本記事は、片山智弘氏の著書『事業成長につなげるデジタルテクノロジーの教科書』(大学教育出版)の中から一部を抜粋・編集しています

新規事業を行っていくときに必要になるマインドセット

3つ
(画像=Ayaka/PIXTA)

新規事業を行っていく中で筆者が考えているマインドセットは非常にシンプルでスピード・フラット・コミットの3つの項目です(図7–1)。

5-1
(画像=『事業成長につなげるデジタルテクノロジーの教科書』より)

まずはスピードです。新規事業においては、実行フェーズで説明したように、思考よりもとにかく試せる部分は試していくような検証回数が圧倒的に重要になるからです。いつも以上にスピード感を持っていく必要性があるのです。

次にフラットです。フラットには2つの意味があります。まずは、人に対してフラットであることです。年次や上下関係を過度に気にしてしまい、それを理由にアイデアを棄却したり、逆に忖度するような人間は初期のフェーズでは少なくとも不要です。もう1つの意味のフラットは新しいアイデアを出すときにそれを受け入れる土壌を持つというフラットです。デジタルテクノロジーはタダでさえ聞いたことがないので、それを興味を持って受け入れられるかが非常に重要です。

最後のコミットとは、コミットメントのことです。コミットメントを入れているのは新規事業で不確実性が高くて不安定な環境下でやり切るマインドセットがあることが実行において重要になるためです。責任を取れる(責任を取る立場ではなくても自分ゴト化して覚悟がある)ことです。中のメンバーにも関わらず、すぐに人や別の要因のせいにしてしまう逃げ癖のついている人間や、批評しかできない人間は絶対にチームに入れてはいけません。

こういった適性を持ったメンバーを集めて組成していくことが事業運営上も重要になります。さらに言えば、こういった資質を持っているだけではなく、その事業への自分なりの価値観や強いこだわりがあったり、サービスの根底にあるようなペインポイントで困った原体験などがあると、リーダーになったときに事業で踏ん張りがきいたり、メンタル的にも強くなりやすいでしょう。

この3項目は事業区分において新規性が高いものになればなるほどマッチしているメンバーをアサインすべきです。新規市場を展開していくときはこの3つを満たしていない人間は入れないことが鉄則になりますし、逆に、自社の課題解決や現業の既存事業内での追加商品開発になる場合は、こういった新規事業向けのマインドが強すぎるとミスマッチになることがあります。

評価・分析者の観点でいえば、そういったマインドセットを持っていない担当者が自分の見栄やポジションのために事業責任者になっているチームの場合は、非常に不幸な結果になりますので、急いでそのチームのメンバーを変えるか、そういった性格がワークしにくいチームの雰囲気を整えていく必要性があります。

誤解がないようにご補足をさせていただくと、これはあくまで新規事業を考える上でのメンバーが持つマインドセットの観点です。ですので、そういったマインドセットの人間が優れていないのではなく、単に新規事業に向いていないだけで現業でのハイパフォーマーもたくさんいます。熟考してリスクテイクの前に慎重に予防線をはる仕組みや、上下で強い統制を作って動いていくフェーズが大事になる仕事や事業もたくさんありますので、あくまでこの新規事業を考えるシチュエーションに向いているマインドセットであるということなのです。

事業成長につなげるデジタルテクノロジーの教科書
片山智弘(かたやま・ともひろ)
株式会社電通事業共創局シニア・ビジネス・ブロデューサー。株式会社セガエックスディー取締役執行役員CSO。1987年、東京都生まれ。2010年、慶應義塾大学理工学部卒業後、慶應義塾大学大学院在学中に就職活動の採用試験を練習するイーラーニングサービスで起業。2年間経営後にサイトM&Aで売却。2012年、大学院修了と共に株式会社電通へ入社。電通入社後は、一貫して新規事業部署に所属。デジタルテクノロジーおよびビジネスメソドロジーを活かした様々な事業開発を歴任。並行して、オープンイノベーションによる協業推進の責任者や、デジタル環境戦略とUXに関するアドバイザリー業務も実施。2019年7月より、セガ エックスディーへの合並会社としての電通の資本参画を契機に取締役を兼任。

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