入れられない」

彼自身の仕事に対する考え方と、電気自動車の未来を守ろうとする決意に導かれて、マスクは、侮辱とおぼしきものには必ず激烈な反応を示すようになった。

INSANE MODE インセイン・モード イーロン・マスクが起こした100年に一度のゲームチェンジ
Hamish McKenzie(ヘイミッシュ・マッケンジー)
"PandoDaily"、"The Guardian"などに寄稿するテクノロジー及び社会問題専門のジャーナリスト。イーロン・マスク取材時にその手腕を評価され、テスラに入社する。退職後本書を上梓。出版スタートアップ企業Substack の共同創業者。
松本剛史(まつもと・つよし)
東京大学文学部社会学科卒業。翻訳家。主な訳書にフォード『ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日』ダイヤー『米中 世紀の競争 アメリカは中国の挑戦に打ち勝てるか』(以上、日本経済新聞出版社)、ミエヴィル『オクトーバー 物語ロシア革命』(筑摩書房)、ストレッチャー『目的の力 幸せに死ぬための「生き甲斐」の科学』(ハーパーコリンズ・ジャパン)など。

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