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連続増配銘柄の投資資産への組み入れは、資産を安定的に成長させるために、有効な方法の1つといえます。そこで、本記事では連続増配銘柄の基本事項および、具体的な銘柄の紹介をします。連続増配銘柄に投資する際のポイントも、併せてみていきましょう。
連続増配銘柄の基本事項を確認しよう
連続増配銘柄とは、配当金を増額し続けている銘柄のことです。連続増配銘柄について考えるにはまず、株式投資の仕組みや基本事項を知っておく必要があります。
そもそも、株式投資とは
株式投資は、株式を投資対象とする投資方法です。株式は、事業に必要な資金を調達するために企業が発行します。株式が発行されるケースの一例は以下の通りです。
- 新たに事業をスタートする
- 事業を拡大する
資金が必要になった企業は、株式を発行し出資者を募ります。そして、株式を購入し企業に出資した人が株主となります。株主が株式保有中得られる利益は以下の2つです。
- 配当金
- 株主優待
配当金は、企業活動により得られた利益を、保有口数に応じて株主に還元するものです。配当金額や配当頻度は企業により異なります。株主優待とは、一定以上の株式を保有している株主に対して、商品やサービス・クーポンなどを進呈する日本企業独特の制度です。
また、購入時よりも高い価格で株式を売却した場合には、売却益を得ることもできます。ただし、購入時よりも低い価格で売却した際には、売却損が出る可能性がある点には注意が必要です。
そのほか、株主は企業への出資者の1人として、表1の権利を持ちます。
表1.株主が企業に対して保有する権利
権利 | 権利の詳細 |
議決権 | 株主総会での発言や重要な決議への投票など、会社の経営に参加する権利 |
余剰金配当請求権 | 持っている株数に応じて、配当金などを受け取る権利 |
残余財産分配請求権 | 会社が解散した時に残った財産の分配を受け取る権利 |
このように、株主になると出資者として企業の経営に関わったり、利益の分配を受けることができるのです。つまり、株式投資は配当や株主優待・売却益を得るだけでなく、出資者として企業経営に関われる投資方法だといえます。
連続増配銘柄とは
連続増配銘柄とは、配当金額を増やし続けている企業の株式です。特に、25年以上増配を続けている銘柄を「配当貴族」、50年以上増配している銘柄を「配当王」といいます。
連続増配銘柄における増配額の規定はありません。毎回大きな額を増配していると、増配し続けることが難しくなる可能性もあるため、増配額は少額ずつになるケースもあります。
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日本の連続増配銘柄は希少?高配当株とどう違う?
日本における連続増配銘柄はそれほど多くありません。確認していきましょう。まずは上場会社の総数です。2020年4月24日における上場会社数は表2の通りです。
表2.上場会社数・上場株式数
市場 | 会社数 |
上場第一部 | 2,169 |
上場第二部 | 482 |
マザーズ | 325 |
JASDAQ(ジャスダック)スタンダード | 665 |
JASDAQグロース | 37 |
Tokyo Pro Market(東京プロマーケット) |
33 |
合計 | 3,711 |
このように、日本の市場には3,711の会社が上場しています。では、そのうち連続増配銘柄はどのくらいあるのでしょう。
配当貴族銘柄は花王1社
日本の銘柄において配当王はありません。また、配当貴族銘柄は花王1社のみです。花王は、2019年度の配当で30期連続の増配を達成しました。1988年からスタートした花王の連続増配の一部を、表3に紹介します。
表3.花王の連続増配実績(一部)
年 | 1989 | 1994 | 1999 | 2004 | 2009 | 2014 | 2019 |
配当額(円) | 7.1 | 11.5 | 20 | 38 | 57 | 70 | 130 |
花王によると、2020年の配当金予想は140円です。増配がスタートしてから30年で、花王の配当金は20倍近くに増えたことになります。このように、連続増配銘柄は毎年の増配額は大きくなかったとしても、長く続けることで最終的に大きな配当額となるのです。
連続増配銘柄と高配当銘柄の違いとは
配当に着目した銘柄の呼び方には、連続増配銘柄のほかに「高配当銘柄」があります。高配当銘柄とは、配当利回りが高い銘柄です。高配当銘柄は、あくまでも配当利回りの高さがポイントとなるため、配当の継続性は重視されません。連続増配銘柄と高配当銘柄の特徴を以下にまとめます。
- 連続増配銘柄:増配が継続されているか
- 高配当銘柄:配当利回りが高いか
つまり、一時的にでも高い収益を上げ、高い配当が出ていれば高配当銘柄となるのです。短期的にまとまった利益を得たい投資家は、高配当株への投資が向いているといえます。一方、配当利回りが高いとは限らなくても、安定的に配当を出し続けているのが、連続増配銘柄です。長期運用による、継続的な資産の増加を目指す投資家は、連続増配銘柄を組み入れるとよいでしょう。
・配当利回りについて
配当利回りとは、購入した株価に対し、1年間でどのくらいの配当を得られるかを示した数値です。配当利回りは、以下の式で計算します。
・配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入金額×100
例えば、株価が1,000円の株式の年間配当金額が200円の銘柄の配当利回りは、20%(200円÷1,000円×100)と計算できます。なお、JPX(ジェイ・ピー・エックス:日本取引所グループ)が発表する2020年3月の上場企業における平均利回りは、表4の通りです。
表4.2020年3月の平均利回り
第一部 | 第二部 | |||
単純平均利回り | 加重平均利回り | 単純平均利回り | 加重平均利回り | |
利回り(%) | 2.42 | 2.77 | 2.47 | 2.02 |
・高配当銘柄の配当利回りはどのくらい?
どのくらいの配当利回りの銘柄を高配当銘柄というか、といった明確な決まりはありません。表4で紹介した平均利回りを考えると、3%以上の利回りがあれば高配当銘柄といえるでしょう。
連続増配銘柄は、なぜアメリカに多く日本には少ないのか
日本に比べアメリカには、連続増配銘柄が多くあります。では、アメリカと日本で連続増配銘柄の数に違いがあるのは、どのような理由からでしょう。アメリカにおける連続増配銘柄の現状と併せて確認します。
アメリカにおける連続増配銘柄の現状
アメリカは、配当王銘柄だけでも25銘柄以上、配当貴族銘柄も50銘柄以上あります。連続増配銘柄の一例は表5の通りです。
表5.アメリカにおける連続増配銘柄一例
会社名 | セクター | 連続増配年数(年) |
P&G(ピー・アンド・ジー) | 生活必需品 | 63 |
3M(スリーエム) | 資本財 | 61 |
コカ・コーラ | 生活必需品 | 58 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | ヘルスケア | 57 |
ウォルマート | 生活必需品 | 45 |
マクドナルド | 一般消費財 | 44 |
エクソンモービル | エネルギー | 37 |
AT&T(エイ・ティ・アンド・ティ) | 電気通信 | 36 |
このように、アメリカでは生活必需品やエネルギー・通信といった、人の生活に欠かせない企業が連続増配を続けています。上記のほかにも、エネルギーを扱うシェブロンや、生活必需品を取り扱うペプシコなども、連続増配銘柄となっています。
日米で株主還元の性格の違いがある?
日本とアメリカで、これほど連続増配銘柄の数に違いがあるのは、株主還元に対する意識の違いがあるといわれています。日本において会社は、従業員のものと考える人が多く、配当などの株主還元は積極的に行われないこともあります。企業活動で得た利益は、今後の不測の事態に備える資金もしくは、今後の事業拡大に投資する資金として、内部留保とされることが多いのです。
一方、アメリカでは会社は出資した株主のものと考えられるため、株主還元が積極的に行われます。また、還元が少ない場合、会社に対し株主が意見することもあります。
日本とアメリカの企業における、配当性向を確認しよう
では、実際にアメリカと日本では株主還元にどのくらいの違いがあるのかを、配当性向で確認してみましょう。配当性向とは、株主還元がどのくらい行われているかを測る指標の1つです。配当性向の計算式は、以下の通りです。
・配当性向(100%)=1株当たりの配当額÷1株当たりの当期純利益(EPS:イー・ピー・エス)×100
・日本における配当性向
日本取引所グループが発表した2018年度決算短信集計によると、2017年および2018年の配当性向の平均は、表6の通りです。
表6.2017年および2018年の配当性向(平均:%)
業種 | 2017年 | 2018年 |
全産業 | 28.84 | 32.49 |
製造業 | 29.46 | 34.3 |
非製造業 | 28.01 | 30.22 |
金融業を含む全社 | 29.13 | 33.62 |
このように、日本における配当性向は、30%程度であることがわかります。
・アメリカにおける配当性向
アメリカの企業における配当性向はどのくらいなのでしょう。いくつかの企業を例に、表7に紹介します。
表7.アメリカ企業における配当性向の一例(2019年)
企業名 | 1株当たりの配当額(ドル) | 1株当たりの利益(ドル) | 配当性向(%) |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | 3.75 | 8.68 | 43.2 |
3M | 5.76 | 9.1 | 63.29 |
マクドナルド | 4.73 | 7.88 | 60.02 |
上記のように、アメリカでは、日本に比べて配当性向が高いことがわかりました。長年増配を続けている銘柄でも、日本より高い配当性向となっているのです。
日本でも連続増配銘柄が増加している
株主還元意識の低さが指摘されるようになり、日本でも近年、積極的に配当を行う企業が増えてきました。これにより、連続増配に取り組む企業も増えています。日本における配当貴族銘柄はまだ1社しかありませんが、10年以上増配を続ける企業が増えているのは、注目したい点です。
日本の連続増配銘柄は優良株ばかり
日本において連続増配を続けている銘柄には、どのようなものがあるのでしょう。また、連続増配銘柄は、優良銘柄といえるのでしょうか。ここからは、日本の連続増配銘柄を詳しく解説します。
日本の連続増配銘柄の具体例を紹介
日本の連続増配銘柄の一例は表8の通りです。
表8.日本における連続増配銘柄一例
企業名 | セクター | 連続増配年数(年) |
リコーリース | 金融 | 24 |
SPK(エス・ピー・ケー) | 卸売業 | 20 |
小林製薬 | ヘルスケア | 20 |
トランコム | 倉庫・運輸 | 19 |
KDDI(ケイ・ディ・ディ・アイ) | 情報・通信 | 17 |
日本での連続増配銘柄には、生活必需品や金融(リース)に携わる企業が多くあります。また、情報・通信を行う会社も連続増配している銘柄のひとつです。
連続増配銘柄に絞って投資するのは正解か?
連続増配銘柄は、安定した業績が期待できる銘柄のひとつです。では、投資資金のうち、どのくらいを連続増配銘柄に充てればよいでしょう。連続増配銘柄への投資金額を決定するには、メリットおよびデメリットを確認しておくことが大切です。
連続増配銘柄に投資する3つのメリット
連続増配銘柄に投資するメリットには、以下の3つがあります。
・メリット1:配当だけでなく売却益も狙える
連続増配銘柄の大きな魅力は、長期の増配実績があることです。つまり、連続増配銘柄に投資することで、今後も安定した配当の受け取りが期待できるでしょう。併せて、連続増配銘柄は、売却益も狙える点もポイントです。先述の通り、連続増配銘柄は、有事にも強いとされる銘柄が多くあります。よって、長期で保有することで株価が上昇し、売却益も得られる可能性があるのです。
・メリット2:配当利回りの上昇を図れる
連続増配銘柄を長期保有すれば、配当利回りが上がることによる運用効率の上昇が図れます。例えば、1株当たり1,000円で購入した株があったとしましょう。経過年数ごとの配当金の推移と配当利回りのシミュレーションを、表10に紹介します。
表9.配当利回りのシミュレーション
保有年数(年) | 配当金額(円) | 配当利回り(%) |
1 | 20 | 2(20円÷1,000円×100) |
5 | 25 | 2.5(25円÷1,000円×100) |
10 | 30 | 3(30円÷1,000円×100) |
このように、連続増配銘柄は長期で保有すればするほど、配当利回りを上げることができるのです。
・メリット3:株主還元意識が高い企業に投資できる
連続増配企業は、株主還元をしっかりと行う経営方針をとっています。株主還元意識が低い企業では、企業活動でいくら利益を出したとしても、配当として還元される金額には限りがあります。一方、株主還元意識が高い企業は、企業活動で得た利益から、一定割合がきちんと配当されることが期待できるのです。
連続増配銘柄への投資には、2つのデメリットも
連続増配銘柄に投資する際は、デメリットも知っておく必要があります。
・デメリット1:短期的な利益は狙いにくい
連続増配企業は、企業の安定的な成長と継続的な増配を目指しているため、短期的に大きな利益は上げにくいと考えられます。よって、連続増配銘柄に投資する際は、時間をかけた資産形成を目指すことが重要です。短期的な利益を狙いたい人は、高配当銘柄や短期的な株価の値上がりが狙える銘柄を選びましょう。
・デメリット2:減配や株価が値下がりするリスクも
連続増配銘柄だったとしても、今後も増配が続くという保障はありません。十分な配当実績がある企業だったとしても、何らかの理由により業績が悪化し、減配もしくは株価が著しく下がるリスクがある点は注意が必要です。
ただし、株価が下がったとしても、それまでに長期で配当を得ていた場合、値下がりによる損失を相殺できる可能性があります。仮に、配当利回りが3%の銘柄を10年保有し続けると、投資額の30%にあたる利益を得られます。10年後に株価が下落していたとしても、30%の下落までは損失を相殺できるのです。
いまから買える国内の連続増配銘柄
最後に、いまから買える国内の連続増配銘柄を紹介します。銘柄の比較は、2020年4月24日時点の配当利回りおよび配当性向・株価・最低購入金額などをもとに行います。
なお、先述の通り、配当性向は利益のうちどのくらいを配当として還元しているかを示す指標です。値が高いほど株主還元がされていると考えられる一方、配当性向が高すぎると配当を上げる余地がないとの見方もできるのです。ここでは配当性向の目安を、40%程度として考えます。
花王
表10.花王の基本情報
項目 |
詳細 |
株価 | 8,662円 |
最低購入口数 | 100株 |
最低購入金額 | 86万6,200円 |
配当利回り | 約1.5% |
配当性向 | 約42% |
花王は30期連続の増配実績があることはもちろん、化粧品や洗剤といった日用品を扱うため、今後も安定した業績が見込まれるでしょう。
ニトリホールディングス
表11.ニトリホールディングスの基本情報
項目 | 詳細 |
株価 | 1万6,535円 |
最低購入口数 | 100株 |
最低購入金額 | 165万3,500円 |
配当利回り | 約0.58% |
配当性向 | 約16% |
ニトリホールディングスは、17期連続の増配銘柄です。ニトリでは、家具のほかに掃除用品や寝具などの生活用品も多く取り扱っています。リフォーム事業も行っており、これからも成長が見込まれると考えます。
シスメックス
表12.シスメックスの基本情報
項目 | 詳細 |
株価 | 7,355円 |
最低購入口数 | 100株 |
最低購入金額 | 73万5,500円 |
配当利回り | 約0.95% |
配当性向 | 約35.1% |
シスメックスは、18期連続で増配を行う、ヘルスケアや検体検査を行う企業です。シスメックスは、新たな医療技術や検査の発展により、人々の生活を守ることを目指しています。今後は、高齢化社会が進んだり、新興国での医療体制の整備が求められたりすることにより、さらに業績を伸ばしていけるのではないでしょうか。
連続増配銘柄に着目し、優良株への投資を狙おう
連続増配銘柄は、配当を増やし続けている銘柄です。連続増配をしている企業は、安定して利益を上げ続けているだけでなく、株主還元意識が高いといえるでしょう。連続増配銘柄の多くは、生活に必要な製品やサービスを提供する企業です。そのため、製品やサービスへの需要が突然なくなることは考えにくく、今後も安定した成長が期待できると考えられます。連続増配銘柄に投資をすることで、長期的に安定した資産運用を目指していきましょう。
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