本記事は、ポール・エステス氏(著)、和田美樹氏(訳)の著書『GIG MINDSET ギグ・マインドセット 副業時代の人材活用』(アルク)の中から一部を抜粋・編集しています

ディスラプション

変化
(画像=stoatphoto/PIXTA)

「方向転換をしなければ、その方角のどこかにたどり着くまでだ」 ──老子

ギグエコノミーは、いきなり世界を変えた。確立されたモデルを破壊し、古いビジネスのやり方をひっくり返した。『メリアム・ウェブスター辞典』は、「ギグエコノミー」を「企業が恒常的にフリーランサーや非正規労働者を短期契約で起用する自由市場システム」と定義している。前の世代の人々は、一度仕事を見つけると何十年も勤続したが、現代では多くの労働者が職を転々とし、単発で請け負う「サイドハッスル[副業]」で副収入を得ている。

初代のiPhoneが起こしたディスラプションを思い出してみよう。iPhoneが発売される前の週まで、携帯電話の機能といえば電話の送受信や簡単な計算、限られた留守電機能くらいだった。カーナビは別の端末だったし、他のメディアはもちろん、音楽が入れられる携帯電話も少数だった。そんな中、これらのニーズとプラスアルファをカバーしてくれるポケット端末が、一夜にして登場したのだ。

今では当たり前となってしまったが、「ポケットにインターネット」がすべてを変えた。手のひらで無限の情報にアクセスし、文字どおり何百万種類のアプリが使えるようになった。ディスラプションとは、そういうことだ。ウーバーが公共交通機関の使い方を変えたのもディスラプション。アレクサが世界にAIアシスタントを紹介したのもディスラプションだ。これらのものは、われわれのノーマルを塗り替え、われわれのテクノロジーとのつき合い方を変えた。

ギグエコノミーも、古いシステムをよい意味で破壊している。ディスラプションは、ビジネスの自然の過程なのだ。われわれは今、未曽有の時代を生きているが、そこから恩恵を受けることは可能だ。最大の変化、そして課題の一つが、欲しいものが欲しいときに欲しいだけ、すぐ手に入るようになったことだ。映画が見たければ、瞬時に何万ものタイトルに手が届く。足が必要なら、5分以内にドライバーが現れる。

対象は食べものや商品だけではない。ギグエコノミーによって、エキスパートやサービスをも、必要なときに、必要なだけ、すぐ利用できるようになった。クラリティfmをはじめとするサイトは、ワンタッチで人々をさまざまな分野のエキスパートにつないでくれる。ファイバー(Fiverr)は、従業員を雇うコストの何分の一かで、オンラインアシスタントを利用できるプラットフォームだ。アップワークは、何百万人もの才能あるフリーランサーのネットワークで、そのスキルや職種は何百種類に及ぶ。こうした新しい企業がイノベーションを推進する一方、老舗企業もすばやく変化についてくるようになった。それについては後章でも説明する。

存続するには、また繁栄するにも、変化を受け入れる必要がある。しかし、「はじめに」で述べたとおり変化するのは難しい。なかなか思うようにいかない。それはよくわかる。僕が、地盤の変動を感じたときは、父の教えに反し、とっさにもがいて抵抗しようとした。それをしてしまうと、さらに古い習慣や経験に足を取られて深みにはまっていく。

そういうときにがむしゃらになり、週に80時間以上働いたりすれば、失業のリスクはある程度減るかもしれない。だが、それが負の前例をつくってしまい、やがてついていけなくなる。仮にその生産量を継続できたとしても、あなたはそれを望むだろうか?家族や友だち、趣味に使う余暇はどうなる?死に物狂いで働くよりも、働き方を刷新し、変える必要がある。ただ余計に働くのではなく、環境の変化に適応するようにすれば、必要な余暇をつくることができる。誰にも、時間があったらやろうと思いつつ手つかずになっているDIYなどがあるはずだ。自分の時間ができれば、着手できるだろう。

GIG MINDSET ギグ・マインドセット 副業時代の人材活用
ポール・エステス(Paul Estes)
20年にわたり、デル、アマゾン、マイクロソフトなどの巨大IT企業で活躍後、独立。現在は、世界トップレベルのフリーランス・ソフトウェアエンジニアのリモート派遣を行うトプタル社が運営する「Staffing.com」で編集長を務める。また、ギグエコノミーやフリーランサーを活用し躍進する企業の支援を行っている。ポッドキャスト番組「Gig Mindset」の元ホストでもある。
和田美樹(わだ・みき)
東京生まれ。1987年より米国在住。輸出入販売会社勤務を経て、幅広い分野の翻訳に従事する。主な訳書に『人生を大きく変える小さな行動習慣』(日本実業出版社)、『武器化する嘘』(パンローリング株式会社)、『カスタマイズ【特注】をビジネスにする戦略』(CCCメディアハウス)などがある。

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