本記事は、藤原正明氏の著書『収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
どんな種類の物件がベストなのか?
住居系不動産は収益が安定しているとはいえ、どのような種類でも構わないわけではありません。さまざまな種類があり、大別すると次の通りです。
・新築区分(ワンルーム)マンション ・中古区分(ワンルーム)マンション ・新築一棟アパート ・新築一棟マンション ・中古一棟アパート ・中古一棟マンション
アパートとマンションの違いは、前者はコンパクトな2~3階建ての木造・軽量鉄骨造の建物で、後者は鉄骨造や鉄筋コンクリート造の大きな建物かということです。
結論から申し上げると、当社がお勧めしているのは、新築もしくは中古の一棟アパート・マンションです。「大和財託は一棟物件専門だから」という声もありそうですが、当社は宅地建物取引業の免許を持っていますから、どのような物件も扱うことができます。それにもかかわらず区分の物件を販売しないのは、お客様があまりにも儲けにくいからです。
物件タイプそれぞれのメリット・デメリットを図表19にまとめました。
新築区分ワンルームマンションは手軽に始めやすく、信販系ローンで年収の高くない方でも融資が受けやすく取り組みやすいのが特徴です。「一棟物件より価格が手ごろでリスクが抑えられる。節税にもなる。生命保険・がん保険もついてくる」といったセールストークは常套句といえます。
ところが、節税を受けられるのは初年度のみで、融資を使って買った場合は、毎月1万円以上の持ち出し(手出し)になります。各人が借りられる融資の枠には限度がありますので、いずれ資金を借りるのにも限界が訪れます。
新築区分ワンルームマンションはそもそもの購入金額が割高のケースが多く、築年数の経過により物件購入価格と比べれば市場価格の下落は大きく、担保価値が低く借入がある場合はマイナスの評価になります。区分ワンルームマンションの1室を持ち、賃貸管理を専門の管理会社に任せるだけでは、金融機関からみれば賃貸経営の実績としても評価されず、仮に2戸目、3戸目と物件が増えようにも、いずれ手詰まりを迎えます。
建物の築年数が経過すると賃料は下がっていきますので、毎月の手出し金額は増えてきます。手出し金額の大きさに耐えきれなくなり、売却しようにも売却金額は借入残高から大幅に低い金額でしか査定されないため、売るに売れない状況になります。投資を終わらせるためには、追加で自分のお金を投下して借入金額の全額を返済しなければならないという、罰ゲームのような状況に陥るのが新築区分ワンルームマンション投資なのです。
新築区分ワンルームマンションを販売する会社の提案では、30年、40年と保有し借入金額を全額返済すれば、無借金の状態で現物資産が手に入り、将来の私的年金代わりになるというセールストークですが、その間には多額の手出しを毎月しなければならず、築年数が経過すれば室内設備の改修などにもお金がかかるので、資産が手に入る、私的年金になるというのは甚だ疑問です。
中古区分ワンルームマンションはどうでしょうか。新築区分ワンルームマンションに比べ利回りが高く、物件の流通量は多いので選びやすく、立地のよい物件も多くあり、入居付けは比較的容易です。
ところが、現金で購入するならよいのですが、物件購入金額の多くを融資利用にて購入した場合は、毎月の手取りはわずかです。
また、管理費や修繕積立金などの支払いがあるため経費率が高く、将来の大規模修繕リスクに備える必要があり、どうしてもコスト高になってしまいます。昨今は修繕積立金が不足するマンションが多く出てきており、万が一不足すると追加で修繕積立一時金の請求をされる場合もあります。
新築区分ワンルームマンションと同じように担保価値が低く、個人の信用をもとにした融資枠を使うので物件の追加購入は限界があります。年収700万円の会社員の場合、3戸くらいまでは増やせますがそれ以上の融資は望めません。空室が1戸でもでれば売上は3分の1減りますから、経営的に脆いといわれても仕方がないでしょう。
新築区分ワンルームマンションは手出しが毎月発生するので、それよりは収益性は見込めますが、年間数万円のキャッシュフローでは、将来の経済的不安を払しょくすることはできません。キャッシュフローが薄いため、空室が出れば手出しが発生するなか、30年、40年保有し続けるのも精神的にも大変だと考えます。めでたく借入金額を全額返済できた時に残るのは、築50年、60年の築古ワンルームマンションです。室内の修繕費用や大規模修繕費用などがさらに掛かることが想定されるため、果たしてそれはお金をもたらす資産といえるのでしょうか。
昨今融資の環境は変わりつつあり、既存物件の借入を見ないで新たに融資をする金融機関も出てきました。ですが、少なくとも既存物件のキャッシュフロー・収支が回っているかどうかはチェックされるので、回っていないと融資を受けられなくなる可能性が高くなります。その状態で融資の可能性がまだあるのは、マイナスを上回る年収や金融資産がある方のみです。年収1,000万円くらいの会社員の方だと、すでに買ってしまった新築・中古区分ワンルームマンションが足を引っ張る可能性があります。
次に新築一棟のアパート・マンションを考えます。竣工当初は賃料を高く設定することができ、競争力のある間取りと最新設備があれば入居付けは、かなり有利です。当面は大規模修繕などの費用はかかりません。一棟で複数戸を所有するので経営は安定しやすく、また融資が長期間で組みやすいのは新築一棟の強みです。土地付きの物件となるため建物が古くなっても土地資産は残ります。言い方を変えれば、建物が古くなっても土地の価値以下に下がることはないということです。
デメリットとして、物件によっては新築時に賃料が高くとれる新築プレミアムが付く場合があり、その状態はいわばボーナスタイムみたいなものでメリットなのですが、一定の年数が経過し一度退去が出ると新築時と同じ賃料では入居者が決まらない事態が起こり、賃料が下落します。新築プレミアム賃料での利回りからは数年で大きく下落する可能性があるので、物件購入時には相場賃料などをよく調べておく必要があります。また新築物件は単年あたりの減価償却費が少なく、税金対策には不向きで納税金額が多くなってしまう場合があります。
また、新築一棟物件ならではのトラップがあります。利回りのごまかしがなされているケースがあるので、注意が必要なのです。
建物の建築費は、建築費用にあたる「本体工事」と、電気やガス、給排水、エレベーターなどの設備費用である「付帯工事」に分けられます。一般的に建築費というと本体工事費のみをさすので、付帯工事を考慮しないで利回りを計算し、間違った利回り計算をもとに投資水準をクリアしているから問題ないと、早合点する人もいます。付帯工事費も加味して算出しないといけません。
土地を自ら見つけて建設会社に直接発注して新築一棟物件への投資にチャレンジする方も一定数いらっしゃいます。うまくいけば、よい利回りの物件が手に入ったり、短期売却でキャピタルゲインを得られる期待値があるようですが、建設会社の与信管理をしっかりしないと大変なことになります。大手ハウスメーカーなどは倒産リスクはまずないのですが、建築費用が高く利回りも低くなるので手間暇をかけてやる意味がなくなります。かといって、利回りを求めて建築費用が安い工務店に頼むと信用リスクを負うことになり、工事が止まったり工事途中で倒産したりということが頻繁に起こっています。
昨今、東京都内で土地から新築一棟RC造を建てる投資が一部で流行っているようですが、こういったリスクを理解せずに安易に取り組む方が散見されます。やっていることは不動産投資というより不動産会社と同じことなので事業となり、不動産投資のリスク以上に事業リスクは高いのです。中小企業や個人事業がよく事業撤退、倒産するのはそれだけ事業というのは難しく、リスクが高いということです。事業リスクを理解のうえ、取り組まなければ、思わぬ落とし穴にはまってしまい再起不能になることを理解しておかなければなりません。
中古一棟のアパート・マンションは新築一棟のような新築プレミアム賃料にはなっていないので、一般的には賃料の下落が少ないのがメリットです(長期入居者がいる物件は退去により賃料が下がる可能性はあります)。単年の減価償却費が高く取れるので節税効果が高く、新築一棟と同じく複数戸を保有できるので経営の安定性や土地の資産性が期待できます。
一方、中古なので、突発的な修繕が発生したり、一棟物件では建物すべてが所有者のものですので一定周期での大規模修繕が必要なため、修繕リスクは避けられません。中古物件は金融機関によっては長期にわたる融資が組めないこともあります。
このように、一棟物件にも良し悪しがあることは事実です。それでもデメリットを補い有り余るメリットが期待できるので、当社としては新築と中古の一棟物件を投資家の方々にお勧めしています。
一般的にキャッシュフローを狙うなら中古の大型物件や新築の木造物件がよく、節税目的なら中古の木造・軽量鉄骨造の物件にするなど、投資される方の目的によって購入対象物件が異なってきます。
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