本記事は、仲亀彩氏の著書『リピート率80% 心をつかむ接客術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

ヒアリングの大事な3ポイント

ヒアリング
(画像=JackF/PIXTA)

お客様にサービスを提供する際に、我々が知る必要のあることは3つあります。それは「何を・いつ・どのくらい」です。

当たり前ですが、これをしっかりヒアリングできていれば、接客での大事故はほとんど起きません。逆に、このどれか1つでも聞いていないと、大きなミスにつながってしまいます。

私が20代の時にあった話を聞いてください。

仕事の休憩時間に、ランチを召し上がりに来たお客様がいました。そのお客様は、ドリンク付きのランチを注文されました。飲み物がホットコーヒーだったので、私は何も聞かずに食後に提供しました。すると、お客様の休憩時間ギリギリになってしまい、大慌てで店を後にされたのです。

私が飲み物を提供する時間をきちんと聞いていれば、お客様は急がずに済みました。今思い返しても、申し訳なかったと反省している出来事です。

このように、接客業では、当たり前だと思っている自分の思い込みを捨てることが重要です。

また、お客様の中には、これまで一度も聞いたことのないようなことを言う人もいます。

ステーキの焼き上がりを一般的に分けると、レア・ミディアム・ウェルダンです。細かく分けるとミディアムレアなどもありますが、それはレアとミディアムの中間という意味です。

鉄板焼の仕事でお客様から、「生っぽいのが好きなので、レアでお願いします」と注文を受けました。これだけ聞いたら、そのままレアで焼くと思います。レアというのは、お肉の表面に焼き色があり、中の部分が温かい状態のことをいいます。

しかし、より火を入れない焼き方で、ブルーという状態もあります。それは表面だけ焼き、中は冷たい状態。お魚の炙りを想像していただくとわかりやすいでしょう。

そこで、このお客様からよく話を聞くと、そのブルーよりもさらに火を入れないで焼いて欲しいということでした。

私は9年間で7万人の方にお肉を焼いてきましたが、初めての経験でした。

お肉は焼いてしまったら、元には戻せません。ですので、これでもかというくらい尋ね、お客様の理想に近いものを目指します。

誤解が生まれないようにするには、時には少ししつこいくらいヒアリングをすることも必要です。

お客様にきちんと尋ねることで、お客様が求めているサービスを、求めている理想により近づけることができるのです。

Point
ヒアリングの大事な3ポイントは「何を・いつ・どのくらい」

提供するサービスをしっかり伝える

これは結論から言うと、あなたが提供するサービスの説明を要約しないということです。

我々は、出来上がったマニュアルがない場合、お客様にサービスするものの説明を自分で考える必要があります。

私が鉄板焼のシェフになった当初は、説明を考えるのに頭を悩ませました。そして、考えた説明を忘れないように、メモをして持ち歩きました。

1回目にお客様に説明した時は上手くいきませんでしたが、何度か説明するうちに慣れてきて、30回も説明する頃には、すらすら言えるようになりました。お客様にもその説明で納得してもらえていました。

ところが、1000回目になると、私は説明するのに慣れきってしまい、お客様の反応の強いところを選び、サービスの要点だけを話すようになりました。

これでは、最初に試行錯誤して考えた説明を、同じようにしているとは言えません。

人間には慣れがあります。慣れには良いものも悪いものもあります。

これはマニュアルがある場合でも一緒です。慣れてくれば慣れてくるほど、このくらいの説明でいいかと、自分で説明する量を決めてしまうのです。

我々にとっては毎日のことです。提供する商品や施設、器具などに慣れてきます。しかし、お客様にとっては、初めてのことなのです。

ですので、しっかり意識をしていないと、お客様の理解と自分の説明にどんどん距離ができてしまいます。

お客様に「自分が提供するサービスを実感している」あなただからこそ、サービスや内容をきちんと伝えることができます。

お客様が受けるサービスをどのくらい知っているかは、伝えるまでわかりません。ですので、遮られない限りは、あなたが知っていることをなるべく伝えましょう。

お客様はすでに経験があるかもしれませんが、もういいよと言われたり、うんざりした顔をされたりしない限りは、説明するべきです。

たとえ遮られたからといって、それは不快だからではなく、すでに知っていたり、説明よりも大事な話をしたりしているからだと思います。

きちんと説明することで、多くの方が、丁寧に説明してくれたと思うでしょう。

具体的には、1つの説明を30秒ぐらいでできるようになるといいと思います。

細かい点まで伝えることを意識して、自分が提供するサービスの説明を毎回きちんと行う努力をしましょう。

Point
提供するサービスは要約せずにしっかり伝える

リピート率80% 心をつかむ接客術
仲亀彩(なかがめ・あや)
鉄板焼シェフ/接客コンサルタント/YouTuber あやシェフ。接客業歴22年、接客したお客様は国内外合わせてのべ15万人、お客様リピート率80%。15歳から飲食店の接客のアルバイトをはじめ、独学で調理を学ぶ。都内数店舗で修行をし、28歳で現職である鉄板焼シェフに抜擢。これまでに得た接客技術を使い、スターや政財界の著名人、エグゼクティブ、海外の王族を接客する。2019年に独立。現在は鉄板焼シェフ業とともに、接客コンサルティング、セミナーを行う。著書に『お客様の心をつかむ 魔法のほめ言葉事典』(秀和システム)がある。

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