本記事は、ポール・エステス氏(著)、和田美樹氏(訳)の著書『GIG MINDSET ギグ・マインドセット 副業時代の人材活用』(アルク)の中から一部を抜粋・編集しています
T.I.D.E.メソッド
「余暇をつくって学べ」というのは簡単だが、実行の段取りはなかなか思い描けないかもしれない。僕が、新しい仕事の進め方の実行計画を考案したのは、まさにそのためだ。名づけて「T.I.D.E.メソッド」。T.I.D.E.とは、Taskify(タスク化する)、Identify(特定・認識する)、Delegate(委託する)、Evolve(進化する)の頭文字だ。ギグ・スタイルとこの手法を組み合わせれば、あなたの選ぶいかなる目標も、望む成果も達成できるだろう。
頭の中に目標を立てたら、あとは、次の4つの手順を踏むだけだ。
Taskify(タスク化する):仕事をタスク単位に分解する。
Identify(特定・認識する):自分の手でやらなければならない作業、不要な作業、後回しにする作業、人に任せる作業を特定・認識する。
Delegate(委託する):適切なエキスパートを見つけ、何をしてほしいかを伝え、仕事を上手に任せる。
Evolve(進化する):進化を続け、ギグ・スタイルを自分のものにし、この手法を自分と自分の会社なりに活用する。
以上4つの手順をぜひ覚えておいてほしい。後章で繰り返し出てくるほか、アドバイザーたちにも、T.I.D.E.メソッドがいかにイノベーションと成功に役立ったかを語ってもらっている。
フリーランス革命
「教師がテクノロジーに取って代わられることはないが、テクノロジーを使わない教師は、使う教師に取って代わられるだろう」 ──ハリ・クリシュナ・アーリャ(インド)
プリンストン大学のローレンス・キャッツとアラン・クルーガーによって行われた研究によると、今後20年で、アメリカの仕事の30パーセントは、タスク単位に分解される──すなわちフリーランサーが請け負える──と予測される。
なんだか恐ろしい数字だと思う人は考え方を変え、心配する代わりに喜んでほしい。このディスラプションによって、あなたは学びと成長を強いられるかもしれないが、一方で新しい工夫が加速する。
ビデオエディターのケンの例をいま一度振り返りたい。作業量が限られ需要をさばききれなかった彼も、同じ不安を抱えていた。一定の品質の制作物を納品したいが、それでは月に数件しか取り扱えなかった。スキルはあっても、スケールして需要に応えることができず、解決策が必要だった。
そんなケンに、僕は提案書を出した。彼が時間を要している作業の多くは、ビデオ制作の最初のほうの工程だった。脚本の執筆、素材の収集、絵コンテの作成、音楽や効果音の追加など、骨の折れる作業だ。だが、そうしたタスクを請け負うフリーランスエディターのウェブサイトは無数にある。そこで僕は、それらを利用してはどうかと提案した。まずは一度試してみないかと。
それからの数週間、ケンはフリーランサーを活用したスケールの威力というものを実感した。そして、制作作業のさまざまな工程を任せるフリーランサーのネットワークを構築し、需要の増加に応えるべくスケールできるシステムづくりを始めた。さらによいことに、ケンは世界中の才能あるクリエイターとやり取りすることで、新たなスキルと新たなつながりを得た。1ヵ月が経った頃には、信じられない数のビデオをコーディネートし、編集し、ブラッシュアップできるようになっていた。制作量が月に6本から46本に増えたのだ!
ケンはひらめいたのである。自分の制作するビデオの市場価格(800ドル)に気づき、制作量を最大化するシステムをつくった。自らをクリエイティブディレクターと認識し、フリーランスのエキスパートを下請けに起用したのだ。翌月は、何十本ものビデオを外注に出した。信頼関係を築くのに多少の時間がかかったが、ケンとフリーランサーのチームは、まもなくシステムを最適化した。ケンが懸命に働いているのに変わりはないが、もはやビデオエディターというより、クリエイティブディレクターとしての役割が中心だ。生産性は劇的に上がった一方、彼の高い品質基準は維持されていた。
ケンは、流砂に立った状態で、ギグ・スタイルへの旅路をスタートした。それまでの仕事の仕方は彼自身を支えるどころか、足を引っ張っていた。だが、ギグエコノミーを受け入れ、ギグ・スタイルで仕事をすることで、彼の生産性は劇的に上がり、以前にも増して大きな成果を残せるようになった。
あなたも、単独作業のストレスを抱え込むのをやめ作業分担を始めたら、どんなことが可能になるか想像してみよう。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます