本記事は、坂本光司氏の著書『会社の偏差値 強くて愛される会社になるための100の指標』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

過去5年以上、希望退職を募ったことはない

希望退職
(画像=takeuchi masato/PIXTA)

この指標に〇がつく企業の「強み」と、つかない企業の「弱み」

大幅な赤字に陥ったA社の社長は、借金をして社員にボーナスを払おうとしました。それを知った社員は、「社長、なぜこんな時にボーナスを出すのですか。私たちの大好きな会社、大好きな仲間のいる会社を社長の見栄で潰さないでください!」と訴えました。喜びも悲しみも苦しみも、ともに分かち合うのが、家族としての企業の姿です。

●仲間を守らず企業を守るのは誤り

企業経営の最大の目的・使命は、「社員とその家族」「社外社員(取引先)とその家族」「現在顧客と未来顧客」「地域住民、特に障がい者などの社会的弱者」、そして「株主・関係者」の、5人の幸せの追求・実現です。

どれほど厳しい経済状況になったとしても、この5人、とりわけ社員とその家族の命と生活を守るのが、経営者の最大の仕事です。業績や勝ち負けを競うことも大切ですが、それらはあくまでも、5人の幸せを実現するための手段です。

ところが、不況や経営の失敗によって業績が低下すると、やるべきことがほかにたくさん残されているにもかかわらず、社員の希望退職を募る企業が依然として後を絶ちません。

それどころか、最近は、黒字経営なのに、あるいは業績の落ち込みはさほどでもないのに、「将来に備えて」などと、訳のわからない理由で平然と希望退職を募るような企業も少なからずあります。

私はよくこうした経営者に「社員の首を切るならば、その前に自分の腹を切るべきです」とか、「社員を路頭に迷わせるならば、あなたも一緒に路頭に迷うべきです」と言うことにしています。

きつい言葉ですが、やむを得ないと考えています。

希望退職者を募集する多くの経営者は、「リストラをしなければ、企業が倒産し、全員が路頭に迷ってしまう。企業全体を守るためには、一部社員のリストラはやむを得ないことだ」と言います。しかし、それは大きな勘違いです。

希望退職者の募集の最大の狙いは、人件費の削減です。そうであるのなら、社員の人数を削減するその分、総人件費の削減、つまり全社員が給料を減額して、仲間を守ればいいのです。この場合、社長の減額幅を最も大きくすべきことはいうまでもありません。

会社の偏差値 強くて愛される会社になるための100の指標
坂本光司(さかもと・こうじ)
1947年、静岡県(焼津市)生まれ。経営学者。静岡文化芸術大学教授、法政大学大学院教授などを歴任。現在は、人を大切にする経営学会会長、千葉商科大学大学院商学研究科中小企業人本経営(EMBA)プログラム長、日本でいちばん大切にしたい会社大賞審査委員長、他公職多数。徹底した現場派研究者であり、この50年間で訪問調査・アドバイスをした企業は8000社以上となる。専門は中小企業経営論・地域経済論・福祉産業論。近著『「新たな資本主義」のマネジメント入門』2021年ビジネス社、『もう価格で闘わない』2021年あさ出版、『経営者のノート』2020年あさ出版、『日本でいちばん大切にしたい会社7』2020年あさ出版 他。

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